和倉温泉の露天風呂付き客室で過ごす50代夫婦の休日|七尾湾の静寂に心を委ねて

目次

なぜ、人生の後半を歩む夫婦は和倉温泉に惹きつけられるのか

子育てという長い旅路を終え、ふと隣を見れば、共に歩んできた伴侶の姿。重ねた月日は、ふたりに穏やかな安らぎと、少しばかりの気恥ずかしさを与えてくれました。そんな今だからこそ、必要なのは賑やかな観光地ではなく、静かに互いの時間を見つめ直せる場所ではないでしょうか。

石川県、能登半島の懐に抱かれた和倉温泉。その湯は、長い年月をかけて海の恵みをたっぷりと含んだ「塩っぱい温泉」です。この塩分が、人生の航海で少しばかり疲れた心と身体を、芯からじんわりと解きほぐしてくれるのです。

目の前に広がるのは、鏡のように凪いだ七尾湾。その静寂は、慌ただしい日々の中でいつしか忘れていた、夫婦の穏やかな対話を思い出させてくれます。ただ美しい景色を眺めるだけではない。和倉温泉は、ふたりの人生という物語の新しい章を、そっとめくるための舞台装置なのです。

加賀屋別邸 松乃碧

~美術館に泊まる、という贅沢を識る夫婦へ~

■おすすめポイント(加賀屋別邸 松乃碧)

  • 全客室が七尾湾を望むオーシャンフロント
  • インクルーシブサービスで、ラウンジでの飲物や軽食が無料
  • 館内の至る所に配された美術品が、まるで美術館のような滞在を演出
  • 宿泊は13歳以上に限定された、大人のための静謐な空間
  • 露天風呂付き客室では、源泉を心ゆくまで堪能できる

加賀屋が長年培ってきた「おもてなしの哲学」を、よりプライベートで上質な形に昇華させたのが、ここ「松乃碧」です。館内に一歩足を踏み入れた瞬間から、日常は遠く霞んでいきます。聞こえるのは微かな波の音と、心地よい静寂だけ。ここは、ただ泊まる場所ではなく、時間そのものを味わうための空間なのです。

客室

全26室が、七尾湾の穏やかな海に面して造られています。広々とした和洋室には、上質な調度品が配され、大きな窓はまるで一枚の絵画のよう。窓辺のソファに腰掛ければ、時間の移ろいと共に表情を変える海の景色を、ふたり占めにすることができます。

客室露天風呂の時間

檜の香りがふわりと鼻をかすめる、広々とした湯船。手足を伸ばせば、目の前には遮るもののない七尾湾が広がります。湯に体を沈めると、とろりとした塩化物泉が肌を優しく包み込み、日々の疲れが溶けていくのがわかります。

聞こえるのは、湯が湯船から静かに溢れる音と、遠くで鳴く鳥の声だけ。夕暮れ時には、空と海が茜色に染まり、その幻想的な光景に思わず言葉を失うでしょう。湯面に映る夕焼けを眺めながら、グラスを傾ける。そんな、映画のワンシーンのような時間が、ここでは日常なのです。

共用風呂

館内には、インフィニティ露天風呂を備えた大浴場があります。水面が七尾湾と一体化するように設計されており、まるで海に浮かんでいるかのような開放感を味わうことができます。広々とした湯船で手足を伸ばし、能登の雄大な自然に抱かれる時間は、客室の露天風呂とはまた違った格別の体験です。

湯上がりには、アロマリラクゼーションで旅の疲れを癒したり、ライブラリーラウンジで美術書をめくったりと、館内での楽しみは尽きません。夫婦それぞれが思い思いの時間を過ごし、またラウンジで合流する。そんな大人の休日が、ここにはあります。

食事

食事は、能登の豊かな里山里海の恵みをふんだんに使った、月替わりの懐石料理。一皿一皿が、まるで芸術品のように美しく盛り付けられ、目と舌の両方で能登の旬を味わうことができます。

特に、北陸ならではの新鮮な魚介は絶品。料理長の繊細な手仕事が加わったお造りや焼き物は、地酒との相性も抜群です。プライベートが保たれた食事処で、ふたりのペースでゆっくりと、食事が運ぶ物語に耳を傾けてください。

サービス

ラウンジのソファに深く腰掛けると、窓の外には穏やかな七尾湾が広がっている。
「この絵、輪島塗の作家さんのものらしいよ」
夫が、壁に飾られたパネルを指差しながら言った。
妻は、スタッフがそっと差し出してくれたハーブティーの香りを楽しみながら、小さく頷く。
「素敵ね。この場所全体が、美術館みたい」
「ああ。騒がしい場所はもう卒業、だな」
彼の言葉に、妻は静かに微笑んだ。

こんな50代夫婦におすすめ

  • 美術や工芸に関心があり、知的な探求心を満たしたい夫婦
  • 誰にも邪魔されない、静かで上質なプライベート空間を求める夫婦
  • 滞在中は財布を気にせず、オールインクルーシブでゆったりと過ごしたい夫婦

アクセス情報

  • 住所:石川県七尾市和倉町ワ部34番地
  • アクセス:JR七尾線「和倉温泉駅」より車で約5分
  • 送迎:和倉温泉駅より送迎あり(要予約)

ふたりで紡ぐ、宿の記憶

チェックアウトの朝、ふたりはライブラリーラウンジの窓辺に並んで座っていた。
旅の始まりには、少しだけぎこちない沈黙があった。
何を話せばいいのか、探り合うような時間。
でも、今は違う。
同じ景色を眺め、同じ空気を吸い込む、その穏やかな沈黙が心地良い。
妻がふと、棚に置かれた小さなガラス細工に目を留めた。
「きれい…」
「昔、お前が好きだった作家の作品に似てるな」
夫が、驚くほど優しい声で言った。
忘れていたはずの記憶のかけらが、この静かな場所で、ふたたびふたりの心に光を灯していく。
言葉は少なくともいい。
ただ、隣にいる温かさを感じられる。
松乃碧での時間は、言葉以上に雄弁な対話を、ふたりにもたらしてくれた。
これから帰る日常も、少しだけ違って見えるかもしれない。
そんな予感が、窓から差し込む朝の光のように、心を温かく照らしている。

多田屋

~水平線に溶け込む湯船で、ふたりの境界線をなくす旅へ~

■おすすめポイント(多田屋)

  • まるで海と一体になるようなインフィニティ露天風呂が圧巻
  • 海に最も近い貴賓室「利久」からは釣りが楽しめるほどの臨場感
  • 大正ロマンの薫り漂う館内が、非日常の旅情を掻き立てる
  • 能登の夕景を最も美しく望める宿として名高いロケーション
  • 海の幸を知り尽くした料理人が腕を振るう、絶品の磯会席

和倉温泉の中心部から少し離れた場所に、ひっそりと佇む「多田屋」。その最大の魅力は、何と言っても七尾湾との一体感です。特に夕暮れ時、宿全体が茜色に染まる光景は「多田屋時間」と呼ばれ、多くの旅人を魅了してきました。穏やかな波の音をBGMに、ただただ水平線を眺める。そんな何もしない贅沢が、ここにはあります。

客室

露天風呂付き客室は、モダンな「抱月」と、大正ロマンの趣が色濃い貴賓室「利久」に分かれます。どちらも七尾湾を望む絶好のロケーションですが、特におすすめは「利久」の1階。手を伸ばせば海に届きそうなほどの距離感で、縁側から釣り糸を垂れることさえ可能です。日常の喧騒から隔絶された空間で、心ゆくまでプライベートな時間を過ごせます。

客室露天風呂の時間

陶器でできた露天風呂の縁に腰かけると、目の前にはどこまでも続く穏やかな海。湯船に体を沈めれば、自分の身体と海との境界線が曖昧になっていくような、不思議な浮遊感に包まれます。視界を遮るものは何もなく、ただ空と海と自分たちだけ。

夕陽が水平線に沈み始めると、空はオレンジから紫へと、刻一刻と表情を変えていきます。そのグラデーションを眺めながら、ふたりで交わす言葉は少なくてもいい。同じ絶景を共有する時間が、何よりも雄弁にふたりの心を繋いでくれるはずです。

共用風呂

多田屋が誇る大浴場「渚の露天風呂」は、まさに海に浮かぶ湯船。開放感あふれる空間で、時間帯によって表情を変える七尾湾の景色を存分に楽しむことができます。特に、空気が澄んだ日の朝風呂は格別。朝日にきらめく水面を眺めながら浸かる温泉は、心身に新しいエネルギーを満たしてくれるでしょう。

男性用、女性用ともに趣向を凝らした造りになっており、広々とした内湯も完備。館内で湯めぐりをするように、様々な角度から和倉の湯と絶景を堪能できます。

食事

多田屋の料理は、能登の海の幸を知り尽くした料理人たちが贈る、珠玉の磯会席。その日に水揚げされたばかりの新鮮な魚介を中心に、旬の食材を最も美味しい形で提供してくれます。

器の一つ一つにもこだわりが感じられ、料理が運ばれてくるたびに、思わず感嘆の声が漏れるほど。見た目の美しさはもちろん、口に運べば素材の力が体に染み渡ります。能登の豊かな自然の恵みを、心ゆくまで味わってください。

サービス

夕食後、部屋の窓辺で涼んでいた。
「星がすごいな。こんなにたくさん見たのは、いつ以来だろう」
夫が夜空を見上げながら呟く。
ふと、障子が静かに開き、仲居さんが冷たい水の入ったポットを置いていった。
「もしよろしければ、お夜食におにぎりもご用意できますが」
そのさりげない一言に、妻は心が温かくなるのを感じる。
「ありがとうございます。じゃあ、お願いしようかしら」
「え、食べるのか?」
驚く夫に、妻は悪戯っぽく笑いかける。
「たまには、いいじゃない」

こんな50代夫婦におすすめ

  • 何もしない贅沢、ただただ美しい海の景色に癒されたい夫婦
  • ロマンチックな夕景を眺めながら、ふたりの時間を過ごしたい夫婦
  • 新鮮な海の幸に目がなく、旅の食事を何よりも楽しみにしている夫婦

アクセス情報

  • 住所:石川県七尾市和倉町ワ部1番地
  • アクセス:JR七尾線「和倉温泉駅」より車で約7分
  • 送迎:和倉温泉駅より送迎あり(定時運行、要予約)

ふたりで紡ぐ、宿の記憶

客室の露天風呂から、沈みゆく夕陽を眺めていた。
夫は黙って、水平線の一点を見つめている。
その横顔を、妻はそっと盗み見た。
会社では、きっと厳しい顔をしているのだろう。
家では、父親としての顔があった。
でも、今ここにいるのは、ただの男の人の顔だ。
少しだけ、昔の面影が残っている。
「きれいだね」
妻がぽつりと言うと、夫はゆっくりとこちらを向いた。
「ああ」
短い返事。でも、その声色には、普段は隠している優しさが滲んでいた。
茜色の光が、ふたりを包み込む。
長い間、見つめ合うことさえ忘れていたかもしれない。
この燃えるような空と海が、ふたりの間の見えない壁を、静かに溶かしていく。
湯の温かさと、隣にいる人の温かさが、じんわりと心に広がっていった。

日本の宿 のと楽

~能登の伝統とモダンが融合する空間で、心地よい安らぎを見つける~

■おすすめポイント(日本の宿 のと楽)

  • 能登の伝統文化を随所に感じられる、上質で落ち着いた館内
  • 「能登島テラス倶楽部」の客室からは、能登島と能登島大橋を一望
  • 能登の山海の幸をバランス良く取り入れた、繊細な味わいの会席料理
  • 広々とした大浴場や露天風呂など、多彩な湯船で湯めぐりが楽しめる
  • 和倉温泉の中心に位置し、温泉街の散策にも便利なロケーション

その名の通り、日本の宿ならではの温かなおもてなしと、能登の楽(たのしみ)を存分に味わえる宿「のと楽」。館内は、伝統的な和の設えと現代的な快適性が見事に融合し、どこにいても心地よい安らぎを感じることができます。特に、能登島と能登島大橋を望む眺望は素晴らしく、能登の雄大な自然を間近に感じられます。

客室

露天風呂付きを希望するなら、特別フロア「能登島テラス倶楽部」がおすすめです。広々としたテラスに、信楽焼の湯船が設えられており、目の前には能登島へと続く美しい能登島大橋が架かります。和の趣を大切にしながらも、ローベッドやソファが配された和洋室は、50代の夫婦がゆったりと寛ぐのに最適な空間です。

客室露天風呂の時間

テラスの湯船に浸かると、心地よい風が頬を撫でていきます。眼下には、穏やかな七尾湾と、美しいアーチを描く能登島大橋。昼間はその雄大な景色を、夜はライトアップされた橋と満天の星を独り占めできます。

信楽焼の湯船は、肌触りが滑らかで、体の芯からじんわりと温めてくれます。誰にも気兼ねすることなく、好きな時間に好きなだけ、名湯と絶景を堪能する。そんな贅沢な時間が、旅の記憶をより一層豊かなものにしてくれるでしょう。

共用風呂

のと楽の自慢は、趣の異なる3つの大浴場。最上階にある展望大浴場「湯めぐり『楽』」からは、七尾湾と能登島を一望でき、開放感は抜群です。

また、露天風呂「湯めぐり『滝』」では、滝が流れ落ちる庭園を眺めながら、風情ある湯浴みが楽しめます。内湯、露天風呂、サウナと多彩な湯船が揃っているので、夫婦で時間を合わせて、館内の湯めぐりに出かけるのも一興です。

食事

食事は、能登の山海の幸を知り尽くした料理長が、季節ごとに最高の食材を厳選して創り上げる会席料理。派手さはありませんが、一品一品に丁寧な仕事が施されており、素材本来の味を最大限に引き出しています。

「のどぐろ」や「能登牛」といったブランド食材はもちろん、地元で採れた新鮮な野菜もふんだんに使われており、能登の豊かな食文化をまるごと味わうことができます。落ち着いた雰囲気の食事処で、ゆっくりと会話を楽しみながら、能登の味覚を堪能してください。

サービス

温泉街の散策から戻り、ロビーのソファで一息つく。
「少し、歩きすぎたかな」
夫が、少し疲れた顔で言う。
「でも、気持ちよかったわね。あの辻口さんのお店、すごい人だったわ」
妻がパンフレットを眺めていると、スタッフが冷たいお茶を運んできた。
「お疲れさまでございませんか。足湯もございますので、どうぞごゆっくり」
その優しい笑顔と心遣いに、旅の疲れがすっと軽くなる。
「ありがとう。じゃあ、もう少し休んでから行ってみようか」
「そうだな」
ふたりの間に、穏やかな空気が流れた。

こんな50代夫婦におすすめ

  • 日本の宿ならではの、きめ細やかなおもてなしを重視する夫婦
  • 温泉街の散策も楽しみつつ、宿では静かに過ごしたい夫婦
  • 派手さよりも、落ち着いた空間で質の高い安らぎを求める夫婦

アクセス情報

  • 住所:石川県七尾市石崎町香島1-14
  • アクセス:JR七尾線「和倉温泉駅」より車で約5分
  • 送迎:和倉温泉駅より送迎あり(定時運行)

ふたりで紡ぐ、宿の記憶

夜、客室のテラスで涼んでいた。
露天風呂の湯気が、夜の闇に白く溶けていく。
眼下には、静かに光を放つ能登島大橋。
「昔、子供たちが小さい頃、よく橋を見に行ったな」
夫が、遠い目をして言った。
「ええ、覚えてるわ。サービスエリアの展望台で、はしゃいでたわね」
家族の思い出。
それは、ふたりが確かに積み重ねてきた、かけがえのない時間。
子育てに追われ、夫婦としての会話を忘れていた日々。
でも、そのすべてが、今のふたりに繋がっている。
「あの子たちも、いつかこんな旅をするのかな」
「そうだな。そうなるといいな」
夫の言葉は、どこまでも優しい。
能登島大橋の灯りが、まるでふたりの過去と未来を繋ぐ光の道のように、静かにきらめいていた。
この旅は、失われた時間を取り戻すのではなく、重ねてきた時間を慈しむための旅なのだと、妻は思った。

宿守屋寿苑

~心温まるおもてなしと、能登の旬を味わう家庭的な宿~

■おすすめポイント(宿守屋寿苑)

  • 全室オーシャンビューで、穏やかな七尾湾の景色を楽しめる
  • 「宿守(やどもり)」の名にふさわしい、温かく家庭的なおもてなし
  • 地元の旬の食材にこだわった、心のこもった会席料理に定評あり
  • 広々とした大浴場や露天風呂からも、海を一望できる
  • スタッフとの距離が近く、初めての和倉温泉でも安心して滞在できる

大規模な旅館が多い和倉温泉の中で、アットホームな温かさを大切にしているのが「宿守屋寿苑」です。豪華さや派手さではなく、訪れる人ひとりひとりに寄り添うような、心のこもったおもてなしが魅力。まるで実家に帰ってきたかのような安心感の中で、日々の疲れを癒し、ゆったりとした時間を過ごすことができます。

客室

寿苑の客室は、すべてが七尾湾に面したオーシャンビュー。大きな窓から、刻一刻と表情を変える海の景色を眺めることができます。露天風呂付きの客室は限られていますが、その分プライベート感は格別。華美な装飾はありませんが、清潔で落ち着いた和室は、夫婦ふたりで過ごすのに十分な広さと快適さを備えています。

客室露天風呂の時間

客室の露天風呂は、信楽焼の丸い湯船。ふたりで入るのにちょうど良い大きさで、親密な時間を過ごすのにぴったりです。湯船に身を委ねれば、視線の先には穏やかな七尾湾が広がります。

特に、朝日が昇る時間の入浴は格別です。水平線から太陽が顔を出し、空と海を黄金色に染め上げていく光景は、まさに絶景。新しい一日の始まりを告げる神々しい光を浴びながら、ふたりで静かに過ごす時間は、何よりもの贅沢と言えるでしょう。

共用風呂

自慢の大浴場「湯の舞」と露天風呂「湯の里」は、広々とした造りで、開放感たっぷり。もちろん、こちらからも七尾湾と能登島を一望できます。特に、海に向かってせり出すように造られた露天風呂は、潮風を感じながら湯浴みを楽しめる人気の場所です。

広大な海を眺めながら手足を伸ばせば、心も体も解き放たれていくのを感じるはず。泉質の良い和倉の湯を、心ゆくまで満喫してください。

食事

寿苑の料理は、派手な演出こそありませんが、料理人の真心が伝わってくるような、温かい味わいが特徴です。能登の漁港で揚がったばかりの新鮮な魚介や、地元農家が丹精込めて育てた野菜など、料理長自らが目利きした旬の食材を使用。

一品一品、丁寧に作られた料理は、どこか懐かしく、優しい味わい。特に、季節の釜飯は多くの宿泊客から好評を得ています。気取らない雰囲気の中、美味しい料理と地酒に舌鼓を打ちながら、夫婦の会話も弾むことでしょう。

サービス

湯上がりに、ロビーの片隅にあるマッサージチェアに座っていた。
「はぁー、気持ちいい…」
思わず声が漏れる。隣では、夫も気持ちよさそうに目を閉じている。
そこへ、通りかかった宿のスタッフがにこやかに話しかけてきた。
「旦那様、奥様、よく眠れそうでございますね」
「いやあ、極楽極楽」
「この後、夜9時からロビーで御陣乗太鼓のミニショーがございます。もしよろしければ、ご覧になってください。迫力がありますよ」
「へえ、太鼓のショー?」
思いがけない提案に、ふたりは顔を見合わせた。
そんなささやかな交流が、旅の思い出に彩りを添える。

こんな50代夫婦におすすめ

  • 大規模旅館の喧騒が苦手で、アットホームな雰囲気を好む夫婦
  • きらびやかな料理よりも、心のこもった手作りの味を大切にしたい夫婦
  • スタッフとの温かい交流を通じて、旅の思い出を作りたい夫婦

アクセス情報

  • 住所:石川県七尾市和倉町ヨ部81-2
  • アクセス:JR七尾線「和倉温泉駅」より車で約5分
  • 送迎:和倉温泉駅より送迎あり

ふたりで紡ぐ、宿の記憶

朝食後、部屋の窓から海を眺めていた。
昨夜の御陣乗太鼓の響きが、まだ耳の奥に残っている。
「すごかったな、あの太鼓」
「ええ、本当に。なんだか、元気をもらえたみたい」
妻が微笑むと、夫も頷いた。
チェックアウトの時間が近づいている。
あっという間の二日間だった。
でも、この宿で過ごした時間は、不思議なほど濃密だった。
豪華な設備があったわけではない。
特別なサービスがあったわけでもない。
ただ、そこかしこに、人を思う温かい心が満ちていた。
「また、来ような」
夫が、ぽつりと言った。
「ええ、また来ましょう。今度は、違う季節に」
妻は、心からそう思った。
七尾湾の穏やかな水面が、朝の光を受けてきらきらと輝いている。
それはまるで、ふたりのこれからの日々を、優しく照らし出しているかのようだった。

虹と海

~アクティブに、カジュアルに。新しいスタイルの温泉旅を愉しむ~

■おすすめポイント(虹と海)

  • 伝統的な旅館の形式にとらわれない、自由でカジュアルな滞在スタイル
  • 夕食・朝食に加え、ラウンジでのドリンクも無料のオールインクルーシブ
  • パティシエ辻口博啓氏のスイーツが楽しめるカフェを併設
  • スタイリッシュでモダンな客室デザイン
  • 七尾湾を一望する絶景のロケーションはそのままに、気軽に温泉を楽しめる

「もっと自由に、もっと気ままに」をコンセプトにした、新しいスタイルの温泉宿。老舗旅館「加賀屋」グループでありながら、伝統的なおもてなしの形式をあえて崩し、ゲストが自分のペースで滞在を楽しめる空間を提供しています。アクティブな50代夫婦や、堅苦しいのが苦手な夫婦にぴったりの、リゾートホテルのような開放感が魅力です。

客室

客室は、和の要素を取り入れつつも、ローベッドやソファを配したモダンな和洋室が中心。白と木目を基調とした明るい空間は、リラックスして過ごすのに最適です。もちろん、窓の外には七尾湾の絶景が広がります。展望風呂付きの客室もあり、スタイリッシュな空間でプライベートな湯浴みを楽しむことができます。

客室露天風呂の時間

※「虹と海」では、厳密な客室”露天”風呂ではなく、大きな窓を備えた展望風呂タイプのお部屋が中心となります。

大きな窓を全開にすれば、まるで露天風呂のような開放感を味わえる展望風呂。モダンなデザインのバスタブに体を沈めれば、目線の高さに七尾湾の水平線が広がります。潮風を感じながら、誰にも邪魔されずに湯浴みを楽しむ時間は、格別のリフレッシュタイム。

BGMにお気に入りの音楽を流しながら、ラウンジから持ってきたドリンクを片手に、ゆったりとバスタイムを楽しむ。そんな自由な過ごし方ができるのも、この宿ならではの魅力です。

共用風呂

最上階にある展望大浴場は、まさに天空のスパ。ガラス張りの広々とした空間から、七尾湾と能登の自然が織りなすパノラマビューを存分に堪能できます。

インフィニティ仕様の露天風呂では、海と空に溶け込むような一体感を味わえます。夕暮れ時には、空と海が美しいグラデーションに染まる絶景が広がり、思わず時を忘れて見入ってしまうほど。日々の疲れを洗い流し、心身ともにリフレッシュできる空間です。

食事

食事は、オープンキッチンを備えたレストランでのブッフェスタイル。能登の新鮮な魚介を使ったお寿司や天ぷら、ローストビーフなど、和洋中の多彩な料理がライブキッチンで提供され、五感を刺激します。

自分の好きなものを、好きなだけ選べる楽しさはブッフェならでは。かしこまった会席料理とは違い、夫婦で「あれが美味しそう」「次はこれを取ってこよう」と会話しながら食事を楽しむ時間は、旅の良い思い出になるはずです。

サービス

ラウンジのセルフバーで、夫がカクテルを作っている。
「シェイカーなんて振るの、何年ぶりだろうな」
少し照れくさそうに笑う夫を見て、妻もつられて笑った。
「あら、格好いいじゃない。私には、能登のワインをお願いしようかしら」
「はいはい、お安い御用で」
好きなドリンクを片手に、窓辺のソファへ。
堅苦しい作法も、過剰なサービスもない。
でも、この自由な空気が、今のふたりには心地よかった。
自分たちの手で、この旅の時間を作っていく。
それもまた、贅沢なのだ。

こんな50代夫婦におすすめ

  • 伝統的な旅館のスタイルが、少し堅苦しいと感じる夫婦
  • 食事は会席料理より、好きなものを好きなだけ楽しめるブッフェが好きな夫婦
  • アクティブに、そしてカジュアルに、リゾートホテルのように温泉旅を楽しみたい夫婦

アクセス情報

  • 住所:石川県七尾市和倉町ヨ部96番地
  • アクセス:JR七尾線「和倉温泉駅」より車で約7分
  • 送迎:和倉温泉駅より送迎あり(定時運行、要予約)

ふたりで紡ぐ、宿の記憶

併設されたカフェ「ル ミュゼ ドゥ アッシュ」のテラス席で、海を眺めていた。
目の前には、世界的に有名なパティシエが作った、宝石のように美しいケーキ。
「美味しいわね、これ」
「ああ。まさか和倉温泉で、こんなケーキが食べられるとは思わなかったな」
夫は、普段はあまり口にしない甘いものを、美味しそうに頬張っている。
旅館に来たら、お茶と和菓子。
そんな固定観念が、心地よく裏切られていく。
「なんだか、僕たちもアップデートしなきゃいけないな」
夫の言葉に、妻はきょとんとした。
「昔ながらの旅もいい。でも、こういう新しい楽しみ方もあるんだな、って」
彼は、少し若返ったような顔で笑った。
そうかもしれない。
夫婦の形も、旅の形も、ひとつじゃない。
これからの人生、もっと自由に、もっと気ままに楽しんだっていい。
七尾湾から吹いてくる爽やかな風が、ふたりの背中をそっと押してくれているようだった。

まとめ|さあ、ふたりの時間を紡ぐ旅へ

穏やかな七尾湾に抱かれた和倉温泉。そこには、子育てという大役を終えた50代の夫婦が、ふたたび互いの時間を見つめ直すための、上質な舞台が用意されていました。

  • 加賀屋別邸 松乃碧:美術館のような静謐な空間で、知的な時間を過ごしたい夫婦に
  • 多田屋:海と一体になるインフィニティ風呂で、ロマンチックな夕景に酔いしれたい夫婦に
  • 日本の宿 のと楽:伝統とモダンが融合した空間で、落ち着いた安らぎを求める夫婦に
  • 宿守屋寿苑:心温まるおもてなしの中で、家庭的な温かさに触れたい夫婦に
  • 虹と海:カジュアル&オールインクルーシブで、自由な温泉旅を楽しみたい夫婦に

どの宿も、ただ泊まるだけではありません。そこには、ふたりの物語の新しいページをめくるための、特別な時間が流れています。

長い道のりを共に歩んできた、世界でたった一人のパートナーと。
少しだけ日常から離れて、何もしない贅沢を味わってみませんか。

和倉の塩っぱい温泉が、心の凝りをそっと解きほぐし、凪いだ海が、穏やかな対話を運んできてくれるはずです。さあ、ふたりの時間を深く紡ぎ直す旅へ、出かけましょう。


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