別所温泉で紡ぐ、ふたりの時間。50代夫婦のための露天風呂付き客室がある宿5選

目次

なぜ、人生の後半を歩む夫婦は別所温泉に惹きつけられるのか

信州の鎌倉と称される、静謐な時間が流れる地、別所温泉。その歴史は古く、かの枕草子にも「ななくりの湯」として登場するほど。刺激が少なく、肌を絹のように滑らかにすると言われるアルカリ性の単純硫黄泉は、まさに「美人の湯」の名にふさわしい。

しかし、子育てという大きな役目を終え、これからの人生をふたりで見つめ直す50代の夫婦がこの地を選ぶ理由は、ただ泉質の良さだけではない。北向観音や安楽寺といった古刹が醸し出す厳かな空気。里山に抱かれ、四季の移ろいを肌で感じる穏やかな環境。そして、訪れる人を温かく迎え入れる、上質で小ぢんまりとした宿の数々。

それは、これまでの喧騒を忘れ、ただ静かに語り合い、ふたりの時間を深く見つめ直すための、完璧な舞台装置が揃っているから。ここでは、ただ宿泊するだけではない、夫婦の新たな物語の序章となるような、露天風呂付き客室を持つ珠玉の宿を5軒、厳選してご紹介します。

桂荘

~全室源泉かけ流し露天風呂付き、大人のための隠れ家~

■おすすめポイント(桂荘)

  • 全8室すべてが露天風呂付きの離れ、またはメゾネットタイプ
  • 誰にも邪魔されない、完全なプライベート空間を約束
  • ミニキッチンも完備し、まるで別荘のように自由な滞在が可能
  • 信州の旬を詰め込んだ、部屋食でいただく創作会席料理
  • 自然の音だけが聞こえる、圧倒的な静寂に包まれたロケーション

(導入文)
別所温泉の喧騒から少し離れた高台に、ひっそりと佇む「桂荘」。門をくぐった瞬間から、そこは外界と隔絶された静寂の世界です。全8室すべてが露天風呂を備えた離れ、あるいはメゾネットという贅沢な設えは、ふたりの時間だけを大切にしたいと願う夫婦にとって、これ以上ない選択肢となるでしょう。

客室

客室は、それぞれ趣の異なる和モダンな空間。広々としたリビング、落ち着きのある寝室、そして窓の外に広がる専用の庭。室内にいながらにして、信州の豊かな自然をすぐそばに感じることができます。ミニキッチンが備えられているため、地元の酒店で手に入れたワインを嗜むなど、まるで暮らすような滞在が叶います。

客室露天風呂の時間

信楽焼の陶器風呂や、野趣あふれる岩風呂など、客室ごとに意匠を凝らした露天風呂。湯船に体を沈めれば、別所温泉が誇る「美人の湯」が、ざあっと贅沢に溢れ出していきます。聞こえるのは、湯の流れる音と、風が木々の葉を揺らす音だけ。

夜には満天の星が降り注ぎ、朝には鳥のさえずりが目覚まし代わり。グラスを片手に語り合うもよし、ただ黙って湯に身を委ねるもよし。ここは、時間という概念から解放され、ふたりだけの感覚を研ぎ澄ますための場所です。

共用風呂

こちらの宿には、大浴場などの共用風呂は用意されていません。それは、全客室に備えられた専用の露天風呂で、誰にも気兼ねすることなく、ふたりの時間を心ゆくまで楽しんでほしいという、宿の哲学の表れです。自分たちだけの湯船で、心ゆくまで源泉かけ流しの湯を堪能する。これこそが、桂荘が提供する最も贅沢な体験なのです。

食事

夕食は、信州の山川の幸をふんだんに使った創作会席料理。一品一品、料理長の丁寧な仕事が光る料理が、プライベートな客室へと運ばれてきます。地元の契約農家から届く新鮮な野菜、旨味の濃い信州牛、そして千曲川が育んだ川魚。

器の一つひとつにもこだわりが感じられ、目でも舌でも、信州の四季を存分に味わうことができます。朝食の、炊き立ての釜炊きご飯と滋味深い和の品々もまた、一日の始まりを豊かに彩ってくれることでしょう。

サービス

食事が終わる頃、部屋の電話が静かに鳴る。
「お食事、お下げしてもよろしいでしょうか」
さりげない気遣いに、妻が受話器を置く。
しばらくして現れたスタッフは、手際よく膳を片付けると、深々と頭を下げた。
「何かございましたら、いつでもお申し付けくださいませ」
過剰でなく、不足もない。
その絶妙な距離感が、ふたりの空間をより心地よくしてくれる。

こんな50代夫婦におすすめ

  • 誰にも邪魔されず、ふたりだけの時間を満喫したい夫婦
  • まるで別荘に滞在するように、自由な時間を過ごしたい夫婦
  • 自然の音に耳を澄ませ、心からリラックスしたい夫婦

アクセス情報

  • 住所: 長野県上田市別所温泉322
  • アクセス: 上田電鉄別所線 別所温泉駅から徒歩約15分
  • 送迎: なし

ふたりで紡ぐ、宿の記憶

月明かりだけが、庭の露天風呂をぼんやりと照らしている。
湯船の縁に腰掛けた夫が、夜空を見上げて呟いた。
「星が、こんなに近くに見えるんだな」
妻は返事をせず、そっと隣に腰を下ろす。
肩と肩が触れ合う距離。
湯の流れる音だけが、ふたりの間の沈黙を優しく埋めていく。
言葉はいらない。
これまでも、これからも。
互いの体温を感じながら、ただ同じ空を見上げている。
この静寂こそが、何よりの対話だと知っているから。
桂荘の夜は、ふたりが重ねてきた時間を肯定するように、静かに、深く更けていく。

七草の湯

~北向観音に抱かれ、絶景を望む高台の湯宿~

■おすすめポイント(七草の湯)

  • 高台に位置し、別所温泉の町並みと塩田平を一望できる展望露天風呂
  • 全15室という、きめ細やかなおもてなしが可能な規模感
  • 信州プレミアム牛や地元野菜を堪能できる、こだわりの創作郷土料理
  • 北向観音まで徒歩1分という、散策に絶好のロケーション
  • 落ち着いた雰囲気のラウンジで、湯上がりの一杯を楽しめる

(導入文)
北向観音のすぐ隣、石畳の小径を上った先に「七草の湯」は静かに客人を迎えます。その最大の魅力は、高台の立地を生かした圧倒的な眺望。特に、展望露天風呂付き客室から望む塩田平の風景は、まるで一枚の絵画のよう。歴史ある温泉街の情緒と、信州の雄大な自然を同時に感じられる、贅沢な滞在が約束されています。

客室

露天風呂付きの客室は、落ち着いた色調でまとめられた和室。窓を大きく取った開放的な造りで、部屋にいながらにして四季折々の景色を堪能できます。華美な装飾はありませんが、隅々まで清掃が行き届き、丁寧に活けられた季節の花が、心地よい安らぎを与えてくれます。

客室露天風呂の時間

檜の香りが清々しい、専用の露天風呂。眼下には、瓦屋根が連なる別所温泉の町並みと、その先に広がるのどかな塩田平の田園風景が広がります。遠くの山々が夕日に染まる頃、湯船に浸かりながらその絶景を眺める時間は、まさに至福のひととき。

日々の喧騒や悩み事が、この雄大な景色の中にすっと溶けていくような感覚を覚えるでしょう。これまでふたりで眺めてきたどんな景色とも違う、心に深く刻まれる風景がここにあります。

共用風呂

館内には、趣の異なる二つの大浴場があります。「石の湯」は重厚な岩造りで力強く、「木の湯」は温かみのある檜造りで優しい雰囲気。それぞれに内湯と露天風呂が備えられ、時間による男女入れ替え制なので、両方の湯を楽しむことができます。

客室の露天風呂でプライベートな時間を過ごした後は、少し館内を散策する気分で大浴場へ向かうのも一興。広々とした湯船で手足を伸ばせば、また違った開放感を味わえるはずです。

食事

夕食は、個室の食事処でいただきます。信州プレミアム牛の陶板焼きをメインに、地元の契約農家から仕入れる旬の野菜、岩魚のお造りなど、信州の恵みが詰まった創作郷土料理が並びます。派手さはありませんが、素材の味を大切にした実直な料理は、旅慣れた大人の舌を満足させてくれるでしょう。

一品ずつ丁寧に運ばれ、料理にまつわるちょっとした話を聞くのも楽しい時間。作り手の想いを感じながら、地酒と共にゆっくりと味わいたい料理です。

サービス

ラウンジの窓から、夕暮れの町並みを眺めていた。
夫が、そっとコーヒーカップを差し出す。
「ほら、冷めるぞ」
一口飲むと、優しい香りが鼻に抜ける。
チェックインの時、フロントの女性が教えてくれた。
「こちらのラウンジのコーヒーは、いつでもご自由にお召し上がりくださいね」
特別なことではない。
でも、その何気ない一言と、静かに過ごせる空間が、心を解きほぐしていく。

こんな50代夫婦におすすめ

  • 温泉からの眺望を何よりも大切にしたい夫婦
  • 北向観音など、温泉街の散策を楽しみたい夫婦
  • 信州のブランド牛や地野菜をじっくり味わいたい夫婦

アクセス情報

  • 住所: 長野県上田市別所温泉1621
  • アクセス: 上田電鉄別所線 別所温泉駅から徒歩約7分
  • 送迎: あり(要事前連絡)

ふたりで紡ぐ、宿の記憶

客室の露天風呂から、夕暮れの塩田平を眺めていた。
茜色に染まった空の下、家々の灯りがぽつり、ぽつりと灯り始める。
「きれいだね」
妻が呟くと、夫は黙って頷いた。
子供たちが巣立ち、家にふたりきりになった時、少しだけ戸惑ったことを思い出す。
これから、ふたりでどんな景色を見ていくのだろう。
そんな漠然とした不安が、目の前のこの穏やかな風景に溶けていく。
特別な会話はない。
ただ、同じものを見て、同じように美しいと感じる。
それだけで十分だった。
七草の湯から望むこの景色は、ふたりのこれからの時間を照らす、確かな灯りのように思えた。

玉屋旅館

~国の登録有形文化財に泊まる、歴史とモダンが交差する宿~

■おすすめポイント(玉屋旅館)

  • 大正時代に建てられた本館「大正館」が国の登録有形文化財に指定
  • 木の温もりと歴史を感じる、源泉100%かけ流しの総檜風呂
  • 古き良き趣と、現代的な快適性を両立させた客室
  • 信州の伝統野菜や地元の食材を活かした、月替わりの会席料理
  • 館内に点在するステンドグラスや調度品が醸し出す、ノスタルジックな雰囲気

(導入文)
別所温泉の中心に、時を重ねた威厳と共に佇む「玉屋旅館」。その歴史は350年以上に及び、大正ロマンの香りを今に伝える本館は、国の登録有形文化財にも指定されています。一歩足を踏み入れれば、そこはまるで時が巻き戻ったかのよう。磨き上げられた木の床、美しいステンドグラス、歴史を物語る調度品の数々。古き良き日本の宿の情緒と、現代の快適性が見事に融合した空間が、訪れる者を優しく包み込みます。

客室

露天風呂付き客室は、歴史の趣を感じさせながらも、快適に過ごせるようリノベーションされた空間。露天風呂は信楽焼の浴槽で、プライベートな湯浴みを心ゆくまで楽しめます。窓の外には手入れの行き届いた庭が広がり、静かで落ち着いた時間を過ごすことができます。

客室露天風呂の時間

庭の緑を映す、信楽焼の露天風呂。歴史ある建物の静けさの中で湯に浸かっていると、日々の忙しさが遠い昔のことのように感じられます。聞こえてくるのは、かすかな風の音と、源泉が注がれる心地よい音色だけ。

ここで交わす言葉は、自然と穏やかなものになります。「次の休みは、どこへ行こうか」「庭の紫陽花がきれいだね」。そんな何気ない会話の断片が、夫婦の記憶に新たな彩りを加えていく。歴史が育んだ静寂の中で、ふたりの時間もまた、ゆっくりと熟成されていくのです。

共用風呂

この宿の象徴とも言えるのが、総檜造りの大浴場。高い天井と太い梁が印象的な空間に、源泉100%かけ流しの湯が満ちています。湯船に足を踏み入れた瞬間に広がる、芳醇な檜の香り。そして、肌を優しく包み込む「美人の湯」。窓の外の竹林を眺めながら、歴史ある湯の恵みを全身で感じることができます。

また、ステンドグラスが美しい貸切風呂もあり、プライベートな空間でレトロな雰囲気を楽しむのもおすすめです。

食事

夕食は、信州の伝統野菜や旬の食材をふんだんに取り入れた月替わりの会席料理。食事処で、一品ずつ丁寧に提供されます。先付から水菓子に至るまで、料理長の繊細な感性が光る料理は、まるで芸術品のよう。信州サーモンや福味鶏など、地元のブランド食材も楽しめます。

歴史ある宿の雰囲気の中でいただく食事は、格別の味わい。器にもこだわりが感じられ、五感すべてで信州の食文化を堪能できます。

サービス

夕食後、館内をゆっくりと散策する。
きれいに磨かれた廊下が、鈍い光を放っている。
「この柱、すごいな」
夫が、太い大黒柱にそっと手を触れる。
通りかかった若いスタッフが、にこやかに話しかけてきた。
「こちらは大正時代からの柱でして、当館の宝でございます」
その誇らしげな表情に、宿への愛情が滲む。
歴史は、ただ古いだけでは残らない。
守り、伝えようとする人々の想いがあるからこそ、輝き続けるのだ。

こんな50代夫婦におすすめ

  • 歴史や文化、趣のある建物が好きな夫婦
  • 大正ロマンのようなノスタルジックな雰囲気を楽しみたい夫婦
  • 源泉かけ流しの総檜風呂を体験してみたい夫婦

アクセス情報

  • 住所: 長野県上田市別所温泉1628
  • アクセス: 上田電鉄別所線 別所温泉駅から徒歩約5分
  • 送迎: あり(要事前連絡)

ふたりで紡ぐ、宿の記憶

大浴場へと続く、少し軋む木の廊下をふたりで歩く。
窓の外は、静かな夜の闇に包まれている。
「昔、子供たちが小さい頃に来た旅行を思い出すな」
夫がぽつりと言った。
「あの頃は、こんなに静かな廊下を歩く余裕もなかったわね」
妻が笑って応える。
慌ただしく過ぎていった日々。
無我夢中で、ふたりで駆け抜けてきた時間。
この廊下に刻まれた無数の足跡のように、自分たちの人生にも確かな軌跡が残っている。
今はもう、急ぐ必要はない。
一歩一歩、この床の感触を確かめるように。
この宿が重ねてきた時間と、自分たちが重ねてきた時間を慈しむように。
ふたりはゆっくりと、湯の香りがする方へと歩いていく。

かしわや本店

~20種以上の湯船で館内湯めぐりを楽しむ、温泉三昧の宿~

■おすすめポイント(かしわや本店)

  • 露天風呂や貸切風呂など、館内合わせて20種以上の多彩な湯船
  • プライベートな湯浴みが楽しめる、趣の異なる3つの無料貸切風呂
  • 北向観音に隣接し、朝のお参りや散策にも最適な立地
  • 地産地消にこだわった、信州の四季を感じる和食会席
  • 温泉街の中心にありながら、静かで落ち着いた滞在が可能

(導入文)
「温泉をとことん楽しみたい」。そんな純粋な願いを叶えてくれるのが、ここ「かしわや本店」です。趣の異なる大浴場に、開放感あふれる露天風呂、そして無料で利用できる3つの貸切風呂。館内を巡れば、まるで温泉のテーマパークに迷い込んだかのよう。夫婦で浴衣姿のまま、次はどの湯に入ろうかと相談しながら廊下を歩く。そんな心躍る体験が、ふたりの旅を忘れられないものにしてくれます。

客室

露天風呂付き客室は、和の情緒あふれる落ち着いた空間。広縁から続く専用のテラスに、信楽焼の陶器風呂が設えられています。誰にも気兼ねすることなく、好きな時に好きなだけ名湯に浸かれる贅沢。温泉街の中心にありながら、客室は静寂に包まれており、ゆったりとした時間を過ごせます。

客室露天風呂の時間

陶器の柔らかな曲線が体に心地よくフィットする、自分たちだけの露天風呂。湯船から立ち上る湯気の向こうには、別所の空が広がります。館内の湯めぐりから戻り、部屋で一息ついた後に浸かる湯はまた格別。

「やっぱり部屋のお風呂が一番落ち着くね」そんな会話を交わしながら、今日の出来事を振り返る。賑やかな湯めぐりの楽しさと、プライベートな空間の安らぎ。その両方を味わえるのが、この宿の客室露天風呂の醍醐味です。

共用風呂

この宿の真骨頂は、なんといっても多彩な共用風呂。木曽檜をふんだんに使った内湯、岩造りの野趣あふれる露天風呂、珍しい「おこもり風呂」など、個性豊かな湯船が揃います。特に人気なのが、予約不要・無料で利用できる3つの貸切風呂。「龍神の湯」「鶴の湯」「亀の湯」と名付けられ、それぞれに異なる趣向が凝らされています。

「まずは大浴場に行って、そのあと貸切風呂を覗いてみようか」。そんな風に、夫婦で館内の湯めぐり計画を立てるのも楽しい時間。何度訪れても新しい発見がある、奥深い温泉体験が待っています。

食事

夕食は、信州の旬の食材を活かした和食会席。山の幸、川の幸、そして地元で採れた新鮮な野菜が、彩り豊かに膳を飾ります。派手さはありませんが、一品一品、丁寧に作られていることが伝わってくる優しい味わいです。特に、熱々の状態で提供される岩魚の塩焼きは絶品。

食事は個室の食事処、またはお部屋で。周りを気にすることなく、ふたりのペースでゆっくりと食事と会話を楽しめます。信州の地酒も豊富に揃っているので、料理とのペアリングを試してみるのも良いでしょう。

サービス

湯めぐりを終え、火照った体でロビーのソファに腰掛ける。
「冷たいお水、どうぞ」
さりげなく差し出されたグラスに、妻が「ありがとう」と微笑む。
「貸切風呂、空いておりましたか?」
スタッフの優しい問いかけに、夫が答える。
「ああ、ちょうど龍神の湯に入れたよ。気持ちよかった」
マニュアル通りではない、血の通った会話。
その小さなふれあいが、宿の印象を温かいものに変えていく。

こんな50代夫婦におすすめ

  • とにかく色々な種類のお風呂に入って温泉を満喫したい夫婦
  • 夫婦水入らずで楽しめる貸切風呂を重視する夫婦
  • 温泉街の中心部で、アクティブに散策も楽しみたい夫婦

アクセス情報

  • 住所: 長野県上田市別所温泉1654
  • アクセス: 上田電鉄別所線 別所温泉駅から徒歩約5分
  • 送迎: あり(要事前連絡)

ふたりで紡ぐ、宿の記憶

夕食後、浴衣姿で館内の地図を広げる。
「次は、どのお風呂に行ってみる?」
妻が楽しそうに指で湯船の絵をなぞる。
「うーん、この露天風呂がいいんじゃないか?」
夫が指さしたのは、庭園の中にある岩風呂だ。
まるで子供の頃、遠足の計画を立てるような、無邪気な高揚感がふたりを包む。
いつからだろう。
こんな風に、ふたりで何かを計画してわくわくすることがなくなったのは。
日々の生活に追われ、会話も用件だけになりがちだった。
かしわや本店の湯めぐりは、忘れていた小さな冒険心を思い出させてくれる。
「じゃあ、行こうか」
どちらからともなく立ち上がり、ふたりはまた新しい湯を目指して歩き出す。

旅宿 上松や

~真田幸村の隠し湯、歴史とモダンが調和する宿~

■おすすめポイント(旅宿 上松や)

  • 真田幸村が愛したとされる、歴史ある源泉「真田隠しの湯」
  • 露天風呂付き客室のほか、多彩なコンセプトルームを用意
  • 信州の食文化を発信する、モダンなダイニングでの創作料理
  • ジャズが流れるブックカフェや足湯テラスなど、充実したパブリックスペース
  • 伝統的なおもてなしと、現代的な快適性を両立したサービス

(導入文)
慶長年間の創業より四百余年の歴史を刻む「旅宿 上松や」。かの真田幸村も湯治に訪れたという伝説が残る、由緒ある宿です。重厚な歴史を感じさせる一方で、館内はモダンで洗練された空間へとリノベーションされており、古さと新しさが見事に調和しています。歴史の物語に耳を傾けながら、現代的な快適さの中で寛ぐ。そんな知的好奇心と癒やしを同時に満たしてくれる、新しいスタイルの旅宿です。

客室

露天風呂付きの客室は、シックで落ち着いた雰囲気の和洋室。機能的ながらも木の温もりが感じられる空間で、ゆったりと過ごすことができます。テラスに設けられた露天風呂では、歴史ある「真田隠しの湯」を独り占め。温泉街の景色を眺めながら、心ゆくまで名湯を堪能できます。

客室露天風呂の時間

テラスの湯船に体を沈めると、眼下に別所温泉の穏やかな町並みが広がります。この湯に、かつて真田幸村も浸かっていたのかもしれない。そんな風に遥か昔へと思いを馳せる時間は、歴史あるこの宿ならではの体験です。

湯上がりに、テラスの椅子に腰掛けて涼む。夫が淹れてくれたコーヒーを片手に、遠くの山並みを眺める。過去と現在が交差するこの場所で、ふたりは静かに流れる時間に身を委ねます。日常から切り離された特別なひとときが、ここにあります。

共用風呂

大浴場では、七つの湯船で源泉かけ流しの「真田隠しの湯」を堪能できます。中でも、大きな窓から庭園を望む内湯「百八の湯」は開放感抜群。夜にはライトアップされた幻想的な雰囲気の中で湯浴みを楽しめます。

また、野趣あふれる岩造りの露天風呂や、深さ1mの立湯など、個性的な湯船も魅力。歴史の息吹を感じながら、広々とした空間で心身ともにリフレッシュできます。

食事

夕食は、オープンキッチンを備えたモダンなダイニング「れすとらん樹(いつき)」でいただきます。信州の伝統的な食文化を大切にしながらも、現代的な感性を取り入れた創作和会席は、驚きと発見に満ちています。料理人が目の前で腕を振るうライブ感も、食事の楽しさを一層引き立てます。

地元産のワインや日本酒も豊富に揃っており、ソムリエに相談しながら料理とのマリアージュを楽しむのも一興。歴史ある宿で味わう、革新的な食体験が待っています。

サービス

ダイニングでの食事が終わり、ふたりはジャズが流れるブックカフェへ。
壁一面の本棚から、それぞれ気になった本を手に取る。
「これ、君が好きそうな写真集だ」
夫が差し出したのは、信州の美しい風景を集めた一冊。
妻は黙って受け取り、隣に座る。
ページをめくる音と、静かなジャズの音色。
無理に話す必要はない。
同じ空間で、それぞれが好きなことをしながら、穏やかな時間を共有する。
それが心地いい。
この宿は、そんな大人の距離感を教えてくれる。

こんな50代夫婦におすすめ

  • 歴史や物語のある場所に惹かれる夫婦
  • 伝統とモダンが融合した、洗練された空間が好きな夫婦
  • 食事にもこだわり、新しい食体験を求める夫婦

アクセス情報

  • 住所: 長野県上田市別所温泉1620
  • アクセス: 上田電鉄別所線 別所温泉駅から徒歩約7分
  • 送迎: あり(要事前連絡)

ふたりで紡ぐ、宿の記憶

ブックカフェのソファに深く腰掛け、夫は静かに目を閉じていた。
ジャズの低いベース音が心地よく響く。
妻は、暖炉の揺れる炎をただじっと見つめている。
ここに来てから、時計を見るのをやめた。
時間に追われるのではなく、時間を味わう。
若い頃は、分刻みのスケジュールで観光地を巡るのが旅だと思っていた。
今は違う。
何もしないことの贅沢さを知っている。
ふと、夫が目を開けて妻に微笑んだ。
「いい時間だな」
「ええ、本当に」
短い言葉を交わしただけで、すべてが伝わる。
上松やの夜は、ふたりが本当に求めていた時間の意味を、静かに教えてくれる。

まとめ|さあ、ふたりの時間を紡ぐ旅へ

信州の古湯、別所温泉で過ごす、夫婦ふたりのための時間。今回ご紹介した5軒の宿は、それぞれが異なる魅力で、あなたを温かく迎えてくれるはずです。

  • 桂荘|誰にも邪魔されない、完全なプライベート空間を求めるなら
  • 七草の湯|部屋から望む絶景と、温泉街の散策を楽しみたいなら
  • 玉屋旅館|国の登録有形文化財で、大正ロマンの香りに浸りたいなら
  • かしわや本店|多彩な湯船を巡り、温泉三昧の滞在をしたいなら
  • 旅宿 上松や|歴史の物語と、モダンで洗練された快適さを両立したいなら

子育てが一段落し、ふと隣にいるパートナーの顔を見る。長い年月を共に歩んできたからこそ、時には新しい景色の中で、新しい言葉を交わすことが必要です。

旅の計画は、最高のコミュニケーション。
「次の休み、こんな宿はどうだろう」
その一言から、ふたりの新しい物語が始まります。さあ、次はあなたが、ふたりだけの時間を紡ぐ旅へ出かける番です。


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