なぜ、人生の節目に立つ夫婦は登別温泉へ向かうのか
白煙を上げる地獄谷、原始林に抱かれた大湯沼、そして足元から湧き出る天然の足湯。北海道が誇る「温泉のデパート」、登別温泉。その圧倒的な自然のエネルギーと、多種多様な泉質は、まるで人生そのもののようです。
子育てという長い旅路を終え、互いの健康を労り、心からの安らぎを求める50代の夫婦にとって、この地は単なる観光地ではありません。硫黄の香りに包まれ、乳白色の湯に身を委ねる時間は、これまで共に乗り越えてきた数々の困難を浄化し、心と体を深く癒すための特別な儀式。
この記事では、そんな登別温泉の中でも「露天風呂付き客室」にこだわり、誰にも邪魔されることなく、夫婦ふたりの時間を静かに紡ぐことができる、選りすぐりの宿を5軒だけご紹介します。これは、賑やかな団体旅行ではない、ふたりの人生の新たな章を開くための、静かで豊かな旅の物語です。
望楼NOGUCHI登別～登別の自然とモダンが融合する、大人のための隠れ家～
■おすすめポイント（望楼NOGUCHI登別）
- 全室スイート、源泉かけ流しの展望風呂付きの贅沢な空間
- 登別の自然をアートのように切り取る、洗練された館内デザイン
- フリーフローのラウンジやバーで過ごす、優雅な夜の時間
- 和食とフレンチが融合した、目と舌で味わう新感覚の会席料理
- プライベートを重視した、きめ細やかで付かず離れずのホスピタリティ
登別の原生林に抱かれるように佇む、全室スイートのラグジュアリーホテル。館内に一歩足を踏み入れると、非日常へと誘うコンクリートと木が織りなすモダンな空間が広がります。静寂の中で、ただふたり、上質な時間に身を委ねたい夫婦に最適な一軒です。
客室
すべての客室がスイート仕様となっており、広々としたリビングスペースとベッドルームが確保されています。おすすめは、和の落ち着きと洋の機能性を兼ね備えた「スタンダードスイート」。大きな窓の向こうには、手つかずの自然が広がり、季節の移ろいを一枚の絵画のように楽しめます。もちろん、全室に源泉かけ流しの展望風呂が完備されています。
客室露天風呂の時間
リビングのソファで寛いだ後、そのまま数歩でアクセスできる展望風呂。白い湯気を立てる乳白色の湯船は、大人が足を伸ばしてゆったりと入れるほどの大きさです。ガラス張りのバスルームは開放感に満ちており、窓を開け放てば、ひんやりとした外気と硫黄の香りが流れ込み、半露天風呂のような心地よさを味わえます。
眼下に広がるのは、人の手が入っていない原生林の深い緑。聞こえるのは、風が木々の葉を揺らす音と、湯が静かに溢れる音だけ。言葉を交わさずとも、同じ景色を眺め、同じ湯に癒されることで、ふたりの心は深く満たされていきます。ここは、日常の鎧を脱ぎ捨て、素顔の自分たちに戻れる特別な聖域です。
共用風呂
館内には、男女入替え制の大浴場「湯の音」があります。時間帯によって趣の異なる浴場を楽しめるのが魅力。特に、寝湯や打たせ湯を備えた浴場は、心身の疲れを多角的に癒してくれます。客室のプライベートな湯浴みとはまた違う、広々とした空間での開放感も格別です。
湯上がりには、暖炉が燃えるラウンジで一休み。フリードリンクを片手に、窓の外の景色を眺めながら物思いにふける。そんな静かで贅沢な時間が、この宿ではごく自然に流れています。
食事
夕食は、和食の伝統とフレンチの技法が融合した、独創的な会席料理。北海道の旬の食材が、料理長の感性によって、驚きと感動の一皿へと昇華されます。一品一品が少量ずつ、美しい器に盛り付けられており、まるでアートを鑑賞するかのように食事を進めることができます。
朝食は、身体に優しい和食膳。土鍋で炊き上げた艶やかなご飯と、出汁の香りが立つお味噌汁、そして彩り豊かな小鉢の数々が、眠っていた体を優しく目覚めさせてくれます。個室の食事処で、ふたりだけの時間を大切にしながら、ゆっくりと朝の食事が楽しめるのも嬉しいポイントです。
サービス
夕食後、館内を散策していると、地下へと続く階段を見つけた。
「バーがあるみたいだ」
夫が囁く。
重厚な扉を開けると、そこはジャズが静かに流れるオーセンティックなバーだった。
「何を飲む？」
「そうね…せっかくだから、カクテルにしようかしら」
バーテンダーが差し出すカクテルメニューを、妻は楽しそうに眺めている。
普段なら、家で缶ビールを開けて終わりの夜。
旅先だからこそ許される、少しだけ背伸びした時間。
カウンターに並んで座り、グラスを傾ける。
昔、デートで訪れた店のことを、どちらからともなく話し始めた。
照れくさくて、でも温かい時間が、アルコールと共にゆっくりと心を溶かしていく。
こんな50代夫婦におすすめ
- 日常を忘れさせてくれる、洗練されたモダンな空間で過ごしたい夫婦
- プライベートを重視し、静かで落ち着いた滞在を求める夫婦
- 食事にもこだわり、和と洋が融合した新しい美食体験をしたい夫婦
アクセス情報
- 住所：北海道登別市登別温泉町200-1
- アクセス：JR登別駅よりタクシーで約15分
- 送迎：JR札幌駅より有料の送迎バスあり（要予約）
ふたりで紡ぐ、宿の記憶
チェックアウトの朝、ラウンジのソファに座り、窓の外を眺めていた。
雪が、静かに降り始めている。
「帰りたくないな」
夫が、子供のような声で言った。
いつもは口数の少ない彼からの、珍しい言葉だった。
「ええ、本当に。時間が止まってしまえばいいのに」
妻も心から同意する。
この宿で過ごした時間は、まるで美しい夢のようだった。
モダンな空間、乳白色の温泉、感動的な食事、そして静寂。
そのすべてが、日常に少し疲れていたふたりの心を、優しく包み込んでくれた。
「また来よう。絶対に」
夫が、妻の手に自分の手をそっと重ねた。
その温もりが、言葉以上の約束として、妻の心に深く刻まれた。
降りしきる雪が、ふたりの足跡をそっと消していく。
けれど、この宿で紡いだ記憶は、決して消えることはないだろう。
登別温泉郷 滝乃家～伝統と格式が薫る、日本庭園に癒される老舗旅館～
■おすすめポイント（登別温泉郷 滝乃家）
- 四季の彩りを映す、約1500坪の広大な日本庭園
- 多彩な泉質を楽しめる、趣向を凝らした露天風呂付き客室
- 地獄谷を望む、開放感抜群の最上階「雲井の湯」
- 旬の道産食材を活かした、伝統的ながらも洗練された会席料理
- 長年の歴史に培われた、心安らぐきめ細やかなおもてなし
創業100年以上の歴史を誇る、登別を代表する老舗旅館。館内は和の情緒に満ち、一歩足を踏み入れると、その格式と温かいおもてなしに心が安らぎます。特に、館内から望む美しい日本庭園は圧巻の一言。日本の伝統美の中で、ゆったりとした時間を過ごしたい夫婦に最適です。
客室
数ある客室の中でも、50代の夫婦には庭園に面した露天風呂付きの客室がおすすめです。和の設えが美しい部屋から、そのまま庭へ出るかのように湯船へ。広々とした和室で手足を伸ばし、窓の外に広がる四季折々の庭園美を眺める時間は、何物にも代えがたい贅沢です。
客室露天風呂の時間
客室の障子を開けると、そこには手入れの行き届いた日本庭園が広がっています。その庭に向かって設えられた信楽焼の丸い湯船。乳白色の硫黄泉がなみなみと注がれ、独特の香りが旅情を掻き立てます。湯船に身を沈めると、庭の木々や苔むした岩、そして季節の花々が目の前に広がり、まるで一幅の絵画の中に溶け込んだかのようです。
夜には庭園がライトアップされ、昼間とはまた違う幻想的な雰囲気に。虫の音をBGMに、ふたりきりで湯に浸かる。流れゆく雲を眺めながら、これまでの人生を振り返り、これからの未来に思いを馳せる。そんな静かで内省的な時間を、この場所は優しく包み込んでくれます。
共用風呂
この宿のもう一つの自慢が、最上階5階にある展望大浴場「雲井の湯」。大きな窓からは、白煙を上げる地獄谷を一望でき、登別ならではのダイナミックな景観を楽しみながら湯浴みができます。泉質も硫黄泉と鉄泉の2種類があり、湯めぐりが可能です。
さらに、地下1階には滝が流れる庭園露天風呂「地緑の湯」も。自然の岩を配した野趣あふれる空間で、川のせせらぎを聞きながら入る温泉は格別です。時間帯によって男女が入れ替わるため、ぜひ両方の湯を体験してみてください。
食事
夕食は、部屋または個室の食事処でいただく会席料理。北海道の山海の幸をふんだんに使い、料理長の熟練の技で仕上げられた一皿一皿が、旅の夜を彩ります。食材の持ち味を最大限に引き出した、繊細かつ奥深い味わいは、老舗旅館ならではの風格を感じさせます。
朝食の和食膳もまた、丁寧な仕事ぶりが光る品々。焼き魚や出汁巻き玉子など、日本の朝の原風景ともいえる食事が、心と体に優しく染み渡ります。美しい庭園を眺めながらいただく朝食は、清々しい一日の始まりを約束してくれるでしょう。
サービス
夕食を終え、部屋で寛いでいると、仲居さんが夜食を運んできてくれた。
「どうぞ、お夜食でございます」
お櫃には、小さく握られたおむすびが二つ。
「まあ、嬉しい。お腹いっぱいだったはずなのに、見たら食べたくなっちゃうわ」
妻が嬉しそうに微笑む。
「本当だな。こういう心遣いが、この宿らしいな」
夫も頷く。
派手なサービスではない。
けれど、旅人の心を深く温める、さりげない思いやり。
ふたりで一つずつ、温かいおむすびを頬張る。
その素朴な塩味が、どんなご馳走よりも心に沁みた。
こんな50代夫婦におすすめ
- 日本の伝統美や、手入れの行き届いた庭園を愛でたい夫婦
- 老舗旅館ならではの、格式と温かさが両立したおもてなしを求める夫婦
- 登別らしい地獄谷の景観と、多彩な泉質の両方を楽しみたい夫婦
アクセス情報
- 住所：北海道登別市登別温泉町100
- アクセス：JR登別駅よりタクシーで約15分
- 送迎：なし
ふたりで紡ぐ、宿の記憶
朝、少し早起きをして、ふたりで館内を散策した。
目指すは、ラウンジから見える日本庭園。
池には色鮮やかな鯉が優雅に泳ぎ、手入れされた松の緑が目に鮮やかだ。
「きれいね…」
妻がため息をつくように呟いた。
「ああ。何十年も、こうしてこの庭を守ってきた人たちがいるんだな」
夫の言葉に、妻は静かに頷いた。
自分たちの人生も、同じかもしれない。
毎日、同じことの繰り返しのようで、でも少しずつ、丁寧に手入れをしてきたからこそ、今の穏やかな時間がある。
この庭のように、劇的な変化はないかもしれないけれど、季節ごとに違う彩りを見せながら、ふたりの時間はこれからも続いていく。
池の鯉に餌をやりながら、そんなことを思った。
朝日が、庭の木々を、そして隣に立つ妻の横顔を、優しく照らしている。
心のリゾート 海の別邸 ふる川～太平洋と一体になる、絶景のインフィニティ温泉～
■おすすめポイント（心のリゾート 海の別邸 ふる川）
- 目の前に広がる太平洋を一望する、感動的なロケーション
- 海へ続くかのようなインフィニティ設計の露天風呂
- 犬と一緒に宿泊できる、露天風呂付きの特別室を完備
- 虎杖浜・白老の新鮮な山海の幸を味わう、囲炉裏会席
- 読書ラウンジや足湯テラスなど、思い思いの時間を過ごせる空間
登別温泉の中心地から少し足を延ばした、虎杖浜（こじょうはま）。ここに、まるで海に浮かぶように佇むのが「海の別邸 ふる川」です。日常から完全にエスケープし、雄大な太平洋の景色にただただ癒されたい。そんな願いを叶えてくれる、特別な一軒です。
客室
50代の夫婦におすすめしたいのは、源泉かけ流しの露天風呂が付いた特別室。広々とした和洋室の窓の外には、遮るもののない水平線が広がります。波の音をBGMに、ソファで寛いだり、テラスで海風を感じたりと、思い思いの時間を過ごすことができます。愛犬家には、大切な家族と一緒に泊まれるドッグヴィラも用意されています。
客室露天風呂の時間
客室のテラスに設えられた、檜の香りが清々しい露天風呂。湯船に体を沈めると、自分の目線と水平線がひとつになり、まるで太平洋に抱かれているかのような錯覚に陥ります。肌にまとわりつくような、とろりとした泉質は「美人の湯」として知られる虎杖浜温泉の源泉かけ流し。
刻一刻と表情を変える海を眺めながら、ただ無心に湯に浸かる。朝は水平線から昇る朝日に感動し、夜は漁火と満点の星空に心を奪われる。自然という偉大なアーティストが描く絶景を、ふたりだけの特等席から眺める時間は、何物にも代えがたい魂の洗濯となるでしょう。
共用風呂
この宿を象徴するのが、海へと続くかのようにデザインされたインフィニティ露天風呂です。湯船の縁が海と一体化し、圧倒的な開放感を味わうことができます。特に、日の出の時間の美しさは格別。オレンジ色に染まる空と海を眺めながらの朝風呂は、一生の思い出になるはずです。
内湯も大きな窓が取られたオーシャンビュー。天候が悪い日でも、雄大な海の景色を楽しみながら湯浴みができます。湯上がりには、海を望むテラスの足湯でのんびりと過ごすのもおすすめです。
食事
夕食は、個室の食事処でいただく囲炉裏会席。目の前の囲炉裏で、虎杖浜で水揚げされた新鮮な魚介や、白老牛、そして旬の野菜を焼き上げ、熱々のうちにいただきます。自分たちで焼き上げる楽しさと、素材の味をダイレクトに味わえる贅沢さが魅力です。
朝食は、体に優しい和食膳。特に、虎杖浜名物のたらこは絶品です。炊き立てのご飯に乗せていただけば、思わず顔がほころびます。窓の外に広がる穏やかな朝の海を眺めながら、豊かな朝の時間を満喫してください。
サービス
ラウンジの一角に、たくさんの本が並んだ書斎のようなスペースがあった。
「すごいわ、図書館みたい」
妻が目を輝かせる。
窓際のソファに座れば、太平洋を一望できる最高の読書席だ。
「君はここでゆっくり本でも読んでいたらいい。俺は、もう一度風呂に入ってくる」
夫はそう言って、大浴場へ向かった。
妻は、一冊の詩集を手に取り、ソファに深く腰掛けた。
波の音だけが聞こえる静かな空間で、ページをめくる。
お互いの好きな時間を、尊重し、邪魔しない。
長年連れ添った夫婦だからこその、心地よい距離感。
旅先で過ごす、それぞれの豊かな孤独が、ふたりの絆をよりしなやかにしていく。
こんな50代夫婦におすすめ
- 都会の喧騒を離れ、ただひたすら雄大な海の景色に癒されたい夫婦
- インフィニティ温泉など、非日常感あふれる体験をしたい夫婦
- 採れたての新鮮な魚介や、囲炉裏料理が好きな夫婦
アクセス情報
- 住所：北海道白老郡白老町虎杖浜289-3
- アクセス：JR登別駅よりタクシーで約10分
- 送迎：JR登別駅、JR虎杖浜駅より無料送迎あり（要予約）
ふたりで紡ぐ、宿の記憶
朝。水平線が、少しずつオレンジ色に染まり始めた。
客室露天風呂に肩まで浸かり、その瞬間を待つ。
隣には、同じように黙って海を見つめる夫がいる。
やがて、雲の切れ間から、力強い光が差し込んだ。
今日という新しい一日が、この海から生まれてくる。
「すごいな…」
夫が、感嘆の声を漏らした。
「ええ…」
妻も、言葉にならない感動で胸がいっぱいだった。
これまで、数えきれないほどの朝を一緒に迎えてきた。
けれど、こんなにも荘厳で、美しい朝は初めてかもしれない。
人生の後半戦。
これから先、どんな朝が待っているだろう。
きっと、穏やかな日ばかりではないはずだ。
でも、この朝日のように、力強く昇っていける。
ふたり一緒なら。
湯面に映る光が、希望のようにきらめいていた。
緑の風リゾート きたゆざわ～森と川のせせらぎに包まれる、大自然のエンターテイメント～
■おすすめポイント（緑の風リゾート きたゆざわ）
- 日本最大級、20もの多彩な露天風呂が点在する「森の散歩湯」
- 川沿いに佇む、プライベートな露天風呂付きの特別室
- 和洋中、約80種類の料理が並ぶ、ライブ感あふれるビュッフェ
- 満点の星空の下で楽しむ、焚き火や焼きマシュマロ体験
- 散策路や足湯など、広大な敷地を活かしたアクティビティが充実
登別温泉から少し北へ、支笏洞爺国立公園の豊かな自然に抱かれた北湯沢温泉。その中心に位置するのが、広大な敷地を誇る「緑の風リゾート」です。エンターテイメント性に富んだ多彩な温泉と、大自然を満喫できるアクティビティは、アクティブに休日を楽しみたい夫婦にぴったりです。
客室
夫婦水入らずの時間を過ごすなら、川のせせらぎが聞こえる場所に佇む、露天風呂付きの特別和洋室「渓流和室」がおすすめです。テラスに備えられた専用の露天風呂からは、長流川（おさるがわ）の清流と、対岸の森を間近に望むことができます。自然との一体感を存分に味わえる空間です。
客室露天風呂の時間
リビングから続くウッドデッキに出ると、すぐそこに長流川の清らかな流れがあります。その川に向かって設えられた、岩造りの露天風呂。湯船に身を沈めると、川のせせらぎが心地よいBGMとなり、森の木々が優しく語りかけてくるようです。遮るものは何もなく、まさに大自然の懐に抱かれているかのような感覚に包まれます。
春には新緑、夏には深緑、秋には紅葉と、季節ごとに移り変わる森の景色を独り占めできる贅沢。夜には、澄み切った空に満点の星が輝きます。都会では決して見ることのできない星の数に、思わず言葉を失うでしょう。自然が織りなす壮大な espectáculo を、ふたりだけの空間で心ゆくまで堪能してください。
共用風呂
このリゾートの最大の魅力は、日本最大級の広さを誇る大露天風呂。20もの香り湯や立ち湯、ハーブ湯などが点在し、まるで森の中を散策するように湯めぐりを楽しめます。四季折々の自然を感じながら、一つ一つの湯をゆっくりと巡る時間は、まさに温泉のテーマパークのよう。
大浴場も広々としており、内湯、檜風呂、ジャグジーなど多彩な浴槽が揃っています。一日中いても飽きることのない、温泉エンターテイメントがここにあります。
食事
夕食は、森の中のレストランをイメージした空間で楽しむビュッフェスタイル。和食、洋食、中華の専門シェフが腕をふるうオープンキッチンからは、できたての料理が次々と提供されます。北海道産の野菜を使ったサラダバーや、揚げたての天ぷら、握り寿司、そしてパティシエ特製のデザートまで、約80種類もの料理が並び、目移りしてしまうほどです。
朝食ビュッフェも種類が豊富。特に、焼きたてのパンや、新鮮な野菜とフルーツを使ったスムージーが人気です。森の光が差し込むレストランで、健やかな一日の始まりを迎えることができます。
サービス
夜、中庭に出ると、パチパチと音を立てて燃える焚き火があった。
宿泊客が集まり、スタッフから渡されたマシュマロを焼いている。
「あなたも、やってみたら？」
妻に促され、夫も少し照れながら火の輪に加わった。
串に刺したマシュマロを、そっと火にかざす。
隣では、若いカップルが楽しそうに笑い合っている。
「昔、子供たちとキャンプに行ったのを思い出すな」
夫がぽつりと呟いた。
「ええ、そうね。あの時も、あなたが火の番だったわ」
妻が懐かしそうに目を細める。
甘く焦げたマシュマロの香りと共に、忘れていた家族の思い出が蘇る。
焚き火の炎が、ふたりの心を温かく照らしていた。
こんな50代夫婦におすすめ
- 一つの宿で、多彩な温泉をとことん満喫したい夫婦
- ビュッフェスタイルで、好きなものを好きなだけ楽しみたいグルメな夫婦
- 童心に返って、自然の中でのアクティビティや体験を楽しみたい夫婦
アクセス情報
- 住所：北海道伊達市大滝区北湯沢温泉町300-2
- アクセス：JR伊達紋別駅よりバスで約45分
- 送迎：JR札幌駅より無料送迎バスあり（要予約）
ふたりで紡ぐ、宿の記憶
20もの露天風呂を、ふたりでスタンプラリーのように巡った。
ラベンダーの湯、よもぎの湯、りんごの湯。
一つ入るごとに、童心に返っていくようだった。
「全部、制覇したな」
最後の湯から上がり、夫が満足そうに言った。
「ええ。なんだか、すごい達成感ね」
妻も笑って応える。
これまでの人生、ふたりでたくさんのことを達成してきた。
子育て、仕事、家のローン。
一つ一つ、決して楽な道のりではなかったけれど、いつも隣には彼がいた。
この温泉めぐりは、まるで自分たちの人生の縮図のようだと、ふと思った。
「ねえ、あなた」
「ん？」
「これからも、色々な温泉を一緒にめぐりましょうね」
「ああ、もちろんだ」
力強く頷く夫の顔は、湯上りのせいか、少しだけ赤く見えた。
この森の温泉が、ふたりのこれからの道を、温かく照らしてくれているようだった。
旅亭 花ゆら～花の香りと細やかなおもてなしに癒される、和風モダン旅館～
■おすすめポイント（旅亭 花ゆら）
- 館内の随所に飾られた季節の花と、優しいおもてなし
- 最上階に位置する、展望露天風呂付きの特別な客室
- 登別でも珍しい、乳白色の硫黄泉と無色透明の食塩泉の2種類を堪能
- 旬の食材の持ち味を活かした、繊細な京風会席料理
- エステや岩盤浴など、女性に嬉しいリラクゼーション施設も充実
登別温泉の中心街にありながら、一歩足を踏み入れると、華やかで落ち着いた和の空間が広がる「旅亭 花ゆら」。その名の通り、館内の至る所に美しい花が生けられ、訪れる人の心を和ませてくれます。きめ細やかなおもてなしと、女性好みの優しい雰囲気が魅力の宿です。
客室
夫婦での滞在には、最上階7階にある展望露天風呂付きの客室がおすすめです。和の趣と現代的な快適さが融合した空間で、窓の外には登別の温泉街と、その向こうに広がる山並みを望むことができます。広々としたテラスに備えられた専用の露天風呂で、誰にも気兼ねすることなく湯浴みを楽しめます。
客室露天風呂の時間
最上階のテラスに設えられた、信楽焼の湯船。そこには、登別が誇る乳白色の硫黄泉がたっぷりと注がれています。湯船に身を沈めると、眼下には登別の温泉街の灯りが広がり、まるで宝石箱のよう。遠くには山々のシルエットが浮かび上がり、旅情を掻き立てます。
温泉街の賑わいを遠くに感じながら、ふたりだけの静かな時間を過ごす。このコントラストが、何とも言えない贅沢さを感じさせてくれます。湯上がりにバスローブを羽織り、テラスの椅子に座って夜景を眺める。そんなロマンチックなひとときが、ふたりの旅の記憶をより一層色鮮やかなものにしてくれるでしょう。
共用風呂
大浴場では、登別でも珍しく、乳白色の「硫黄泉」と、無色透明で肌に優しい「食塩泉」の2種類の泉質を楽しむことができます。それぞれ効能の異なる湯を比べながら入るのも一興です。特に、自然の木々に囲まれた露天風呂は、四季の移ろいを感じながら、心ゆくまで温泉を満喫できる癒しの空間です。
また、有料の貸切岩盤浴も完備。プライベートな空間でたっぷりと汗を流せば、心も体もすっきりとリフレッシュできるはずです。
食事
夕食は、個室の食事処でいただく京風の創作会席料理。料理長が厳選した北海道の旬の食材を、京料理の繊細な技法で仕上げています。素材の味を活かした上品な味付けと、季節感を大切にした美しい盛り付けが特徴です。
一品一品、最適なタイミングで運ばれてくる温かい心遣いも嬉しいポイント。周りを気にすることなく、ふたりの会話を楽しみながら、ゆっくりと食事を堪能できます。見た目にも美しい料理の数々が、旅の夜に華を添えてくれます。
サービス
ロビーに足を踏み入れると、ふわりと花の香りがした。
カウンターや廊下の片隅に、さりげなく、しかし見事に生けられた季節の花々。
「素敵ね、このお花」
妻が、一輪の百合の前で足を止める。
その横顔は、花のように優しく見えた。
部屋に通されると、床の間にも小さな野の花が飾られていた。
豪華な調度品よりも、こうしたささやかな心遣いが、人の心を豊かにする。
宿のスタッフたちの、温かく、細やかな心配りが、館内の至る所から伝わってくる。
この宿を選んで良かったと、夫は心から思った。
こんな50代夫婦におすすめ
- 華やかで優しい、和風モダンな雰囲気が好きな夫婦
- 京風の上品な会席料理を、プライベートな空間で楽しみたい夫婦
- 館内に生けられた花や、細やかな心遣いに癒されたい夫婦
アクセス情報
- 住所：北海道登別市登別温泉町100
- アクセス：JR登別駅よりタクシーで約15分
- 送迎：なし
ふたりで紡ぐ、宿の記憶
チェックアウトを済ませ、車に乗り込む。
宿のスタッフが、深々と頭を下げて見送ってくれている。
「本当に、いい宿だったな」
夫がハンドルを握りながら言った。
「ええ。お花も、お料理も、温泉も…全部、心がこもっていたわ」
妻も同意する。
特に印象に残っているのは、部屋に生けられていた小さな花のことだ。
決して華美ではないけれど、そこに在るだけで、空間をぱっと明るくしていた。
自分たちの夫婦関係も、そうありたいと思う。
派手な愛情表現や、高価なプレゼントがあるわけではない。
けれど、日々の暮らしの中に、相手を思いやる小さな心遣いを忘れない。
そんな、野の花のような夫婦でありたい。
車窓を流れる景色を見ながら、妻はそっと夫の横顔に視線を送った。
旅は終わり、また日常が始まる。
でも、この宿で受け取った温かい心のバトンを、きっと明日からの毎日に繋いでいける。
まとめ｜さあ、ふたりの時間を紡ぐ旅へ
今回は、日本屈指の名湯・登別温泉で、50代の夫婦が心から満たされる「露天風呂付き客室」を持つ宿を5軒、厳選してご紹介しました。
- 望楼NOGUCHI登別：モダンな空間で過ごす、大人のためのプライベートリゾート
- 登別温泉郷 滝乃家：美しい日本庭園と伝統のおもてなしに癒される、格式高い老舗旅館
- 心のリゾート 海の別邸 ふる川：太平洋の絶景と一体になる、感動のインフィニティ温泉
- 緑の風リゾート きたゆざわ：多彩な露天風呂と自然体験が楽しめる、温泉エンターテイメントリゾート
- 旅亭 花ゆら：花の香りと優しいおもてなしに包まれる、和風モダン旅館
子育てという大役を果たし、少しだけ肩の荷が下りた今。ふと隣を見れば、共に白髪を重ね、優しい笑顔を浮かべるパートナーがいる。長い年月を共に歩んできたふたりだからこそ、今、必要なのは、誰にも邪魔されずに、ただお互いを労い、語り合う時間です。
客室の露天風呂に注がれる名湯に癒されながら、これまでの感謝を伝える。美味しい料理に舌鼓を打ちながら、これからの夢を語り合う。そんなかけがえのない時間が、ふたりの絆をより深く、しなやかなものにしてくれるはずです。
さあ、次の休日は、ふたりの物語の新たな1ページをめくる旅へ出かけませんか。