那須温泉|50代夫婦のための露天風呂付き客室【厳選5選】御用邸の森で紡ぐ、静寂の休日

目次

なぜ賢い夫婦は、旅先に「那須」という選択をするのか

子育てという長い旅路を終え、ようやく手にしたふたりの時間。さて、どこへ行こうか。賑やかな観光地もいいけれど、今のふたりが本当に求めているのは、もっと穏やかで、心に深く染み入るような体験ではないでしょうか。

那須。その名は、多くの人が知るリゾート地でありながら、どこか静かで知的な響きを持ちます。皇室の御用邸が佇むその森は、ただ美しいだけでなく、選び抜かれた静寂と品格に満ちています。

木々の葉が風にそよぐ音、鳥のさえずり、そして大地から湧き出る豊かな温泉。那須の魅力は、声高に主張するのではなく、訪れる者の五感にそっと寄り添うように存在します。だからこそ、多くの経験を重ね、本質を見抜く目を持つようになった50代の夫婦が、ふたたび互いを見つめ、語り合う場所に、この地を選ぶのです。

これからご紹介するのは、単なる宿泊施設ではありません。それは、那須の自然と一体となり、夫婦の時間を優しく包み込む「露天風呂付き客室」という名の舞台。さあ、日常を脱ぎ捨て、ふたりのためだけの物語を紡ぐ旅へ出かけましょう。

那須別邸 回

~デザインと静寂が織りなす、大人のための隠れ家~

■おすすめポイント(那須別邸 回)

  • 全室スイート仕様で源泉かけ流しの露天風呂を完備
  • 建築家・松葉啓氏による、自然と調和した美しいデザイン
  • 個室で愉しむ、那須の恵みを活かした創作和食会席
  • ライブラリーラウンジやバーなど、大人のための共用スペースが充実
  • 完全なプライベートを重視した、きめ細やかなおもてなし

那須の豊かな緑に溶け込むように佇む「那須別邸 回」。ここは、日常の喧騒から完全に解放されることを約束された、大人のための聖域です。一歩足を踏み入れれば、計算され尽くした光と影が織りなす空間美に心を奪われるでしょう。モダンでありながら、どこか温もりを感じるデザインは、ふたりの時間に新たな彩りを加えてくれます。

客室

全ての客室が、露天風呂を備えたスイート仕様。広々としたリビングスペース、落ち着きのあるベッドルーム、そして何より、那須の自然を独り占めできるテラスが配されています。室内にいても常に森の気配を感じられる設計は、心を穏やかに解きほぐしてくれます。

客室露天風呂の時間

ガラスの扉を開けると、そこは森の息吹を直接感じるための特等席。信楽焼の浴槽は、ふたりで入ってもゆとりのある大きさで、なめらかな肌触りが心地よい。肩まで浸かると、目の前にはただ、風に揺れる木々の緑と、どこまでも広がる空があるだけ。

聞こえるのは、鳥のさえずりと、湯船から溢れるお湯の音。保温効果が高いと言われるメタケイ酸を豊富に含む湯が、じんわりと体を芯から温めていきます。朝は木漏れ日の中で、夜は満天の星の下で、誰にも邪魔されることなく、ただひたすらに湯と自然に身を委ねる。そんな、これ以上ないほどに贅沢な時間が、ここに流れています。

共用風呂

この宿には、あえて大浴場は設けられていません。それは、客室という完全なプライベート空間で、那須の湯と自然を心ゆくまで満喫してほしいという宿からのメッセージ。誰の視線も気にすることなく、ふたりだけのリズムで温泉を愉しむ。これこそが、「回」が提案する最も贅沢な湯浴みのスタイルなのです。

食事

食事は、プライベートが保たれた個室の食事処で。料理長が腕を振るうのは、那須高原で育まれた新鮮な野菜や、とちぎ和牛など、地元の旬の食材をふんだんに使った創作和食会席です。

一皿一皿が、まるで絵画のように美しく盛り付けられ、運ばれてくるたびに小さな驚きと感動があります。食材本来の味を最大限に引き出す繊細な調理法は、まさに職人技。那須のテロワールを舌で感じながら、ふたりでゆっくりと美酒に酔いしれる夜は、忘れられない思い出となるでしょう。

サービス

食後、ライブラリーラウンジのソファに並んで腰掛ける。
暖炉の炎が、静かに揺らめいていた。
「ここの本、君が好きそうなのが多いな」
夫が手に取ったのは、一冊の古い写真集だった。
「本当。…見て、この写真、昔行った場所に似ているわ」
スタッフがそっと近づき、温かいハーブティーをふたつのカップに注いでくれる。
そのさりげない気遣いが、会話を途切れさせることなく、空間に温かみを添える。
「もう少し、ここにいないか」
夫の言葉に、妻は静かに頷いた。

こんな50代夫婦におすすめ

  • 建築やデザインが好きで、美しい空間で過ごしたい夫婦
  • 誰にも邪魔されない、完全なプライベートを求める夫婦
  • 食事も空間も、すべてにおいて上質さを求める本物志向の夫婦

アクセス情報

  • 住所:栃木県那須郡那須町高久乙3375-1016
  • アクセス:JR「那須塩原駅」より車で約30分
  • 送迎:なし

ふたりで紡ぐ、宿の記憶

テラスの露天風呂から、月が見えた。
虫の音が、まるで音楽のように響いている。
「若い頃は、もっと賑やかな旅行が好きだったな」
夫が、湯けむりの向こうを見つめながら呟いた。
「そうね。あれも楽しかったわ」
妻は、彼の肩にそっとお湯をかける。
昔は、旅の計画を分刻みで立てていた。
観光地を巡り、写真を撮り、お土産を選ぶ。
それが、いつしか変わっていった。
今はこうして、何もせず、ただ同じ湯に浸かっている時間が何より愛おしい。
言葉にしなくても、隣にいる夫も同じ気持ちだとわかる。
過ぎてきた日々のこと、これからのこと。
答えを出すわけではない。ただ、この静かな湯の中で、互いの存在を確かめ合う。
それだけで、心は満たされていく。
「…そろそろ、あがろうか」
「ええ」
ふと見上げた夜空に、ひときわ明るい星がひとつ、静かに瞬いている。

山水閣

~昭和初期の浪漫を纏う、登録有形文化財の宿~

■おすすめポイント(山水閣)

  • 昭和初期創業、木造三階建ての本館が国の登録有形文化財
  • 那須御用邸と同じ「大丸温泉」を源泉かけ流しで楽しめる
  • 露天風呂付き客室「別邸 回」ではモダンな滞在も可能
  • 地元食材を活かした、昔ながらの日本の“御馳走”を提供
  • 歴史が薫る空間で、古き良き日本の温泉旅情を味わえる

那須街道から少し入った、静かな木立の中に「山水閣」はひっそりと佇んでいます。昭和初期に建てられた木造三階建ての本館は、一歩足を踏み入れると、まるで時が巻き戻ったかのような感覚に包まれるでしょう。磨き上げられた廊下、丁寧に設えられた調度品。そのすべてが、長い年月をかけて育まれてきた物語を静かに語りかけてきます。

客室

露天風呂付きの客室は、伝統的な和の趣と現代的な快適さが見事に融合しています。窓の外に広がる那須の自然を眺めながら、心から寛げる空間です。特に、離れの客室はプライベート感が高く、ふたりだけの時間を大切にしたい夫婦に最適です。

客室露天風呂の時間

客室のテラスに設けられた露天風呂は、檜の香りが心地よい、昔ながらの風情を感じさせる造り。那須御用邸と同じ源泉である「大丸温泉」から引かれた湯は、柔らかく肌を包み込み、体の疲れを芯から解きほぐしてくれます。

湯船に身を沈めれば、聞こえてくるのは風の音と鳥の声だけ。目の前に広がるのは、手つかずの自然の風景。近代的な設備とは異なる、素朴でありながらも深い趣を持つこの場所で、夫婦は言葉少なにお互いの時間を共有します。それは、ただ湯に浸かるという行為を超え、日本の温泉文化の奥深さに触れるような、心豊かなひとときです。

共用風呂

山水閣が誇るのは、歴史を感じさせる二つの大浴場「木の湯」と「石の湯」。それぞれ趣の異なる空間で、自家源泉の名湯を心ゆくまで堪能できます。

特に、野趣あふれる露天風呂は格別です。那須の森に抱かれるように作られた湯船は、四季折々の自然の美しさを映し出します。湯上がりには、ラウンジで冷たい飲み物を片手に、火照った体を休ませるのも良いでしょう。館内をゆっくりと散策し、この宿が持つ独特の空気感を味わうのも、また一興です。

食事

夕食は、旬の地元食材をふんだんに使用した会席料理。派手さはありませんが、一品一品、丁寧に作られたことが伝わってくる、滋味深い味わいです。

那須の清らかな水で育った野菜、新鮮な川魚、そしてとちぎ和牛。料理長が厳選した素材の良さを最大限に引き出す、伝統的な調理法が光ります。それは、流行を追うのではなく、昔から日本人が大切にしてきた「御馳走」の心を思い出させてくれるような、温かい食卓です。

サービス

夕食を終え、部屋に戻る廊下を歩く。
ギシ、と床が優しく鳴る音が心地よい。
「この音、なんだか懐かしいな」
「子供の頃、おばあちゃんの家に行くとこんな音がしたわ」
部屋の前に、さりげなく置かれた一輪挿しに目が留まる。
野に咲く小さな花が、控えめに、けれど凛として生けられていた。
「きれい…」
豪華な装飾ではない。けれど、そこには宿の人の細やかな心遣いが確かに感じられた。
言葉にはならない「おもてなし」が、この宿の隅々にまで息づいている。
そのことに気づいたとき、ふたりの心に温かいものが広がっていく。

こんな50代夫婦におすすめ

  • 歴史や文化を感じる、風情のある宿が好きな夫婦
  • 派手さよりも、本質的な落ち着きと安らぎを求める夫婦
  • 古き良き日本の温泉旅館の情緒をじっくりと味わいたい夫婦

アクセス情報

  • 住所:栃木県那須郡那須町湯本206
  • アクセス:JR「那須塩原駅」より車で約30分
  • 送迎:那須塩原駅より無料送迎あり(要予約)

ふたりで紡ぐ、宿の記憶

縁側に腰掛け、夫が庭を眺めている。
その背中に、妻はそっと声をかけた。
「何を考えているの?」
「いや…仕事のこと、家のこと、子供たちのこと。ここに来るまでは、色々なことが頭の中をぐるぐる回っていたんだ」
夫は、ゆっくりとこちらを振り返る。
「でも、この宿の空気を吸っていると、不思議とどうでも良くなるな。大事なのは、もっとシンプルなことだったんだって、思い出させてくれる」
そう言って、彼は妻の手に自分の手を重ねた。
ごつごつとして、大きくて、温かい手。
この手に支えられて、今まで歩いてきた。
「そうね。私たち、少し走りすぎたのかもしれないわね」
妻は、その手を優しく握り返す。
言葉はそれ以上、必要なかった。
山水閣の静かな時間が、ふたりの心を解きほぐし、本当に大切なものが何かを、そっと教えてくれている。
ただ隣にいることの幸せを、ふたりは噛みしめていた。

美肌名湯と憩いの宿 若喜(WAKAKI)

~モダンな空間で味わう、pH9.1の「若返りの湯」~

■おすすめポイント(美肌名湯と憩いの宿 若喜)

  • pH9.1を誇るアルカリ性の自家源泉「若喜の湯」を全客室で楽しめる
  • 2021年リブランド、モダンで洗練されたデザイナーズ空間
  • 露天風呂付きのスイートルームやコンセプトルームが充実
  • 地産地消にこだわった、目にも美しい創作料理
  • 湯上がりラウンジでのフリードリンクなど、心地よいサービス

那須高原の静かな別荘地に佇む「若喜(WAKAKI)」。老舗旅館の温かみはそのままに、2021年のリブランドを経て、現代的な感性が光るスタイリッシュな宿へと生まれ変わりました。この宿の最大の魅力は、なんといってもpH9.1を誇る自家源泉「若喜の湯」。まるで化粧水のようにとろりとした肌触りの湯は、「若返りの湯」とも呼ばれ、美意識の高い大人たちを魅了してやみません。

客室

露天風呂付きの客室は、それぞれに異なるテーマを持つコンセプトルームとなっており、訪れるたびに新しい発見があります。広々としたスイートルームから、機能的でモダンな客室まで、どの部屋も洗練されたインテリアで統一され、非日常の時間を演出します。

客室露天風呂の時間

プライベートテラスに設えられた露天風呂に、とろりとした湯が絶え間なく注がれる。デザイン性の高い浴槽に体を沈めると、その滑らかな湯触りに思わず感嘆の声が漏れるほど。アルカリ性の湯が肌を優しく包み込み、日頃の疲れと共に、心までもしっとりと潤していくようです。

湯船の縁に顎を乗せ、目を閉じれば、那須の澄んだ空気が頬を撫でていきます。ここは、誰にも邪魔されることなく、ただひたすらに名湯と向き合える場所。湯上がりには、驚くほど肌がすべすべになっていることに気づくでしょう。それは、この宿がくれる、ささやかで確かな喜びです。

共用風呂

広々とした大浴場でも、「若喜の湯」を心ゆくまで満喫できます。ガラス張りの大きな窓から光が差し込む内湯は、開放感にあふれ、ゆったりとした気分で湯浴みを楽しめます。

野趣あふれる岩造りの露天風呂では、那須の自然を間近に感じながら、名湯に浸かる贅沢を味わえます。湯上がりには、ラウンジで無料のドリンクを片手にクールダウン。夫婦で今日の出来事を語り合いながら、ゆったりと流れる時間を楽しむのもおすすめです。

食事

食事は、ライブ感あふれるオープンキッチンを備えたレストランで。那須の契約農家から届く新鮮な野菜や、A5ランクのとちぎ和牛など、料理長が自らの足で探し求めたこだわりの食材が並びます。

素材の味を最大限に活かしつつ、フレンチの技法も取り入れた創作料理は、驚きと喜びに満ちています。一皿ごとに変わる器の美しさも、食事の時間を豊かに彩るエッセンス。五感で味わう那須の恵みは、旅の記憶をより一層鮮やかなものにしてくれるはずです。

サービス

湯上がりのラウンジで、夫が珍しくハーブウォーターを手に取った。
「ここのお水、美味しいな」
「本当ね。レモンの香りがして、すっきりするわ」
ラウンジには、コーヒーや紅茶、ジュースなどが自由に飲めるように用意されている。
そのさりげない心遣いが、滞在の満足度をぐっと高めてくれる。
「なんだか、体の内側からきれいになる気がするな」
「あら、あなたも美肌に目覚めたのかしら?」
妻の冗談に、夫は照れくさそうに笑った。
派手な演出はないけれど、心地よいと感じるサービスが、この宿には満ちている。

こんな50代夫婦におすすめ

  • 温泉の泉質にこだわりがあり、特に美肌効果を期待したい夫婦
  • 伝統的な旅館よりも、モダンでスタイリッシュな空間を好む夫婦
  • 地産地消の美味しい料理を、美しい空間で楽しみたい夫婦

アクセス情報

  • 住所:栃木県那須郡那須町湯本656-1
  • アクセス:JR「那須塩原駅」より車で約25分
  • 送迎:なし

ふたりで紡ぐ、宿の記憶

部屋の露天風呂から上がり、テラスの椅子に腰掛ける。
妻の肌が、月明かりの下でいつもより白く艶めいて見えた。
「ここのお湯、本当にすごいな。肌がつるつるだ」
夫が素直に言うと、妻は嬉しそうに微笑んだ。
「あなたもよ。なんだか、少し若返ったみたい」
それは、お世辞でも冗談でもなく、本心だった。
長年連れ添っていると、お互いの変化に鈍感になりがちだ。
けれど、こうして日常を離れた場所で改めて向き合うと、新しい発見がある。
「これからも、色々なところに一緒に行きたいな」
夫の言葉に、妻は静かに頷く。
「ええ。まだまだ、ふたりで行きたい場所はたくさんあるわ」
若喜の「若返りの湯」は、肌だけでなく、ふたりの心にも瑞々しい潤いを与えてくれた。
旅は、まだまだ始まったばかりだ。
そんな予感が、那須の涼やかな夜気の中に溶けていく。

茜庵(あかねあん)

~全6室の隠れ家で味わう、何もしないという究極の贅沢~

■おすすめポイント(茜庵)

  • 一日わずか6組限定、大人のためのプライベートな隠れ家
  • 全室に源泉かけ流しの露天風呂とウッドデッキを完備
  • 那須の旬を味わう、オーベルジュさながらの創作料理
  • ライブラリーや談話室など、静かに過ごせる共用スペース
  • 自然の音だけが聞こえる、圧倒的な静寂と非日常感

那須高原の最も奥深く、静寂に包まれた場所に「茜庵」はあります。わずか6室しかないこの宿は、まさに大人のための隠れ家。華美な装飾や過剰なサービスとは無縁の、本質的な豊かさがここにあります。求めているのが、誰にも邪魔されずに、ただひたすらふたりの時間を過ごすことであるならば、茜庵は最高の選択肢となるでしょう。

客室

6つの客室は、すべて離れのような独立した造りになっており、プライバシーが完全に守られています。広々とした和洋室には、大きな窓から那須の自然光がたっぷりと差し込みます。それぞれの部屋に備えられたウッドデッキと露天風呂が、滞在の主役です。

客室露天風呂の時間

ウッドデッキに設えられた信楽焼の露天風呂は、まさに森の中の特等席。白いにごり湯の鹿の湯源泉が、とくとくと湯船に注がれています。硫黄の香りがふわりと立ち上り、温泉地に来たことを実感させてくれます。

湯に体を沈めると、聞こえてくるのは風が木々を揺らす音と、鳥のさえずりのみ。目の前には、ただただ深い緑が広がり、まるで森と一体になったかのような感覚に陥ります。時間という概念さえ忘れてしまうほどの、深い静寂と安らぎ。ここで過ごす時間は、何物にも代えがたい、ふたりのための宝物となるでしょう。

共用風呂

こちらの宿には、大浴場などの共用風呂は用意されていません。それは、全客室に備えられた専用の露天風呂で、誰にも気兼ねすることなく、ふたりの時間を心ゆくまで楽しんでほしいという、宿の哲学の表れです。自分たちの好きな時間に、好きなだけ、名湯を独り占めする。これ以上の贅沢はありません。

食事

夕食は、ダイニングでいただく創作和会席。オーベルジュとしての側面も持つこの宿の料理は、那須の旬の恵みを最大限に活かした、芸術品のような一皿の連続です。

地元で採れたばかりの新鮮な野菜は、その力強い味わいに驚かされるはず。メインの肉料理や魚料理も、素材の良さを引き立てる繊細な味付けが施されています。一品一品に込められた料理長の情熱を感じながら、ゆっくりと食事を愉しむ。それは、旅のハイライトとなる至福のひとときです。

サービス

夜、ラウンジの本棚から一冊の画集を手に取り、ソファに腰掛ける。
ふと、隣に座った夫がコーヒーカップを差し出した。
「どうぞ」
ラウンジにはセルフサービスのコーヒーメーカーが置かれている。
夫が、自分のために入れてきてくれたのだ。
「ありがとう」
特別な会話はない。
ただ、静かにページをめくり、時々コーヒーを口に運ぶ。
茜庵での時間は、そうやって流れていく。
何かをしてもらうのではなく、自分たちのペースで、心地よいと感じることをする。
その自由さが、何よりも心地よかった。

こんな50代夫婦におすすめ

  • とにかく静かな環境で、誰にも邪魔されず過ごしたい夫婦
  • 読書や音楽鑑賞など、インドアでの趣味をゆっくり楽しみたい夫婦
  • 美食家で、オーベルジュのような質の高い食事を求める夫婦

アクセス情報

  • 住所:栃木県那須郡那須町湯本213-1450
  • アクセス:JR「那須塩原駅」より車で約40分
  • 送迎:なし

ふたりで紡ぐ、宿の記憶

ウッドデッキの椅子に並んで座り、満天の星を眺めていた。
街の明かりが届かないここは、星の瞬きがまるで宝石のように見える。
「すごいな…こんなに星が見えるなんて」
夫が、子供のようにはしゃいだ声で言った。
「本当ね。天の川まで見えるわ」
無数の星が、静かにまたたいている。
その壮大な光景の前では、日々の悩みや不安が、とてもちっぽけなものに思えた。
私たちは、この広い宇宙の中で、偶然出会い、人生を共にしてきた。
当たり前だと思っていたその奇跡を、改めて感じる。
「なあ」
夫が、妻の肩をそっと引き寄せた。
「これからも、よろしくな」
「こちらこそ」
言葉は短くても、その温もりだけで十分だった。
茜庵の静かな夜が、ふたりの絆を、空に輝く星々のように、より一層強く結びつけてくれている。
流れ星がひとつ、すうっと夜空を横切っていった。

那須温泉山楽

~皇室も愛した、伝統と格式が薫るクラシックリゾート~

■おすすめポイント(那須温泉山楽)

  • 昭和天皇もご宿泊された、那須を代表する格式高い老舗旅館
  • 敷地内に2本の自家源泉を持ち、豊富な湯量を誇る
  • 露天風呂付き客室からは那須連山の雄大な景色を望める
  • 伝統的ながらも洗練された、季節感あふれる本格会席料理
  • きめ細やかで温かい、日本旅館ならではの上質なおもてなし

那須御用邸に隣接する地に、堂々とした風格で佇む「那須温泉山楽」。昭和天皇をはじめ、多くの皇族方がご宿泊されたという歴史が、この宿のすべてを物語っています。一歩足を踏み入れれば、そこは古き良き日本の伝統と、リゾートホテルとしての洗練が見事に調和した空間。長年培われてきたおもてなしの心に触れ、背筋が伸びるような心地よい緊張感と、心からの安らぎの両方を味わうことができます。

客室

露天風呂付きの客室は、広々とした和室にリビングスペースを備えた、ゆとりのある造り。窓の外には、那須連山の雄大なパノラマが広がります。日本の伝統美が息づく空間で、贅沢な休日を過ごすことができます。

客室露天風呂の時間

広々としたテラスに設えられた露天風呂の向こうには、遮るもののない那須の山々の稜線が広がります。敷地内から湧き出る2本の自家源泉をブレンドした湯は、肌あたりが柔らかく、体の芯までじんわりと温めてくれます。

朝、鳥のさえずりとともに目覚め、雄大な景色を眺めながら湯に浸かる。夕暮れには、山々が茜色に染まっていく幻想的な光景を独り占めする。刻一刻と表情を変える大自然を前に、夫婦の会話も自然と弾みます。それは、日常の些細な悩みなど忘れさせてくれる、圧倒的なスケール感に満ちた湯浴みの時間です。

共用風呂

山楽が誇るのは、趣の異なる二つの大浴場「瑞泉郷」と「那須温泉郷」。それぞれに広々とした内湯と、那須の自然を間近に感じられる露天風呂が備えられています。

特に、うっそうとした木々に囲まれた露天風呂は、まるで森の中で湯浴みをしているかのような気分にさせてくれます。豊富な湯量を誇る自家源泉が惜しみなく注がれる湯船で手足を伸ばせば、日頃の疲れもストレスも、すべて湯の中に溶けていくようです。湯上がり処の設えも素晴らしく、館内のどこにいても格式と心地よさを感じられます。

食事

夕食は、お部屋または個室の料亭でいただく本格的な会席料理。とちぎ和牛をはじめ、那須高原の新鮮な野菜、近隣で獲れた川魚など、料理長が厳選した旬の食材が、熟練の技で美しい一皿へと昇華されます。

季節の移ろいを目と舌で感じられる料理の数々は、まさに日本の食文化の粋。器の一つひとつにもこだわりが感じられ、食事という行為そのものが、忘れられない思い出となります。伝統を守りつつも、現代的な感性を取り入れた料理は、多くの美食家を唸らせてきました。

サービス

夕食後、部屋で寛いでいると、仲居さんが夜食のおにぎりを届けてくれた。
「夜分に失礼いたします。もし小腹が空きましたら、召し上がってくださいませ」
その優しい笑顔と、丁寧な言葉遣いに、心が温かくなる。
「ありがとう。嬉しいな」
夫が受け取ると、笹の葉に包まれたおにぎりから、ほんのりと湯気が立っていた。
「こういうの、久しぶりだな」
「本当に。なんだか、とても贅沢な気持ちになるわね」
マニュアル通りのサービスではない。
一人ひとりの客に寄り添う、血の通ったおもてなし。
この宿が長年愛され続けてきた理由が、小さなおにぎり一つから伝わってくるようだった。

こんな50代夫婦におすすめ

  • 伝統と格式を重んじる、クラシックなスタイルの宿が好きな夫婦
  • 日本旅館ならではの、きめ細やかで丁寧なおもてなしを体験したい夫婦
  • 雄大な自然の景色を眺めながら、ゆったりと温泉を楽しみたい夫婦

アクセス情報

  • 住所:栃木県那須郡那須町湯本206
  • アクセス:JR「那須塩原駅」より車で約30分
  • 送迎:那須塩原駅より無料送迎あり(要予約)

ふたりで紡ぐ、宿の記憶

窓の外に広がる那須連山を、夫が静かに見つめている。
その横顔は、会社で見せる厳しい表情とは違う、穏やかなものだった。
「こうして見ていると、自分の悩みなんてちっぽけに思えてくるな」
ぽつりと漏らした言葉に、妻は何も言わず、彼の隣に立った。
同じ景色を、同じ思いで眺める。
これまでの人生、色々な山があった。
嬉しい山も、険しい山も、ふたりで一緒に越えてきた。
そしてこれからも、きっと越えていける。
この雄大な景色が、そう語りかけてくれているようだった。
「ねえ、あなた」
妻が声をかけると、夫が優しい眼差しで振り返る。
「帰り道、少し遠回りしない? 新しいカフェができたんですって」
「ああ、いいな。そうしよう」
特別な約束ではない。
けれど、ふたりの未来が、また少し色鮮やかになった気がした。
山楽の窓から見える那須の山々は、これから先も、きっとふたりの心に寄り添い続けてくれる。
そんな確信が、胸に温かく広がっていく。

まとめ|さあ、ふたりの時間を紡ぐ旅へ

那須御用邸の森が育んだ、静寂と品格に満ちた5つの宿をご紹介しました。

  • 那須別邸 回:デザインと静寂が織りなす、大人のための隠れ家
  • 山水閣:昭和初期の浪漫を纏う、登録有形文化財の宿
  • 美肌名湯と憩いの宿 若喜(WAKAKI):モダンな空間で味わう、pH9.1の「若返りの湯」
  • 茜庵(あかねあん):全6室の隠れ家で味わう、何もしないという究極の贅沢
  • 那須温泉山楽:皇室も愛した、伝統と格式が薫るクラシックリゾート

どの宿も、ただ体を休めるだけの場所ではありません。それは、夫婦という長い物語の新しい章を書き記すための、美しく静かな舞台です。

子育てを終え、人生の後半という新しいステージに立った今だからこそ、心から響き合う旅があるはずです。那須の澄んだ空気の中で、豊かな湯に身を委ね、美味しい食事に舌鼓を打つ。そして何より、隣にいるパートナーと、ゆっくりと語り合う。

そんな、何でもないようでいて、かけがえのない時間こそが、これからのふたりを支える力になるのかもしれません。
さあ、次の休日は、ふたりの時間を深く紡ぎ直す旅へ出かけてみませんか。


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