50代からの旅。勝浦温泉でしか見つからない、夫婦の新たな水平線
子育てという長い航海を終え、ふと隣を見れば、少しだけ日焼けしたパートナーの横顔。これからの人生という大海原へ、ふたりで再び漕ぎ出す。そんな新たな船出にふさわしい港が、紀伊半島の南東に抱かれた勝浦温泉です。
ここは、黒潮がもたらす豊かな海の幸と、一年を通して温暖な陽光に恵まれた場所。荒々しくも美しいリアス式海岸に打ち寄せる波の音は、都会の喧騒に慣れた耳を優しく洗い流してくれます。そして、紺碧の海と一体になるかのような絶景の露天風呂は、ただ体を温めるだけでなく、これまで語り尽くせなかった想いまでも、静かに解きほぐしてくれるでしょう。
ただ美しいだけではない、人生の深みを知る50代の夫婦だからこそ、その真価がわかる。今回は、そんな勝浦温泉で、ふたりの時間を何よりも大切にできる「露天風呂付き客室」を備えた、珠玉の宿を5軒だけ、厳選してご紹介します。
碧き島の宿 熊野別邸 中の島
~船でしか辿り着けない、ふたりだけの聖域~
■おすすめポイント(碧き島の宿 熊野別邸 中の島)
- 専用船で渡る、島まるごとが宿という究極のプライベート感
- 紺碧の海と一体になる、自家源泉かけ流しの絶景露天風呂
- 熊野の海の幸、山の幸を凝縮した美食の数々
- 世界遺産・熊野古道へのアクセスも良好
- 静寂の中で、ただ波の音だけが響く圧倒的な非日常体験
専用の船着き場から船に乗り、わずか数分。辿り着いたのは、外界から完全に隔絶された浦島。ここ「熊野別邸 中の島」は、島そのものが一つの宿という、まさに大人のための隠れ家です。潮風に迎えられ、一歩足を踏み入れた瞬間から、ふたりの物語の新しい章が始まります。
客室
全室がオーシャンビューの露天風呂付き。広々とした和洋室の窓からは、遮るもののない勝浦湾の絶景が広がります。室内は、木の温もりとモダンなデザインが融合した、心から安らげる空間。ただソファに並んで座り、移りゆく海の色を眺めているだけで、満ち足りた時間が流れていきます。
客室露天風呂の時間
湯船の縁に手をかけると、眼下には穏やかな入江が広がり、遠くには熊野の山々が霞んで見えます。陶器でできた湯船は、肌あたりが驚くほど滑らか。そこに注がれるのは、島内で湧き出る自家源泉の湯。硫黄の香りがふわりと鼻をかすめ、旅の始まりを告げます。
聞こえるのは、満ち引きを繰り返す波の音と、時折響く鳥の声だけ。隣にいるパートナーの呼吸さえも、愛おしく感じられるほどの静寂が、ふたりを包み込みます。夕暮れ時、空と海が茜色に染まる光景は、言葉を失うほどの美しさ。湯に浸かりながら交わす言葉は少なくても、その眼差しだけで、これまで共に歩んできた歳月を讃え合うことができるはずです。
共用風呂
この宿を訪れたなら、ぜひ足を運んでほしいのが絶景大浴場「紀州潮聞之湯」です。その名の通り、まるで海に浮かんでいるかのようなインフィニティ露天風呂からの眺めは圧巻の一言。広々とした湯船に体を預ければ、空と海と自分が溶け合っていくような、不思議な感覚に満たされます。
内湯もまた、大きな窓から光が差し込む開放的な造り。湯上がりには、海を望むラウンジで冷たいドリンクを片手に、火照った体を休めるのも一興です。客室のプライベートな湯とはまた違う、雄大な自然との一体感を味わう時間は、この宿ならではの贅沢と言えるでしょう。
食事
夕食は、個室の食事処で。運ばれてくるのは、料理長の美学が込められた「熊野モダン懐石」。目の前の海で揚がったばかりのマグロや伊勢海老、そして熊野牛など、地元の最高級食材が、洗練された一皿一皿へと昇華されています。
器の一つ一つにもこだわりが感じられ、まるで芸術作品を鑑賞しているかのよう。料理に合わせてソムリエが選んでくれる地酒やワインを傾ければ、夫婦の会話も自然と弾みます。「このお造り、今まで食べた中で一番かもしれないわ」「ああ、この肉の旨味は格別だな」。そんな素直な感動の言葉が、旅の食卓を豊かに彩ります。
サービス
ラウンジのソファに深く腰掛けると、スタッフが静かに近づいてきた。
‘今、ちょうど夕日が一番美しい時間でございます。よろしければ、あちらのテラスからご覧になりませんか’
彼の指さす方へ目をやると、空と海が燃えるようなオレンジ色に染まっている。
‘まあ、きれい…’
妻が小さく息をのむ。
夫は無言で立ち上がり、妻にそっと手を差し伸べた。
その手を取る妻の表情は、ここへ来る前よりもずっと、穏やかに見えた。
こんな50代夫婦におすすめ
- 誰にも邪魔されない、絶対的なプライベート空間を求める夫婦
- 移動そのものも旅の楽しみと捉えられる、好奇心旺盛な夫婦
- 世界遺産・熊野古道の散策も視野に入れているアクティブな夫婦
アクセス情報
- 住所: 〒649-5334 和歌山県東牟婁郡那智勝浦町勝浦1179-9
- アクセス: JR紀伊勝浦駅より徒歩約7分、観光桟橋より専用船で約3分
- 送迎: なし(駅より観光桟橋まで各自移動)
ふたりで紡ぐ、宿の記憶
勝浦港から宿へ向かう、たった数分の船旅。
潮風が頬を撫で、都会で強張っていた心を解きほぐしていく。
島影が近づくにつれ、日常が遠ざかっていくのがわかった。
‘本当に、島全体が宿なんだな’
夫が、少年のように目を輝かせて言う。
客室の露天風呂に浸かりながら、ふたりで長い時間、海を見ていた。
これまでのこと、これからのこと。
たくさんの言葉を交わしたわけではない。
ただ、同じ夕日を見て、同じ波の音を聞いた。
湯上がりのテラスで、冷えた白ワインをグラスに注ぐ。
カチン、とグラスを合わせる音が、静寂に心地よく響いた。
‘ありがとう’
どちらからともなく、同じ言葉が零れる。
何に対しての感謝なのか、もう、どちらにもわかっていた。
島を離れる船の上で、夫がそっと妻の手を握る。
その温かさが、新しい旅の始まりの合図だった。
ここからまた、ふたりの航海が続いていく。
陽いずる紅の宿 勝浦観光ホテル
~太平洋の夜明けを独り占めする、天空の湯船~
■おすすめポイント(陽いずる紅の宿 勝浦観光ホテル)
- 全室オーシャンフロントで、客室露天風呂から日の出を望める絶好のロケーション
- 那智の滝を遠望できる、パノラマビューの展望大浴場
- 新鮮な生まぐろをはじめ、紀伊半島の海の幸を堪能できる会席料理
- 熊野那智大社や青岸渡寺への観光拠点として便利
- 長年愛されてきた、老舗ならではの心温まるおもてなし
勝浦湾を見下ろす高台に佇む「勝浦観光ホテル」。その名の通り、この宿の最大の魅力は、息をのむほどの眺望です。特に、客室の露天風呂から眺める日の出は、忘れられない記憶となるはず。水平線から昇る太陽が海と空を紅く染め上げる瞬間、ふたりはきっと、新たな一日を迎えられることへの感謝の念に包まれるでしょう。
客室
露天風呂付きの客室は、落ち着いた和の設え。窓際に設けられた広縁の椅子に座れば、眼下に広がる太平洋のパノラマを心ゆくまで楽しめます。波の音をBGMに読書をしたり、ただぼんやりと海を眺めたり。何もしない贅沢が、ここにはあります。
客室露天風呂の時間
夜、満点の星空の下で湯船に体を沈めれば、まるで宇宙に浮かぶ小舟に乗っているかのよう。漁火が遠くで瞬き、静かな時間が流れます。そして、旅のハイライトは夜明け前。少し早起きして湯船に浸かり、その瞬間を待ちます。
水平線が次第に白み始め、やがて燃えるような紅色の光が差し込む。その神々しいまでの光景に、ふたりは言葉を失うでしょう。新しい太陽の光を全身に浴びながら浸かる朝の湯は、心と体にエネルギーを満たしてくれます。「きれいだね」「ああ」。そんな短い会話だけで、すべてが満たされる特別な時間です。
共用風呂
最上階にある展望大浴場「天空の湯」は、まさに絶景の一言。大きな窓ガラスの向こうには、那智の山々と雄大な太平洋が広がり、天気の良い日には那智の滝をも遠望できます。時間と共に表情を変える景色を眺めながら、手足を伸ばして湯に浸かれば、日頃の疲れもすっかり癒されるはずです。
サウナも完備されており、汗を流してリフレッシュすることも可能。湯上がりの休憩スペースからの眺めもまた格別で、夫婦で待ち合わせをして、火照った体に心地よい風を感じながら、勝浦の美しい景色を堪能するのもおすすめです。
食事
夕食で供されるのは、日本有数の生まぐろの水揚げ量を誇る勝浦ならではの、新鮮な海の幸を中心とした会席料理。もっちりとした食感と濃厚な旨味を持つ生まぐろのお造りは、ここでしか味わえない逸品です。
一品一品、丁寧に作られた料理は、どれも素材の良さが際立っています。地元の旬の食材をふんだんに使い、季節感を大切にした献立は、目と舌の両方で楽しませてくれます。海の恵みを存分に味わいながら、夫婦でゆっくりと語らう夕食の時間は、旅の素晴らしい思い出となるでしょう。
サービス
夕食を終え、部屋に戻る廊下を歩いていると、すれ違った仲居さんがにこやかに声をかけてきた。
‘今宵は月が大変美しゅうございます。お部屋のお風呂からも、きっとよく見えますよ’
‘そうですか、ありがとう’
部屋に戻り、言われた通りに露天風呂へ出てみると、海面に月の光が一筋の道を創っていた。
‘本当だ。月光浴なんて、久しぶりだな’
夫の言葉に、妻は静かに頷く。
さりげない一言が、旅の夜を忘れられないものに変えてくれる。
こんな50代夫婦におすすめ
- 部屋から美しい日の出を眺め、感動的な朝を迎えたい夫婦
- 世界遺産・熊野三山を巡る旅の拠点を探している夫婦
- 新鮮な生まぐろを心ゆくまで味わいたい美食家の夫婦
アクセス情報
- 住所: 〒649-5334 和歌山県東牟婁郡那智勝浦町天満1530
- アクセス: JR紀伊勝浦駅より車で約5分
- 送迎: あり(JR紀伊勝浦駅より定時運行)
ふたりで紡ぐ、宿の記憶
目覚まし時計よりも早く、自然と目が覚めた。
空が白み始める前の、静かな青の時間。
そっと寝室を抜け出し、客室の露天風呂の湯を確かめる。
隣で眠る夫を起こさないように、静かに湯船に体を入れた。
水平線の向こうが、少しずつ、本当に少しずつ明るんでくる。
いつの間にか隣に夫がいて、同じ方角を見ていた。
‘おはよう’
‘…おはよう’
やがて、雲の切れ間から、燃えるような太陽が顔を出す。
その光は、海面をキラキラと照らし、私たちの顔にも温かい光を届けた。
神々しいとは、こういう景色のことを言うのだろう。
今日という一日が、祝福されているような気がした。
湯から上がり、淹れたてのコーヒーを二人で飲む。
言葉はなかった。
ただ、同じ光景を心に刻みつけたという確かな感覚だけが、そこにあった。
この朝の光を、私たちはきっと、これから何度も思い出すだろう。
そしてそのたびに、またここへ来ようと、心に誓うのだ。
里創人 熊野倶楽部
~熊野の森に抱かれ、心と体を解き放つオールインクルーシブの休日~
■おすすめポイント(里創人 熊野倶楽部)
- 食事やドリンク、アクティビティが宿泊料金に含まれるオールインクルーシブ
- 全室スイート仕様で、広々としたプライベート空間を確保
- 熊野の自然と文化を体験できる、多彩な無料アクティビティ
- 満点の星空を堪能できる「星見テラス」
- 伊勢神宮の式年遷宮の古材を利用した特別な客室「斎王の宮」
勝浦温泉から少し足を延ばし、熊野の奥深い自然に抱かれた「里創人 熊野倶楽部」。ここは単なる宿泊施設ではなく、熊野の自然そのものを体感できるリゾートです。チェックインした瞬間から、食事やラウンジでのドリンク、多彩なアクティビティがすべて料金に含まれるオールインクルーシブスタイル。財布を気にすることなく、ただ心ゆくまで、ふたりの時間を満喫できます。
客室
全室がプライベート感を重視したスイート仕様。広々としたリビングとベッドルームが配され、テラスには開放的な露天風呂が備えられています。客室によっては、伊勢神宮の古材が使われた特別な空間もあり、神聖な木の香りに包まれて、心穏やかな時間を過ごすことができます。
客室露天風呂の時間
森の静寂に包まれたテラスの露天風呂は、まるで森の泉のよう。鳥のさえずりや風が木々を揺らす音だけが聞こえる中、とろりとした肌触りの湯に体を委ねます。日中は木漏れ日の中で森林浴気分を味わい、夜は満点の星空を仰ぎ見ながらの湯浴みが楽しめます。
都会の喧騒とは無縁の場所で、ただ自然の音に耳を澄ます。そんな贅沢な時間が、日々の疲れやストレスをゆっくりと溶かしてくれます。隣にいるパートナーとの間に流れる、穏やかで優しい空気。それは、この熊野の森がくれる、特別な贈り物かもしれません。
共用風呂
共用施設として、趣の異なる二つの大浴場があります。一つは、広々とした湯船から熊野の山々を望む開放的な「湯処 熊野」。もう一つは、木の香りに癒される静かな空間「香浴 bath & relax」。どちらも美肌の湯として知られる「新湯の峰温泉」の源泉を引いており、湯めぐりを楽しむことができます。
湯上がりには、ラウンジで無料のドリンクを片手にクールダウン。暖炉の火を眺めながら、あるいはテラスで山の空気を吸いながら、何もしない贅沢な時間を過ごす。これもオールインクルーシブならではの楽しみ方です。
食事
食事は、熊野の山海の幸をふんだんに使った「美熊野会席」。地元の契約農家から届く新鮮な野菜、熊野灘で獲れた魚介、そしてブランド肉。料理長が厳選した食材を、素材の味を最大限に活かす調理法で提供してくれます。
レストランでは、食事中のドリンクももちろんフリーフロー。ビールや日本酒、ワイン、ソフトドリンクなど、豊富なメニューの中から好きなものを好きなだけ楽しめます。美味しい料理とお酒に、夫婦の会話も一層深まることでしょう。
サービス
チェックインを済ませると、ラウンジでウェルカムドリンクを勧められた。
‘こちらでは、夕食前のひとときにアペリティフもご用意しております。あちらのテラスで星を眺めながら、食前酒はいかがですか’
促されるままテラスに出ると、手が届きそうなほどの星空が広がっていた。
‘すごいな…こんな星、見たことない’
夫が感嘆の声を上げる。
差し出されたスパークリングワインを片手に、天の川を探す。
支払いを気にすることなく、ただこの瞬間を楽しむことに集中できる。
その自由さが、心を豊かにしてくれた。
こんな50代夫婦におすすめ
- アクティブに自然体験も楽しみつつ、宿ではゆったり過ごしたい夫婦
- 滞在中は支払いを気にせず、心からリラックスしたい夫婦
- 満点の星空や神聖な雰囲気に癒されたい夫婦
アクセス情報
- 住所: 〒519-4326 三重県熊野市久生屋町1430
- アクセス: JR熊野市駅より車で約15分
- 送迎: あり(JR熊野市駅より無料送迎バスあり・要予約)
ふたりで紡ぐ、宿の記憶
日が暮れた後、ふたりで「星見テラス」へ向かった。
寝転がることができるソファに体を預け、空を見上げる。
そこには、今まで見たこともないような、無数の星が輝いていた。
流れ星がすっと空を横切る。
‘あ’
同時に声が出た。思わず顔を見合わせて、笑みがこぼれる。
‘子供の頃、よくこうやって星を見てたな’
夫が懐かしそうに呟いた。
‘あなたは、いつも望遠鏡を持ってたわね’
妻が返す。
忘れていた記憶の欠片が、星の光に照らされて蘇る。
私たちは、こんな風に、たくさんの時間を共有してきた。
そして、これからも。
ラウンジに戻り、温かいハーブティーを頼む。
支払いの必要はない。
ただ、この温かさと、隣にいる人の温もりを感じるだけでよかった。
熊野の森の静かな夜が、ふたりの心を優しく満たしていく。
この旅は、失くしたものを見つける旅ではなく、ここにあるものを再確認する旅なのだと、静かに思った。
culla(キュラ) – VILLA & SAUNA
~モダンな空間で心を整える、新しい形の温泉滞在~
■おすすめポイント(culla(キュラ) – VILLA & SAUNA)
- 1日3組限定、完全プライベートなヴィラタイプの宿泊施設
- 全棟に専用の温泉露天風呂と本格的なロウリュサウナを完備
- 洗練されたモダンなインテリアと、快適性を追求した空間設計
- 地元の人気店が監修する、部屋で楽しむ絶品BBQディナー
- 誰にも気兼ねすることなく、自分たちのペースで過ごせる自由さ
伝統的な温泉旅館とは一線を画す、新しい滞在スタイルを提案する「culla」。ここは、1日わずか3組だけが許される、プライベートヴィラです。モダンで洗練された空間には、源泉かけ流しの露天風呂はもちろん、本格的なロウリュサウナまで完備。心と体を“ととのえる”ことに集中できる、まさに大人のためのウェルネスリトリートです。
客室
独立したヴィラは、広々としたリビングダイニングとベッドルーム、そして温泉露天風呂とサウナを備えたテラスで構成されています。無駄を削ぎ落としたミニマルなデザインでありながら、上質な家具やリネンが配され、居心地の良さは格別。まるで別荘に来たかのような感覚で、リラックスした時間を過ごせます。
客室露天風呂の時間
テラスに設けられた露天風呂は、シックな色合いのタイルで造られたモダンなデザイン。那智勝浦の良質な温泉が、絶え間なく湯船に注がれます。サウナで汗を流した後に、この温泉に浸かる時間は、まさに至福のひととき。火照った体に温泉がじんわりと染み渡り、深いリラクゼーションへと誘います。
夜、ライトアップされた木々を眺めながら湯に浸かれば、そこは完全にふたりだけの世界。サウナと温泉、そして外気浴を繰り返すうちに、心身がリセットされていくのを感じるはずです。これまで体験したことのない、新しい温泉の楽しみ方がここにあります。
共用風呂
こちらの宿には、大浴場などの共用風呂は用意されていません。それは、全客室に備えられた専用の露天風呂とサウナで、誰にも気兼ねすることなく、ふたりの時間を心ゆくまで楽しんでほしいという、宿の哲学の表れです。自分たちだけのペースで、好きな時間に好きなだけ、湯浴みとサウナを堪能する。これ以上ないほどの贅沢が、ここに凝縮されています。
食事
夕食は、テラスで楽しむグランピングBBQ。提供されるのは、地元の人気BBQレストランが監修した、こだわりの食材セットです。熊野牛や地元の新鮮な魚介、彩り豊かな野菜などを、自分たちのペースで焼き上げていきます。
準備や後片付けはすべてスタッフが行ってくれるので、手間は一切かかりません。開放的な空間で、美味しいお酒と共に熱々のBBQを味わう。そんなアクティブな食事のスタイルが、夫婦の間に新たなコミュニケーションを生んでくれるかもしれません。
サービス
サウナの使い方がわからず、少し戸惑っていると、スタッフが丁寧に説明してくれた。
‘このアロマウォーターをサウナストーンにかけると、心地よい香りと蒸気が立ち上ります。お好みでどうぞ’
数種類のアロマオイルが用意されている。
‘どれにする?’
‘僕は白樺かな’
‘じゃあ、私はラベンダーがいいわ’
小さな選択を、ふたりで相談しながら決めていく。
ロウリュの蒸気が、じゅわっと音を立てて空間を満たす。
深く息を吸い込むと、選んだ香りが胸いっぱいに広がった。
自分たちで作り出す、心地よい時間。
そのプロセスさえも、この宿が提供してくれるサービスなのだと感じた。
こんな50代夫婦におすすめ
- 伝統的な旅館よりも、モダンでプライベートな空間を好む夫婦
- サウナが好きで、温泉と共に本格的な「ととのい」を体験したい夫婦
- 自分たちのペースで自由に、アクティブに滞在を楽しみたい夫婦
アクセス情報
- 住所: 〒649-5334 和歌山県東牟婁郡那智勝浦町天満1633-3
- アクセス: JR紀伊勝浦駅より車で約6分
- 送迎: なし
ふたりで紡ぐ、宿の記憶
サウナでたっぷりと汗をかき、水風呂代わりにシャワーを浴びる。
そして、テラスの椅子に腰掛けて、夜風にあたる。
心臓が穏やかに脈打ち、頭がすっきりとクリアになっていくのがわかった。
隣に座る夫も、同じように心地よさそうな表情で目を閉じている。
しばらくして、ふたりで露天風呂に浸かった。
‘サウナの後の温泉って、こんなに気持ちいいんだな’
夫がしみじみと言う。
‘ほんとね。なんだか、悪いものが全部出ていったみたい’
妻が笑う。
会話はそれだけ。
でも、同じ体験を共有したことで生まれた一体感が、そこにはあった。
これまで知らなかった扉を、一緒に開けたような感覚。
部屋に戻り、冷蔵庫から冷えたビールを取り出す。
グラスに注ぎ、軽く合わせた。
その一口が、人生で一番美味しく感じられた。
心と体が“ととのう”とは、こういうことなのかもしれない。
そしてそれは、隣にいる人と分かち合ってこそ、完成するのだと知った。
かつうら御苑
~伝統が香る庭園と、心尽くしの会席に癒される王道の休日~
■おすすめポイント(かつうら御苑)
- 四季折々の表情を見せる、美しい日本庭園
- 那智の黒石を配した野趣あふれる露天風呂
- 料理人の技が光る、正統派の紀州会席料理
- 落ち着いた数奇屋造りの佇まいと、きめ細やかなおもてなし
- 勝浦港を一望する、眺めの良いロケーション
勝浦港を望む閑静な場所に佇む「かつうら御苑」。一歩足を踏み入れると、そこは華美すぎず、しかし品格のある和の空間が広がります。この宿の魅力は、何と言ってもその落ち着いた雰囲気と、長年培われてきたおもてなしの心。美しい日本庭園を眺め、美味しい料理に舌鼓を打ち、良質な湯に浸かる。日本の温泉旅館の良さを再確認できる、王道の宿です。
客室
露天風呂付き客室は、広々とした和室に次の間が付いた、ゆとりある造り。床の間には季節の花が生けられ、細部にまで宿の心遣いが感じられます。窓からは手入れの行き届いた庭園や、穏やかな勝浦港を望むことができ、心静かな時間を過ごすのに最適です。
客室露天風呂の時間
信楽焼の丸い湯船が設えられた、プライベートな露天風呂。庭の木々が借景となり、風情ある湯浴みが楽しめます。誰にも邪魔されず、ふたりきりで浸かる湯は、心と体を芯から温めてくれます。
湯船に浸かりながら、これまでの旅路を振り返る。あるいは、これからの計画を語り合う。そんな穏やかな対話の時間が、自然と生まれる空間です。鳥のさえずりを聞きながら、あるいは月を眺めながら。自分たちだけのペースで、勝浦の名湯を心ゆくまで満喫できます。
共用風呂
大浴場には、那智の黒石をふんだんに使った、野趣あふれる岩露天風呂「滝見の湯」があります。まるで自然の渓流にいるかのような気分で、開放的な湯浴みが楽しめます。夜にはライトアップされ、幻想的な雰囲気に。
また、内湯も広々としており、大きな窓からは光が差し込みます。サウナも併設されているため、気分に合わせて様々な楽しみ方が可能です。伝統的な温泉旅館ならではの、ゆったりとした湯めぐりの時間は、日頃の疲れを忘れさせてくれるでしょう。
食事
夕食は、部屋または個室の食事処で、周りを気にせずゆっくりといただけます。供されるのは、紀州の海の幸、山の幸を存分に味わえる本格会席料理。生まぐろはもちろん、伊勢海老や鮑など、旬の高級食材が並びます。
一品一品、器にもこだわり、料理長の丁寧な仕事ぶりが伝わってきます。出されるタイミングも絶妙で、温かいものは温かいうちに、冷たいものは冷たいうちに。そのきめ細やかな心配りが、食事の時間をより豊かなものにしてくれます。地酒と共に、紀州の味覚をじっくりと堪能する、贅沢なひとときです。
サービス
食事を部屋に運んできてくれた、ベテランの仲居さん。
料理を並べながら、にこやかに話しかけてくれる。
‘旦那様、お箸は左でございますね。こちらに置かせていただきます’
言われて初めて、夫が左利きであることに配慮してくれているのだと気づいた。
‘ありがとうございます。よくお分かりで’
夫が少し照れくさそうに言う。
‘長年、この仕事をしておりますので’
その短いやり取りの中に、この宿が長年培ってきたおもてなしの神髄を見た気がした。
マニュアルではない、一人ひとりに寄り添う心。
それが、旅人の心を温かくするのだ。
こんな50代夫婦におすすめ
- 奇をてらわない、正統派の温泉旅館でゆっくり過ごしたい夫婦
- 美しい日本庭園を眺めながら、穏やかな時間を過ごしたい夫婦
- 部屋食で、水入らずの夕食を楽しみたい夫婦
アクセス情報
- 住所: 〒649-5334 和歌山県東牟婁郡那智勝浦町勝浦216-19
- アクセス: JR紀伊勝浦駅より徒歩約10分
- 送迎: あり(JR紀伊勝浦駅より無料送迎あり)
ふたりで紡ぐ、宿の記憶
部屋の窓から、手入れの行き届いた庭園を眺める。
松の緑、苔の深い色、そして静かに水を湛える池。
長い年月をかけて作られた、調和の取れた美しさがそこにあった。
‘なんだか、落ち着くなあ’
夫がぽつりと呟く。
本当に、その一言に尽きた。
夕食は、部屋でいただいた。
次々と運ばれてくる、美しい料理の数々。
仲居さんの細やかな気配りに、心が和む。
ふたりきりの空間で、誰に気兼ねすることもなく、ゆっくりと箸を進める。
それは、外食では決して味わえない、満ち足りた時間だった。
食後、客室の露天風呂に浸かる。
ほのかに香る硫黄の匂いと、庭の木々を揺らす風の音。
派手な演出も、特別なイベントもない。
でも、それでよかった。
いや、それがよかった。
ただ静かに、当たり前のように隣にいることの幸せ。
この宿の落ち着いた佇まいは、そんな当たり前の奇跡に、そっと気づかせてくれる場所だった。
まとめ|さあ、ふたりの時間を紡ぐ旅へ
今回は、雄大な太平洋に抱かれた勝浦温泉で、50代の夫婦が心から満たされる「露天風呂付き客室」を持つ宿を5軒、ご紹介しました。
- 碧き島の宿 熊野別邸 中の島|船でしか行けない島宿で、究極のプライベートな時間を
- 陽いずる紅の宿 勝浦観光ホテル|客室露天風呂から望む、感動的な日の出をふたりで
- 里創人 熊野倶楽部|熊野の森に抱かれ、心解き放つオールインクルーシブの休日
- culla(キュラ) – VILLA & SAUNA|温泉とサウナで心身をととのえる、新しい滞在スタイル
- かつうら御苑|美しい庭園と美食に癒される、王道の温泉旅館
子育てが終わり、仕事も一つの節目を迎え、ふと立ち止まったとき。隣には、人生の荒波を共に乗り越えてきた、かけがえのないパートナーがいます。
今度の旅は、観光地を巡る旅ではありません。高級な料理を食べるだけの旅でもありません。これまで言えなかった「ありがとう」を伝え、これから始まる新しい物語について語り合うための旅です。
勝浦の雄大な自然と、極上の湯が、きっとおふたりの背中を優しく押してくれるはず。さあ、荷物は少なく、想い出は深く。ふたりの時間を紡ぎ直す旅へ、出かけませんか。