世界遺産の湯に抱かれて。50代夫婦のための湯の峰温泉、露天風呂付き客室で紡ぐ静謐な時間

目次

なぜ賢い夫婦は、人生の後半に「湯の峰温泉」を選ぶのか

子育てという大きな旅を終え、ふと隣を見ると、少しだけ髪に白いものが混じったパートナーがいる。慌ただしい日々の中では交わすことのなかった、穏やかな時間が今はある。そんな50代の夫婦が、次なるふたりの旅の始まりに選ぶ場所、それが和歌山県、湯の峰温泉です。

ここは、単なる温泉地ではありません。1800年以上もの歴史を持ち、熊野古道を歩く巡礼者たちの身を清め、心を癒してきた日本最古の湯。世界遺産「紀伊山地の霊場と参詣道」の一部として、その湯までもが文化遺産に登録されています。

日によって七度色を変えると言われる神秘的な硫黄泉に身を浸せば、これまでの人生の疲れが静かに溶けていくのを感じるはず。そして、熊野の深い緑と清らかな川のせせらぎに包まれながら、客室の露天風呂で語らえば、それはまるで、ふたりの人生という物語の新しい章を、そっとめくるような時間に変わるのです。ただ癒されるだけではない。これからを共に歩むための力を、この聖なる湯から授かる。そんな特別な体験が、ここ湯の峰温泉には待っています。

旅館あづまや

~悠久の歴史と湯守りの誇りが息づく、熊野の奥座敷~

■おすすめポイント(旅館あづまや)

  • 創業江戸期、アンドレ・マルローも愛した歴史と風格を誇る老舗旅館
  • 湯の峰の源泉を贅沢に楽しめる、趣の異なる多彩な温泉(大浴場・露天風呂・蒸し風呂など)
  • 温泉熱を利用した伝統の調理法で作られる、滋味深い温泉料理
  • 世界遺産「つぼ湯」へも徒歩すぐという、散策に最適なロケーション
  • 露天風呂付き特別客室で、誰にも邪魔されない湯浴みの時間を満喫

湯の峰温泉の歴史とともに歩んできた「旅館あづまや」。その門をくぐれば、しっとりとした木の艶、磨き上げられた廊下が、訪れる者を温かく迎え入れます。ここは、かつてフランスの思想家アンドレ・マルローが「これぞ日本の宿」と絶賛した場所。その言葉が今もなお、館内の隅々にまで息づいています。歴史が育んだ本物の風格と、湯を守り続ける主人の誇りが、夫婦ふたりの旅を忘れられないものにしてくれるでしょう。

客室

特別和室「いちい」や「まき」など、露天風呂や温泉内風呂を備えた客室が用意されています。広々とした和の空間は、使い込まれた柱や建具が落ち着きを与え、窓の外には熊野の深い緑が広がります。聞こえるのは川のせせらぎと鳥の声だけ。日常の喧騒から完全に切り離された空間で、心からの安らぎを感じることができます。

客室露天風呂の時間

客室の扉を開け、湯の香りに誘われるままに露天風呂へ。そこにあるのは、信楽焼の丸い湯船。縁に腰掛ければ、目の前には湯の峰の鄙びた温泉街と、それを抱くように連なる山々の稜線が広がります。湯船に体を沈めると、とろりとした硫黄泉が全身を優しく包み込み、肌の上を滑る湯の花が、源泉の豊かさを物語ります。

刻一刻と表情を変える空を眺めながら、ただ無言で湯に浸る時間。夕暮れには山の端が茜色に染まり、夜には満天の星が降ってくるかのように瞬きます。これまで語り尽くせなかった想いや、これから描く未来について、自然と口元がほころび、言葉が溢れ出す。ここは、ふたりの心さえも解きほぐす、特別な場所なのです。

共用風呂

この宿の真髄は、多彩な湯巡りにあります。紀州徳川家初代藩主・徳川頼宣公のために作られたという総檜造りの「御上の湯」は、高い天井と木の香りに満ちた荘厳な空間。湯船の底から直接源泉が湧き出す「さまし湯」では、空気に触れない新鮮な湯を源泉そのままの温度で楽しめます。

さらに、庭園に設けられた岩造りの露天風呂や、天然の温泉蒸気を利用した蒸し風呂など、湯治文化が色濃く残る湯の峰ならではの体験が待っています。夫婦で浴衣をまとい、からんころんと下駄の音を響かせながら湯巡りをする。それは、宿の中を散策するだけで心躍る、贅沢な時間となるでしょう。

食事

あづまやの食事は、まさに「温泉を食す」という体験。90度以上ある高温の源泉を利用した「湯治料理」がその真骨頂です。温泉の蒸気でじっくりと蒸し上げられた野菜は、素材本来の甘みが凝縮され、驚くほど優しい味わい。熊野牛の温泉しゃぶしゃぶは、余分な脂が落ち、肉の旨味だけが口の中に広がります。

一品一品、派手さはありませんが、体の芯からじんわりと温まり、元気になるのがわかる。それは、この土地の恵みと温泉の力、そして料理人の丁寧な仕事が三位一体となった、ここでしか味わえないおもてなしです。

サービス

夕食を終え、部屋で寛いでいると、そっと夜食が届けられる。
「温泉で炊いたお粥さんです。夜中に小腹が空いたら、どうぞ」
仲居さんの柔らかな関西弁が、心地よく響く。
「お粥か。懐かしいな。昔、君が風邪をひいた時によく作ったっけ」
夫の言葉に、妻はふふっと笑みをこぼす。
特別な演出ではない。
けれど、そのさりげない心遣いこそが、凍てついた心をじんわりと溶かしていく。

こんな50代夫婦におすすめ

  • 歴史や文化を感じる、本物志向の旅を求める夫婦
  • 多彩な温泉をとことん満喫したい、温泉好きな夫婦
  • 派手さよりも、滋味深く体に優しい食事を好む夫婦

アクセス情報

  • 住所: 和歌山県田辺市本宮町湯峯110
  • アクセス: JR紀伊田辺駅より龍神バスで約90分、「湯の峰温泉」バス停下車すぐ
  • 送迎: なし

ふたりで紡ぐ、宿の記憶

帳場に置かれた古い柱時計が、ごーん、と低い音で時を告げる。
その音に誘われるように、夫がロビーのソファで手に取ったのは、宿の歴史が綴られた一冊の古いアルバムだった。
「見てごらん。昔はこんな茅葺き屋根だったんだな」
妻が隣からそっと覗き込むと、セピア色の写真の中で、昔の旅人たちが笑っている。
「私たちも、いつかこうして誰かの記憶に残るのかしら」
「さあ、どうだろうな」
夫はアルバムを閉じ、窓の外に広がる深い闇に目をやった。
「でも、少なくとも僕たちの記憶には、この旅は深く刻まれるよ。この温泉の匂いも、君と見た星空も、全部だ」
妻は何も言わずに、ただ静かに頷く。
悠久の時を刻む宿で、ふたりの時間もまた、確かな記憶となって静かに積もっていく。

湯の峯荘

~高台から望む里山の風景と、心尽くしの温泉会席~

■おすすめポイント(湯の峯荘)

  • 高台に位置し、湯の峰ののどかな田園風景を一望できる静かな環境
  • 豊富な湯量を誇るかけ流しの温泉を、開放的な大浴場や露天風呂で満喫
  • 予約不要で自由に使える、二つの貸切家族風呂
  • 紀州岩清水豚の温泉しゃぶしゃぶなど、地元の食材を活かした会席料理
  • 気兼ねなく過ごせる、温かく家庭的なおもてなし

湯の峰温泉の中心部から少しだけ坂を上った高台に佇む「湯の峯荘」。公営の宿ならではの、気取らない温かな雰囲気が魅力です。ロビーの窓からは、眼下に広がる日本の原風景のような里山の景色が望め、訪れる人の心を和ませてくれます。豪華さや非日常感よりも、故郷に帰ってきたかのような安心感と、心からの休息を求める夫婦にぴったりの一軒です。

客室

客室はすべて、落ち着いた雰囲気の和室。広々とした窓からは、四季折々の自然の彩りが飛び込んできます。華美な装飾はありませんが、清掃が行き届いた清潔な空間で、ゆったりと手足を伸ばして寛ぐことができます。高台にあるため、聞こえてくるのは風の音と遠くの鳥の声だけ。静かな環境で、ふたりだけの時間を大切に過ごせます。

客室露天風呂の時間

湯の峯荘には、客室に露天風呂は備えられていません。その代わりに、この宿には予約なしで、空いていればいつでも自由に使える貸切の家族風呂が二つ用意されています。これは、「誰にも気兼ねすることなく、夫婦水入らずで名湯を心ゆくまで味わってほしい」という宿からのささやかな、しかし温かい心遣いの表れです。

札を「入浴中」に返し、木の扉にそっと鍵をかける。その瞬間、湯船も、洗い場も、窓の外の景色も、すべてがふたりだけのものになります。小さな湯船だからこそ、互いの距離が自然と近くなる。日頃は照れくさくて言えない感謝の言葉も、この空間なら素直に口にできるかもしれません。

共用風呂

自慢は、豊富な湯量を誇るかけ流しの温泉です。広々とした大浴場は、大きな窓から光が差し込み、開放感抜群。湯船の縁から溢れ出る温泉が、絶え間なく流れていく様は、まさに贅沢の一言です。

岩造りの露天風呂に出れば、ひんやりとした高原の空気が火照った体を優しく撫でていきます。昼は青空と緑のコントラストを、夜は満天の星を眺めながら、心身の疲れをゆっくりと解き放つ。これぞ温泉旅の醍醐味、と感じられる瞬間がここにあります。

食事

夕食は、地元の旬の幸をふんだんに盛り込んだ会席料理。名物は、紀州のブランド豚「岩清水豚」を温泉水でいただくしゃぶしゃぶ。温泉水が豚肉の甘みを引き立て、さっぱりとしながらも深いコクが口の中に広がります。

他にも、近隣の川で獲れた鮎の塩焼きや、季節の山菜を使った小鉢など、一つひとつ丁寧に作られた料理が並びます。派手さはありませんが、料理長の誠実な人柄が伝わってくるような、心温まるご馳走です。温泉で炊き上げた朝のお粥もまた、胃に優しく、旅の朝にふさわしい逸品です。

サービス

ラウンジの片隅に、自由に飲めるコーヒーが置かれている。
湯上がりにソファに腰を下ろし、夫が一杯、妻のために一杯、カップを手に取る。
「ここの景色、落ち着くな。ずっと見ていられる」
窓の外の田園風景を眺めながら、夫が呟く。
「そうですね。なんだか、時間がゆっくり流れているみたい」
妻はコーヒーの湯気に目を細める。
特別な会話はない。
ただ、同じ景色を見て、同じものを飲み、同じ空気を感じる。
宿のさりげない設えが、そんな穏やかな時間を与えてくれる。

こんな50代夫婦におすすめ

  • 絶景や豪華さよりも、静かで落ち着いた環境を好む夫婦
  • 貸切風呂で、ふたりだけの温泉時間をゆっくり楽しみたい夫婦
  • 気取らない雰囲気の中で、地元の素朴な料理を味わいたい夫婦

アクセス情報

  • 住所: 和歌山県田辺市本宮町湯峯122
  • アクセス: JR紀伊田辺駅より龍神バスで約90分、「湯の峰温泉」バス停から徒歩約10分
  • 送迎: なし

ふたりで紡ぐ、宿の記憶

夕食後、夫が「少し散歩しないか」と妻を誘った。
宿から温泉街へと続く、緩やかな坂道をふたりでゆっくりと下っていく。
湯筒からもうもうと立ち上る湯気、軒先に灯る裸電球の温かい光。
まるで、昭和の時代に迷い込んだかのようだ。
「子供たちが小さい頃、よくこうして手を繋いで歩いたな」
夫が差し出した大きな手を、妻は少し照れながら握り返す。
ごつごつとして、昔よりも少し乾いたその手の感触が、なぜだかとても愛おしい。
温泉街の柔らかな灯りが、寄り添って歩くふたりの影を、長く、優しく地面に映し出していた。

川湯温泉 冨士屋

~川そのものが露天風呂になる、唯一無二の湯浴み体験~

■おすすめポイント(川湯温泉 冨士屋)

  • 川底から温泉が湧き出す大塔川のほとりに佇む、江戸時代創業の老舗
  • 冬には宿の目の前に巨大な露天風呂「仙人風呂」が出現
  • 熊野の木々をふんだんに使った、モダンで洗練された露天風呂付き客室
  • 熊野牛や鮎など、紀伊半島の山海の幸を堪能できる創作会席
  • 川と一体になるような、野趣あふれる湯浴み体験

湯の峰温泉から車でわずか10分。大塔川のほとりに佇む「冨士屋」は、川遊びと温泉が一体となった、他に類を見ない体験ができる宿です。夏は川遊び、そして冬になると、川をせき止めて作られる巨大な天然露天風呂「仙人風呂」が宿の目の前に現れます。自然そのものを遊び場とする、童心に帰るようなワクワク感を、この宿は思い出させてくれます。

客室

特におすすめなのが、2012年にリニューアルされた露天風呂付きの「熊野モダンルーム」。熊野の杉や檜をふんだんに使った室内は、木の香りに満ちた癒しの空間です。川に面した広々としたテラスには、高野槇で作られた湯船が備えられ、せせらぎを聞きながら、いつでも好きな時に温泉に浸かることができます。ベッドは寝心地に定評のあるシーリー社製を採用しており、古道歩きで疲れた体も深く癒されます。

客室露天風呂の時間

テラスの扉を開けると、すぐそこに大塔川の雄大な流れが広がっています。高野槇の湯船に体を沈めれば、まるで川の中に浮かんでいるかのような錯覚に陥るほど。川を渡る風が頬を撫で、対岸の木々がざわめく音、そして絶え間ない川のせせらぎが、極上のBGMとなって耳に届きます。

備え付けのテーブルに冷えた地酒を置き、ゆっくりと杯を傾ける。川面を滑るように飛んでいくカワセミの姿に、思わず感嘆の声が漏れる。ここでは、自然こそが最高のおもてなし。時間の流れを忘れ、ただただ川と一体になる。そんな野趣と洗練が同居した湯浴みは、都会の喧騒に疲れた心を、芯から解き放ってくれるでしょう。

共用風呂

館内には、紀州槇の香りが心地よい大浴場や、レトロな雰囲気の大理石風呂、そして川を望む半露天風呂など、多彩な湯船が揃っています。泉質はナトリウム-炭酸水素塩・塩化物泉。湯冷めしにくく、体の芯から温まります。

そして、この宿のハイライトは、冬期限定の「仙人風呂」。湯浴み着を借りて宿から一歩外に出れば、そこはもう湯けむり立ち上る巨大な露天風呂です。広大な湯船に身を浸し、青空や星空を見上げれば、その圧倒的な開放感に日頃の悩みなど些細なことだと思えてくるから不思議です。

食事

食事は、この土地ならではの恵みを存分に味わえる創作会席。口の中でとろけるような熊野牛のステーキ、清流で育った鮎の塩焼き、新鮮な川魚のお造りなど、料理長のこだわりが光る逸品が並びます。

特に、川の幸、山の幸、そして熊野灘の海の幸まで、紀伊半島が育んだ食材の豊かさを一つのコースで堪能できるのが魅力です。器選びにもこだわりが感じられ、目でも舌でも楽しめる、満足度の高い食事が待っています。

サービス

仙人風呂から戻り、少し冷えた体でロビーを通りかかる。
「おかえりなさいませ。こちらで温かい生姜湯はいかがですか」
スタッフの優しい声に振り向くと、湯気の立つカップが差し出された。
「ああ、これはありがたい」
夫が受け取り、一口飲む。生姜の辛みと優しい甘さが、体にじんわりと染み渡る。
「本当に、川がお風呂になるなんて、びっくりしましたね」
妻もカップを両手で包み込みながら、興奮冷めやらぬ様子で話す。
特別なマニュアルがあるわけではない。
その時々の客の様子を察し、すっと差し伸べられる温かい心遣い。
それこそが、旅の記憶をより色鮮やかなものにする。

こんな50代夫婦におすすめ

  • ありきたりではない、唯一無二の温泉体験を求める夫婦
  • アクティブに自然を満喫するのが好きな、好奇心旺盛な夫婦
  • 洗練されたデザインの空間で、快適な滞在をしたい夫婦

アクセス情報

  • 住所: 和歌山県田辺市本宮町川湯1452
  • アクセス: JR紀伊田辺駅より龍神バスで約100分、「ふじや前」バス停下車すぐ
  • 送迎: なし

ふたりで紡ぐ、宿の記憶

部屋のテラスから、夫が川原を指さした。
「おい、見てみろ。自分で温泉を掘ってるぞ」
見ると、若いカップルがスコップで砂利を掘り、マイ露天風呂作りに興じている。
「まあ、楽しそう。私たちもやってみますか?」
妻の冗談めかした言葉に、夫は首を横に振った。
「いや、俺たちはここでいい」
そう言って、彼は高野槇の湯船にゆっくりと体を沈めた。
「若い頃は、ああやって何でも自分たちでやりたがったもんだけどな。今は、こうして整えられた場所で、静かに時間を味わうのが一番の贅沢だと思えるようになった」
妻も隣にそっと体を滑り込ませる。
川のせせらぎを聞きながら、ふたりはただ黙って、流れていく川面を見つめていた。
失われた若さを嘆くのではなく、年齢を重ねたからこそわかる豊かさを、今、ふたりは確かに感じていた。

わたらせ温泉 ホテルささゆり

~西日本最大級の大露天風呂と、美食を極める大人のための宿~

■おすすめポイント(わたらせ温泉 ホテルささゆり)

  • 男女合わせて11の湯船を誇る、西日本最大級の源泉かけ流し大露天風呂
  • 趣の異なる4つの貸切露天風呂も無料で利用可能
  • 全室にマッサージチェアを完備した、広々とした和洋特別室
  • 料理長の技が光る、極上の創作和食会席「極み会席」
  • 熊野古道への無料送迎など、アクティブな滞在をサポートするサービス

湯の峰、川湯と並ぶ熊野本宮温泉郷のひとつ、渡瀬(わたらせ)温泉。その広大な敷地に展開するのが「わたらせ温泉」です。中でも「ホテルささゆり」は、圧巻のスケールを誇る大露天風呂と、美食を追求した料理が自慢の、ワンランク上の滞在を約束する宿。日常から完全にエスケープし、温泉と美食に心ゆくまで耽溺したい、そんな本物志向の夫婦に選ばれています。

客室

おすすめは、洋室25㎡に和室8畳がプラスされた広々とした和洋特別室。落ち着いた色調でまとめられたインテリアは、大人のための上質な空間を演出しています。何より嬉しいのが、全室にマッサージチェアが完備されていること。熊野古道を歩いた後や、湯浴みの後に体を預ければ、極上のリラクゼーションタイムが待っています。窓の外には四村川の清流と豊かな緑が広がり、部屋にいるだけで森林浴気分を味わえます。

客室露天風呂の時間

「ホテルささゆり」には客室露天風呂はありません。しかし、それを補って余りあるのが、この宿が誇る圧巻の貸切露天風呂です。予約は不要で、空いていれば無料で何度でも利用できる4つの貸切風呂は、それぞれが個性的。中でも「おおるり」は、まるで森の中にひっそりと佇む湯小屋のよう。

木の扉を開けると、そこには自然の岩を配した野趣あふれる湯船が。川のせせらぎと鳥のさえずりだけが聞こえる空間で、ふたりきりで源泉かけ流しの湯に浸かる時間は、何物にも代えがたい贅沢です。部屋に露天風呂がなくとも、これほどプライベートで上質な湯浴みが楽しめるのなら、むしろ積極的に館内を散策する楽しみが生まれます。

共用風呂

この宿を象徴するのが、西日本最大級とも言われる源泉かけ流しの大露天風呂。その広さは圧巻の一言で、一度に500人が入浴可能とも言われています。木々に囲まれた広大な敷地の中に、趣の異なる湯船が点在しており、湯巡りをしているだけで一日が過ぎてしまうほど。

滑らかな肌触りのナトリウム炭酸水素塩泉は「美人の湯」としても知られ、湯上がりには肌がつるつるになるのを実感できます。昼間はどこまでも広がる青空の下で、夜は幻想的にライトアップされた木々と満天の星の下で、圧倒的なスケールの湯浴みを存分にお楽しみください。

食事

「ささゆり」のもう一つの主役は、美食と呼ぶにふさわしい食事です。特に、料理長の粋を集めた「極上の極み会席」は、この宿に泊まる目的となり得るほどのクオリティ。熊野牛の最高級部位を使った一品、伊勢海老や鮑といった豪華な海の幸、そして地元で採れた旬の野菜が、驚きと感動に満ちた一皿となってテーブルを彩ります。

一品一品に込められた料理長の哲学と、それを引き立てる美しい器。レストランの窓に広がる緑を眺めながら、ゆっくりと時間をかけて味わうディナーは、ふたりの旅のハイライトとなることでしょう。朝食で供される、地元産の野菜をふんだんに使った優しい和定食も絶品です。

サービス

熊野古道を歩いてみたい。
そんなふたりの想いを、宿のスタッフに何気なく伝えた翌朝。
「本日は、発心門王子までの無料送迎バスをご用意しております。初心者の方でも歩きやすい人気のコースですよ。お帰りの時間に合わせて、またお迎えに上がりますが」
予想もしなかった提案に、ふたりは顔を見合わせる。
「ぜひ、お願いします!」
ただ快適な滞在を提供するだけでなく、ゲストの「やってみたい」という気持ちに寄り添い、その実現を手伝ってくれる。
そんなプロフェッショナルなホスピタリティが、旅の可能性を大きく広げてくれる。

こんな50代夫婦におすすめ

  • とにかくスケールの大きな露天風呂で、温泉三昧を楽しみたい夫婦
  • 旅の目的は「美味しい食事」と言い切れる、美食家の夫婦
  • 熊野古道ウォーキングなど、アクティブな体験も楽しみたい夫婦

アクセス情報

  • 住所: 和歌山県田辺市本宮町渡瀬45-1
  • アクセス: JR紀伊田辺駅より龍神バスで約100分、「渡瀬温泉」バス停下車/JR白浜駅より無料送迎バスあり(要予約)
  • 送迎: あり(JR白浜駅より/要予約)

ふたりで紡ぐ、宿の記憶

広大な露天風呂の一角にある、寝湯にふたりで体を横たえる。
浅い湯が全身を温め、空だけが視界いっぱいに広がっている。
流れる雲をぼんやりと眺めていると、夫がぽつりと言った。
「思えば、ずっと走り続けてきたなあ」
会社のこと、子供たちのこと、家のこと。
休む暇もなく、気づけば50代も半ばを過ぎていた。
「ええ、本当に」
妻も静かに応える。
「でも、これからは少しペースを落として、こうやって空でも眺める時間を大切にしたいもんだ」
「そうですね」
優しい湯と、穏やかな時間。
それは、これまで頑張ってきたふたりへの、何よりのご褒美だった。
見上げた空の青さが、なぜだか少し、目に沁みた。

湯の峰温泉 旅館伊せや

~湯治場の風情を今に伝える、源泉かけ流しの湯宿~

■おすすめポイント(旅館伊せや)

  • 世界遺産「つぼ湯」のすぐ隣という、湯の峰温泉の中心に位置する絶好のロケーション
  • 湯の花が舞う、濃厚な自家源泉かけ流しの温泉を24時間満喫
  • 古き良き湯治場の風情が色濃く残る、懐かしい雰囲気
  • 女湯には、風情ある石造りの小さな露天風呂も併設
  • 飾らない、ありのままの温泉の良さをシンプルに味わえる

湯の峰温泉の心臓部、「つぼ湯」の受付のすぐ隣。もうもうと湯気が立ち上る湯筒の前に、その宿はあります。「旅館伊せや」は、華美な設備や過剰なサービスとは無縁の、古き良き湯治場の風情を今に伝える宿。求めるものが、豪華な食事や最新の設備ではなく、「本物の温泉」そのものであるならば、ここは最高の選択肢となるでしょう。温泉通を唸らせる極上の湯が、旅人を出迎えてくれます。

客室

客室は、気兼ねなく寛げるシンプルな和室。広縁からは、温泉街の情緒あふれる風景を眺めることができます。建物は年季が入っていますが、隅々まで掃除が行き届いており、清潔感があります。最新の設備はありませんが、それがかえって懐かしく、心を落ち着かせてくれます。まるで、田舎のおばあちゃんの家に遊びに来たかのような、温かい時間が流れています。

客室露天風呂の時間

「旅館伊せや」には、客室露天風呂はありません。この宿の哲学は、館内にある最高の湯船で、自家源泉の素晴らしさを存分に味わってもらうことにあります。豪華な客室露天風呂も魅力的ですが、湯治場の伝統を受け継ぐこの宿では、あえて共用の湯船に身を浸すことで、湯の峰温泉の歴史や文化に深く触れる体験ができます。

それは、プライベートな空間での癒しとはまた違う、温泉地の魂に触れるような時間。宿の主人が大切に守り続けてきた湯に感謝しながら、その恵みを全身で受け止める。そんな素朴で本質的な喜びが、ここにはあります。

共用風呂

この宿の自慢は、何と言っても温泉そのもの。加水・加温・循環・消毒一切なしの、正真正銘「源泉100%かけ流し」です。湯船に体を沈めると、硫黄の香りがふわりと鼻をくすぐり、まるで湯葉のように大きな湯の花が、ゆらゆらと湯中を舞います。

男湯「判官湯」は、レトロなタイル張りの浴槽が印象的。女湯「姫乃湯」は、木のぬくもりが感じられる内湯と、こぢんまりとしながらも風情のある石造りの露天風呂が備わっています。とろりとした肌触りの湯は、美肌効果も期待できる名湯。24時間いつでも入浴可能なので、時間を気にせず、心ゆくまで本物の温泉の力を堪能できます。

食事

食事は、豪華な会席料理ではなく、地元の仕出し屋さんのお弁当が提供されるスタイルです。しかし、これがまた旅の風情をかき立てます。温かいご飯や味噌汁と共に供されるお弁当には、地元の食材を使った素朴ながらも心のこもったおかずが並びます。

朝、窓の外の湯筒で温泉卵を作って、朝食に一品加えるのも一興です。贅沢を求めるのではなく、その土地の日常に少しだけお邪魔するような感覚。そんな旅のスタイルを好む夫婦にとっては、この飾らない食事が心地よく感じられるはずです。

サービス

つぼ湯の入浴時間が近づき、夫婦が玄関で準備をしている。
「下駄の鼻緒、大丈夫ですか。慣れないと痛いでしょう」
宿の主人が、すっと奥から履きやすいサンダルを出してきてくれた。
「ああ、これは助かります」
「つぼ湯は結構熱いから、気をつけてな。長湯は禁物やで」
まるで、我が子を送り出すような、ぶっきらぼうで、けれど温かい言葉。
マニュアル化された丁寧さとは違う、人と人との繋がりを感じる瞬間。
そんな飾らない優しさが、この宿には満ちている。

こんな50代夫婦におすすめ

  • 施設の豪華さよりも、温泉の泉質を何よりも重視する夫婦
  • 昔ながらの湯治場の雰囲気を体験してみたい夫婦
  • 飾らない、気ままな旅のスタイルを好む夫婦

アクセス情報

  • 住所: 和歌山県田辺市本宮町湯峯102
  • アクセス: JR紀伊田辺駅より龍神バスで約90分、「湯の峰温泉」バス停下車すぐ
  • 送迎: なし

ふたりで紡ぐ、宿の記憶

夜更け、ふと目が覚めた妻は、そっと布団を抜け出し、階下の風呂場へ向かった。
誰もいない湯船で、滔々と湯口から注がれる源泉の音だけが響いている。
体を沈めると、昼間よりも一層濃く感じられる硫黄の香りに包まれた。
(ああ、本当に良いお湯…)
一人で湯船を独占する贅沢。
これまで、どれだけ多くの人々が、この湯に癒されてきたのだろう。
熊野詣の巡礼者、湯治に訪れた人々、そして、今日の自分。
湯けむりの向こうに、遥かな時の流れが見えるような気がした。
静寂の中、ただ湯と向き合うその時間は、何よりも心が満たされる、瞑想のようなひとときだった。

まとめ|さあ、ふたりの時間を紡ぐ旅へ

世界遺産の聖なる湯に抱かれる、湯の峰温泉とその周辺の宿をご紹介しました。歴史と風格に満ちた宿から、自然と一体になれる宿、そして本物の温泉を心ゆくまで味わえる宿まで、それぞれに個性的な魅力がありました。

  • 旅館あづまや(歴史と多彩な湯巡りを楽しみたい夫婦へ)
  • 湯の峯荘(静かな高台で、貸切風呂と里山の景色に癒されたい夫婦へ)
  • 川湯温泉 冨士屋(川が温泉になる唯一無二の体験をしたいアクティブな夫婦へ)
  • わたらせ温泉 ホテルささゆり(圧巻の大露天風呂と美食を極めたい夫婦へ)
  • 湯の峰温泉 旅館伊せや(泉質第一、古き良き湯治場の風情を愛する夫婦へ)

子育てが終わり、仕事が一段落し、ふと気づけば、ふたりきりの時間が戻ってきた。それは、これからの人生という新しい旅の始まりです。

どちらかが地図を読み、どちらかが車を運転する。若い頃と役割は変わらないかもしれない。けれど、その横顔に刻まれた皺も、少し白くなった髪も、共に歩んできた時間の証として、今はとても愛おしく感じられるはず。

さあ、荷物は軽くして、心だけは豊かに満たす旅に出かけましょう。湯の峰の湯けむりが、ふたりの新しい物語の始まりを、温かく見守っています。


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