有馬温泉の露天風呂付き客室【50代夫婦の旅】ただの名湯ではない、ふたりの時間を紡ぎ直す宿5選

目次

なぜ有馬は、ふたたび歩み出す夫婦を惹きつけるのか

子育てという長い旅路を終え、ようやく手にしたふたりだけの時間。その貴重な時間を、日本最古の湯と謳われる有馬温泉で過ごすことを選ぶ賢明な夫婦がいます。彼らが求めるのは、単なる観光や賑わいではありません。歴史が幾重にも重なる茶褐色の「金泉」、そして心を静める無色透明の「銀泉」。このふたつの湯は、まるで夫婦が歩んできた豊かな人生と、これから描く穏やかな未来を象徴するかのようです。

にぎやかな温泉街の散策も楽しい。けれど、本当に大切なのは、誰にも邪魔されない空間で、グラスを傾け、湯にひたり、言葉少なでも心を通わせる時間。長い年月を共に過ごしてきたからこそ、多くを語る必要はない。ただ、隣にいる温かさを確かめるように。そんな、本質的な豊かさを知る50代のふたりのために、ただ宿泊するだけでは終わらない、物語が生まれる有馬の名宿を5軒、厳選してご紹介します。

有馬山叢 御所別墅

~1,400坪の森に佇む、全室離れのプライベートヴィラ~

■おすすめポイント(有馬山叢 御所別墅)

  • 1,400坪の広大な敷地に、客室はわずか10室という究極のプライベート空間
  • 全室が100平米を超える温泉露天風呂付きのスイートヴィラ
  • 歴史ある旅館「陶泉 御所坊」の別墅ならではの上質なホスピタリティ
  • 「旧御所別墅」の面影を残す、歴史とモダンが融合した美しい建築デザイン
  • 敷地内から湧き出る金泉を、客室で心ゆくまで堪能できる贅沢

神戸の喧騒から車でわずか30分。そこに、時が止まったかのような静寂な森が広がります。かつて多くの文化人が愛した歴史的建造物の跡地に佇む「御所別墅」は、単なる宿ではなく、ふたりのための’別荘’。鳥の声で目覚め、木々のささやきに耳を澄ます。ここでは、日常のあらゆることから解放され、ただ自然と、そして隣にいるパートナーと向き合う時間が流れています。

客室

全10室の客室は、すべてが独立したヴィラタイプ。100平米以上を確保したゆとりある空間には、リビング、ベッドルーム、そして温泉が楽しめるサーマルルーム(低温サウナ)と露天風呂が備えられています。木の温もりを感じるミニマルなデザインは、窓の外に広がる森の景色を一枚の絵画のように引き立てます。まるで森の中に住まうような感覚で、誰にも気兼ねなく過ごすことができます。

客室露天風呂の時間

テラスに設えられた湯船を満たすのは、敷地内から湧き出る由緒正しき金泉。空気に触れて赤褐色に染まるその湯は、鉄分と塩分を豊富に含み、体の芯からじんわりと温めてくれます。湯船の縁に腰掛ければ、目の前には手が届きそうなほどの緑。風が木々の葉を揺らす音、遠くで聞こえる鳥のさえずりだけが、ふたりの時間を優しく包み込みます。

肩までゆっくりと湯に浸かりながら、これまでの道のりを静かに振り返る。隣で同じ景色を見つめる夫の横顔に、若い頃には気づかなかった穏やかな皺を見つける。言葉はいらない。ただ、湯の温もりと、隣にいる人の体温を感じるだけで、心が満たされていく。そんな、何にも代えがたい静謐な対話が、ここにあります。

共用風呂

こちらの宿には、大浴場などの共用風呂は用意されていません。それは、全客室に備えられた専用の露天風呂で、誰にも気兼ねすることなく、ふたりの時間を心ゆくまで楽しんでほしいという、宿の哲学の表れです。1,400坪の森を独占するような贅沢なプライベート空間で、心ゆくまで湯浴みをお楽しみください。

食事

夕食は、併設されたレストラン「山荘料理 早蕨」にて。茅葺屋根の趣ある空間でいただくのは、地産地消にこだわったフレンチです。総料理長が自ら目利きした明石の海の幸や丹波の山の幸が、洗練された一皿へと昇華します。厳選されたワインと共に、ゆったりと流れるディナータイムは、旅の夜をさらに特別なものにしてくれるでしょう。

朝食は、ルームサービスでヴィラへ届けられます。森の新鮮な空気を吸い込みながら、テラスでいただく朝食は格別。兵庫の食材をふんだんに使った和朝食か洋朝食を選べ、プライベートな空間で優雅な一日の始まりを演出します。

サービス

食後の散歩で、ラウンジへ続く小道を歩く。
足元を照らす柔らかな灯りが、幻想的な雰囲気を醸し出していた。
ラウンジの暖炉に、静かに火が灯る。
ソファに深く腰掛けた夫が、ぽつりと言った。
「こういう時間、久しぶりだな」
妻は何も言わず、彼のカップにそっとハーブティーを注ぐ。
スタッフの付かず離れずの絶妙な距離感が、ふたりだけの世界を守ってくれているようだった。

こんな50代夫婦におすすめ

  • とにかく静かな環境で、誰にも邪魔されずに過ごしたい夫婦
  • 自然や建築が好きで、美意識の高い空間を求める夫婦
  • 記念日など、特別な時間を最高級のプライベート感で祝いたい夫婦

アクセス情報

  • 住所: 〒651-1401 兵庫県神戸市北区有馬町958
  • アクセス: 神戸電鉄「有馬温泉駅」よりタクシーで約5分
  • 送迎: 有(有馬温泉駅・バス停より。要連絡)

ふたりで紡ぐ、宿の記憶

チェックアウトの朝、ヴィラのテラスでコーヒーを飲んでいた。
「昨日の夜、湯船から見えた星がきれいだったな」
夫が珍しくそんなことを言う。
いつもは無口で、あまり感想を口にしない人なのに。
「ええ、本当に。オリオン座が見えましたね」
妻が答えると、彼は少し照れたように視線を森へ向けた。
「また、来ような。今度は、紅葉の季節に」
妻は驚いて夫の顔を見た。
彼の口から「また」という言葉を聞いたのは、いつぶりだろう。
この森が、この湯が、彼の心の扉を少しだけ開けてくれたのかもしれない。
妻は黙って頷き、カップに残っていたコーヒーをゆっくりと飲み干す。
森の空気が、いつもより甘く感じられた。

中の坊瑞苑

~有馬を知り尽くした大人のための、創業150年の湯宿~

■おすすめポイント(中の坊瑞苑)

  • 13歳未満は宿泊不可。静けさが約束された大人のための空間
  • 有馬温泉の中心に位置し、温泉街の散策にも便利な立地
  • 趣の異なる「金泉」「銀泉」の両方を愉しめる多彩な湯船
  • 伝統とモダンが調和した、洗練された客室と館内施設
  • 細やかな心遣いに定評がある、老舗ならではの行き届いたおもてなし

創業150年。有馬の歴史と共に歩んできた「中の坊瑞苑」は、まさに円熟した大人が集う場所。館内に一歩足を踏み入れると、華美な装飾はないものの、隅々まで磨き上げられた品格が漂います。ここは、ただ温泉に入る場所ではありません。歴史が育んだおもてなしの心に身を委ね、心から寛ぐための舞台。13歳未満のゲストはいないという静寂の中で、夫婦は穏やかな時間を取り戻します。

客室

伝統的な和室から、機能的な洋室、そして金泉・銀泉の露天風呂を備えた貴賓室まで、多彩な客室が揃います。いずれの部屋も、華美すぎず、しかし上質さを感じさせる設え。特に露天風呂付きの客室は、プライベートな空間で有馬の名湯を独占できると人気です。窓の外に広がる庭園の緑を眺めながら、心休まるひとときを過ごせます。

客室露天風呂の時間

客室のテラスに設けられた湯船には、有馬の「金泉」または「銀泉」が絶え間なく注がれています。檜や信楽焼など、趣向を凝らした湯船に身を沈めれば、日々の喧騒がすっと遠のいていくようです。特に、金泉の露天風呂は格別。鉄分を多く含んだ赤褐色の湯は、保温効果が高く、湯上り後も体がぽかぽかと温かいまま。

湯船の縁に並んで腰かけ、冷たい日本酒を一杯。熱い湯と冷たい酒が、心地よく体を巡ります。「いい湯だな」と呟く夫の声に、「本当に」と妻が相槌を打つ。他愛のない会話が、最高の贅沢になる。そんな大人の時間を、部屋にいながらにして味わうことができます。

共用風呂

中の坊瑞苑の真骨頂は、その多彩な共用風呂にあります。最上階に位置する大浴場「天泉」では、有馬の温泉街を一望しながら、広々とした金泉の湯に浸かれます。その開放感は格別で、まるで空に浮かんでいるかのよう。一方、地下2階の大浴場「地泉」では、趣のある岩風呂で金泉を、そして「銀泉」の蒸し風呂や打たせ湯など、様々な湯浴みを楽しめます。

特に、夫婦水入らずで楽しみたいなら、予約不要の貸切露天風呂へ。空いていればいつでも利用できる手軽さが魅力です。優しい肌触りの銀泉に浸かりながら、ふたりだけの時間を満喫する。館内を巡りながら、湯の暖簾をくぐるたびに新しい発見がある。そんな湯巡りの楽しみも、この宿ならではの醍醐味です。

食事

夕食は、旬の食材をふんだんに使用した本格的な会席料理。瀬戸内の魚介、丹波の野菜、そして最高級の神戸ビーフ。料理長が腕を振るう一皿一皿は、まるで芸術品のような美しさです。料理は、お部屋またはプライバシーが保たれた個室の食事処で提供され、周りを気にすることなく、ゆっくりと美食に向き合えます。

朝食は、体に優しい和定食。炊き立ての御飯に、出汁の香りが豊かなお味噌汁、そして丁寧に作られた小鉢の数々が並びます。旅の朝にふさわしい、心と体に染み渡るような優しい味わいが、一日の始まりを豊かに彩ります。

サービス

夕食後、ロビーラウンジに立ち寄った。
ジャズのスタンダードナンバーが静かに流れている。
「少し、飲んでいかないか」
夫からの誘いは、本当に久しぶりだった。
カウンターに並んで腰掛け、妻はカクテルを、夫はウイスキーを注文する。
バーテンダーのシェイカーを振る音が、心地よいリズムを刻む。
「昔、よくこうやって二人でバーに行ったわね」
妻が言うと、夫は少し驚いた顔でこちらを見た。
「覚えていたのか」
「忘れるわけないじゃない」
グラスの中で、氷がカランと小さな音を立てた。

こんな50代夫婦におすすめ

  • 老舗旅館ならではの、安定した質の高いサービスを求める夫婦
  • 金泉と銀泉の両方を、多彩な湯船で心ゆくまで楽しみたい夫婦
  • 温泉街の散策も楽しみつつ、宿では静かに過ごしたい夫婦

アクセス情報

  • 住所: 〒651-1401 兵庫県神戸市北区有馬町808
  • アクセス: 神戸電鉄「有馬温泉駅」より徒歩約2分
  • 送迎: 無(駅から至近のため)

ふたりで紡ぐ、宿の記憶

チェックアウトを済ませ、宿の玄関を出た。
女将さんが、深々としたお辞儀で見送ってくれる。
「本当に、気持ちの良い宿だったな」
駅へ向かう坂道を下りながら、夫が言った。
「ええ。お湯も、お食事も、人も、全部」
妻が答える。
ふと、夫が立ち止まり、妻の手を握った。
驚いて夫の顔を見ると、彼は少し照れくさそうに前を向いたまま。
「また来年、結婚記念日にでも来るか」
ごつごつとして、大きくて、温かい手。
昔と何も変わらないその手の感触に、妻の胸がじんわりと熱くなる。
有馬の坂道は、ふたりがもう一度手を取り合って歩き出すための、新しい始まりの道のように思えた。

欽山

~茶の湯の心に宿るおもてなし。美食を極める料亭旅館~

■おすすめポイント(欽山)

  • 数寄屋造りの佇まいが美しい、有馬を代表する高級料亭旅館
  • 旬の素材を活かした、芸術的な京風創作懐石料理への絶対的なこだわり
  • 侘び寂びを重んじる、茶の湯の心に基づいたきめ細やかなおもてなし
  • 広々とした大浴場で名湯・金泉を、客室では銀泉の露天風呂を楽しめる
  • 静謐で格調高い空間が、非日常の特別な時間を演出

「欽山」の名は、有馬温泉を愛した豊臣秀吉が、千利休に命じて茶会を開かせた名水「欽銘水」に由来します。その名の通り、館内には茶の湯の精神、すなわち「侘び寂び」と「おもてなし」の心が深く根付いています。ここは、ただ泊まる場所ではなく、日本の伝統文化の粋を五感で味わう場所。特に、料理への情熱は他の追随を許さず、美食を求める夫婦にとって、これ以上ない選択となるでしょう。

客室

客室は、日本の伝統美が息づく数寄屋造り。無駄を削ぎ落とした洗練された空間は、心を静め、穏やかな気持ちにさせてくれます。東館と西館に分かれており、特に露天風呂付きの貴賓室は、贅沢の極み。広々とした和室に、寝心地の良いベッドルーム、そしてプライベートな湯浴みが楽しめる銀泉の露天風呂が備えられています。

客室露天風呂の時間

欽山の客室露天風呂で楽しめるのは、肌あたりの優しい「銀泉」。無色透明の柔らかな湯は、心と体をゆっくりと解きほぐしてくれます。石造りの湯船に身を委ね、手入れの行き届いた庭を眺める時間は、まさに至福。大浴場の力強い金泉で体を温めた後、部屋に戻って銀泉でクールダウンする、そんな贅沢な湯の使い分けができるのもこの宿ならでは。

夜、ライトアップされた庭を眺めながら湯に浸かる。聞こえるのは、風の音と水の音だけ。ふたりで過ごした長い年月を、静かに肯定してくれるような優しい時間が流れていきます。日常から完全に切り離されたこの空間で、心はどこまでも自由になれるのです。

共用風呂

大浴場で堪能できるのは、有馬が誇る「金泉」。広々とした内湯と、開放感あふれる露天風呂が用意されています。欽山の金泉は、その効能の豊かさから「含鉄強塩泉」として知られ、保温・保湿効果に優れています。手足を伸ばして赤褐色の濁り湯に体を沈めれば、日頃の疲れが芯から溶け出していくのを感じるでしょう。

湯上り処も充実しており、冷たい飲み物で火照った体をクールダウンできます。清潔でゆきとどいた空間は、まさに大人のための湯殿。格調高い雰囲気の中で、心ゆくまで名湯の恵みを享受できます。

食事

欽山の真髄は、この「食事」にあると言っても過言ではありません。夕食は、料理長の美意識と技が結晶した「京風創作懐石」。四季折々の最高の食材を、最高の形で味わってほしいという想いが、一皿一皿から伝わってきます。料理は、専用厨房を備えた完全個室の料亭、またはお部屋でいただくことができ、究極のプライベート空間で美食と向き合えます。

器の選定から盛り付けの美しさ、そして絶妙なタイミングで供される一品一品まで、すべてが計算し尽くされた食のエンターテイメント。これはもはや食事ではなく、一つの芸術体験です。食にこだわる夫婦にとって、忘れられない夜になることをお約束します。

サービス

夕食を終え、部屋に戻る通路を歩いていた。
廊下に活けられた一輪挿しの椿が、ふと目に留まる。
「きれいな花ね」
妻が呟くと、通りかかった仲居さんがにこやかに足を止めた。
「『西王母』という名の椿でございます。茶花として、今の季節に最も美しい花の一つでございます」
そのさりげない一言に、この宿の美意識の深さを感じた。
説明ではなく、ただそっと教えてくれる。
その奥ゆかしいおもてなしが、何よりも心に響いた。

こんな50代夫婦におすすめ

  • 何よりも食事にこだわり、最高の美食体験を求める夫婦
  • 日本の伝統美や、静かで格調高い雰囲気を好む夫婦
  • 本物のおもてなしに触れ、心から満たされる滞在を望む夫婦

アクセス情報

  • 住所: 〒651-1401 兵庫県神戸市北区有馬町1302-4
  • アクセス: 神戸電鉄「有馬温泉駅」より徒歩約5分
  • 送迎: 有(有馬温泉駅・バス停より)

ふたりで紡ぐ、宿の記憶

最後のデザートが運ばれてきた時だった。
季節の果物を使った美しい水菓子。
その皿の隅に、金粉で小さな鶴が描かれていた。
「わぁ…」
思わず妻が声をあげる。
予約の際に、結婚三十周年の記念旅行だと伝えていたのを、覚えていてくれたのだ。
「おめでとうございます」
仲居さんの優しい声に、夫が少し照れながら「ありがとう」と答える。
豪華なサプライズではない。
けれど、そのささやかで奥ゆかしい心遣いが、どんな高価な贈り物よりも心に染みた。
三十年、色々あった。
決して平坦な道のりではなかったけれど、こうして二人で美味しいものを食べられる今が、何より幸せだと、妻は思った。
金の鶴が、ふたりのこれからの時間に、幸あれと告げているようだった。

御幸荘 花結び

~高台からの絶景と、心温まるおもてなしが自慢の湯宿~

■おすすめポイント(御幸荘 花結び)

  • 有馬の温泉街と山々を見渡す、高台からの眺望が素晴らしい
  • 金泉・銀泉の二つの名湯を、大浴場や貸切風呂で楽しめる
  • 露天風呂付き客室の種類が豊富で、様々なニーズに対応
  • 「花」をテーマにした館内は、華やかで心和む雰囲気
  • スタッフの笑顔と温かい接客に、リピーターが多いことでも有名

「花結び」という名の通り、館内の至るところに生け花が飾られ、訪れる人を優しい香りと彩りで迎えてくれる宿。高台に位置するため、ロビーや客室からの眺めは格別です。有馬の自然が織りなす四季折々の風景を眺めながら、ゆったりと過ごす時間は、心を穏やかにしてくれます。高級旅館の品格と、どこか家庭的な温かさを併せ持つ雰囲気が、多くの夫婦に愛されています。

客室

スタンダードな和室から、広々とした和洋室、そして最上階の展望露天風呂付き客室まで、多彩なタイプの部屋が用意されています。どの部屋も清潔で、ゆったりとした造り。特に展望露天風呂付きの客室「花がすみ」や「花うらら」からは、有馬の温泉街や六甲の山並みを一望でき、その開放感は圧巻です。

客室露天風呂の時間

高台にある宿の客室露天風呂、その一番の魅力は、なんといっても眺望です。眼下に広がる有馬の街並みと、遠くに連なる山々。その雄大なパノラマを独り占めしながら、名湯「金泉」に浸かる贅沢は、言葉に尽くせません。昼間は青空と緑のコントラストを、夜は温泉街の灯りが宝石のようにきらめく夜景を楽しめます。

湯船から立ちのぼる湯気と、頬をなでる高原の涼しい風。ふたりで遠くの景色を眺めていると、日々の悩み事がちっぽけなことに思えてきます。「きれいだね」とどちらからともなく呟き、同じ景色に感動を分かち合う。そんな素直な気持ちにさせてくれるのが、この絶景の露天風呂です。

共用風呂

「花結び」では、客室だけでなく共用風呂でも金泉と銀泉の両方を楽しめます。最上階にある展望大浴場「花がすみ」では、ガラス張りの大きな窓から絶景を望みながら、金泉の湯を満喫できます。また、趣の異なる貸切露天風呂も人気。プライベートな空間で、家族や夫婦水入らずの湯浴みを楽しみたい方におすすめです。

さらに、一階には銀泉の大浴場「花ごよみ」もあり、金泉との違いを肌で感じることができます。柔らかな銀泉は、ゆっくりと長湯するのに最適。館内で湯巡りをしながら、有馬が誇る二つの名湯の個性を味わい尽くすことができます。

食事

食事は、神戸牛をはじめ、明石の海の幸、丹波の山の幸など、地元の旬の食材をふんだんに使った会席料理。一品一品、丁寧に作られた料理は、見た目も華やかで、旅の夜を豊かに彩ります。器にもこだわりが感じられ、料理と共に季節感を演出してくれます。

食事場所は、お部屋または個室の食事処となり、プライベートが保たれた空間でゆっくりと味わうことができます。温かいものは温かいうちに、冷たいものは冷たいうちに。その当たり前を大切にする、宿の心が伝わるお料理です。

サービス

ロビーのソファで湯上がりの体を休めていると、スタッフの女性がにこやかに話しかけてきた。
「昨日はよくお休みになれましたか?」
「ええ、とても。お部屋からの眺めが素晴らしくて」
妻が答えると、彼女は嬉しそうに頷いた。
「今の季節も素敵ですが、秋の紅葉はまた格別でございますよ。山全体が燃えるようでございます」
その言葉に、夫と顔を見合わせた。
マニュアル通りの会話ではない、心からの言葉。
この宿が多くの人に愛される理由が、分かった気がした。

こんな50代夫婦におすすめ

  • 開放感のある景色を眺めながら、温泉に浸かりたい夫婦
  • 堅苦しくない、温かみのあるおもてなしを好む夫婦
  • 金泉と銀泉、両方の温泉をひとつの宿で楽しみたい夫婦

アクセス情報

  • 住所: 〒651-1401 兵庫県神戸市北区有馬町1304-1
  • アクセス: 神戸電鉄「有馬温泉駅」より徒歩約8分
  • 送迎: 有(有馬温泉駅・バス停より)

ふたりで紡ぐ、宿の記憶

部屋の窓から、夕日に染まる有馬の山々を眺めていた。
夫がそっと妻の肩にカーディガンをかける。
「冷えるといけないから」
優しいその仕草に、新婚の頃を思い出した。
昔は、当たり前のようにしてくれていたこと。
いつからだろう、そんなやり取りさえ忘れていたのは。
「ありがとう」
素直に言うと、夫は少し照れたように「ああ」とだけ答えた。
眼下には、家々の窓に明かりが灯り始める。
あの一つ一つの光の中に、それぞれの暮らしと、それぞれの物語がある。
私たちの物語も、まだ終わってはいない。
むしろ、ここからまた新しいページが始まるのかもしれない。
茜色に染まる空を見上げながら、妻は夫の肩にそっと頭をもたせかけた。

天地の宿 奥の細道

~全10室、ライブキッチンが彩る食と湯の隠れ家~

■おすすめポイント(天地の宿 奥の細道)

  • 客室はわずか10室のみ。静かで落ち着いた滞在が約束された隠れ家
  • 全室に趣の異なる源泉かけ流しの露天風呂を完備
  • 料理人が目の前で腕を振るう、ライブ感あふれる食事処
  • きめ細やかでパーソナルな、小規模旅館ならではのおもてなし
  • 有馬温泉街の喧騒から少し離れた、閑静な立地

有馬温泉の中心部から少しだけ奥まった、その名の通り「奥の細道」と呼ぶにふさわしい場所に、この宿は静かに佇んでいます。客室はわずか10室。その全てに源泉かけ流しの露天風呂が付いています。この宿の最大の特徴は、五感で味わう「食」の体験。料理人が目の前で調理するライブキッチンでの食事は、単なる夕食ではなく、心躍るエンターテイメントです。

客室

10室ある客室は、それぞれに「藍」「茜」など日本の伝統色が名付けられ、設えも異なります。和の趣を大切にしながらも、モダンで機能的なデザインが取り入れられており、快適な滞在を約束します。全室にシモンズ社製のベッドが用意されているのも嬉しいポイント。そして何より、全ての客室に風情あふれる露天風呂が備え付けられています。

客室露天風呂の時間

客室のテラスに一歩踏み出すと、そこには自分たちだけの温泉空間が広がっています。信楽焼や檜など、部屋ごとに趣向を凝らした湯船には、滔々と源泉が注がれています。ここの湯は、金泉と銀泉をブレンドした宿独自の「赤湯」。鉄分を含みながらも、肌あたりは優しく、体の芯から温まります。

周りを気にすることなく、好きな時間に好きなだけ湯に浸かる。朝、鳥の声を聞きながら目覚めの湯を。夜、満点の星空の下で一日の疲れを癒す湯を。湯船に浸かりながら、ふたりで静かに語り合う時間は、何にも代えがたい宝物。ふたりの絆を、湯の温もりがそっと深めてくれます。

共用風呂

こぢんまりとした宿ながら、もちろん大浴場も完備しています。こちらでは、有馬の名湯「金泉」を心ゆくまで楽しむことができます。客室の「赤湯」とはまた違った、濃厚で力強い金泉の湯力を肌で感じてみてください。客室数が少ないため、大浴場で他の宿泊客と会うことも少なく、広々とした湯船を貸切状態で使えることもしばしば。プライベート感と開放感を両立した湯浴みが楽しめます。

食事

この宿のハイライトとも言えるのが、カウンター席が中心の食事処「ご馳走屋」での夕食です。目の前の鉄板や調理場で、料理人が次々と料理を仕上げていく様は、まさに圧巻。ジュージューという音、立ち上る香ばしい匂い、そして料理人の鮮やかな手さばき。その全てが、最高のスパイスとなります。

提供されるのは、神戸牛のステーキやお寿司、天ぷらなど、誰もが大好きなご馳走の数々。出来立てアツアツを、一番美味しい瞬間にいただけます。料理人との会話を楽しみながら、目と耳と鼻と舌で味わう食事は、忘れられない旅の思い出になるはずです。

サービス

朝食の時だった。
目の前で料理人が、ふわふわのだし巻き卵を焼いてくれている。
「奥様は少し甘めがお好きですか?旦那様は出汁を効かせた方が?」
そんな風に尋ねられ、少し驚いた。
「じゃあ、私は甘めで」
「俺は出汁で」
それぞれ好みを伝えると、料理人はにこりと笑って、二種類の味付けで手際よく焼き上げてくれた。
ほんの少しの心遣い。
でも、その一言で、朝食の時間が何倍も温かいものになった。
小さな宿だからこその、心と心の通い合いがここにはあった。

こんな50代夫婦におすすめ

  • 出来立ての美味しい料理を、ライブ感と共に楽しみたい夫婦
  • 静かな隠れ家のような宿で、のんびりと過ごしたい夫婦
  • パーソナルで温かいおもてなしを求める夫婦

アクセス情報

  • 住所: 〒651-1401 兵庫県神戸市北区有馬町161
  • アクセス: 神戸電鉄「有馬温泉駅」より徒歩約15分
  • 送迎: 有(有馬温泉駅・バス停より)

ふたりで紡ぐ、宿の記憶

夕食のカウンターで、夫がぽつりと言った。
「ここの肉、本当にうまいな」
普段、食事の感想などめったに言わない彼が、目を細めて肉を頬張っている。
その顔は、まるで子供のように無邪気だった。
「本当ですね。美味しいです」
妻が微笑むと、料理人が「ありがとうございます。一番良いところを使っておりますので」と誇らしげに言った。
目の前で焼かれる音、立ち上る香り、そして最高の笑顔。
美味しいものを食べると、人は素直になれるのかもしれない。
「お前も、もっと食べろよ」
夫が自分の皿から、一番大きな肉を妻の皿に乗せる。
その不器用な優しさが、なんだか可笑しくて、そしてとても愛おしかった。
旅先で交わす、こんな何気ないやり取りが、きっと明日からの私たちの力になる。

まとめ|さあ、ふたりの時間を紡ぐ旅へ

有馬温泉で、50代の夫婦が心から満たされる5つの宿をご紹介しました。

  • 有馬山叢 御所別墅:森に抱かれた完全なプライベート空間で、ふたりだけの時間を過ごす。
  • 中の坊瑞苑:大人の静寂が約束された老舗で、金泉・銀泉の湯巡りを愉しむ。
  • 欽山:茶の湯の心と、芸術的な京風懐石。本物の美食とおもてなしに触れる。
  • 御幸荘 花結び:高台からの絶景と、温かい心遣いに癒される。
  • 天地の宿 奥の細道:ライブキッチンと客室露天風呂。食と湯の隠れ家で寛ぐ。

どの宿も、ただ体を休めるだけの場所ではありません。そこには、長い年月を共に歩んできたふたりが、互いの存在を慈しみ、新たな一歩を踏み出すための時間が流れています。

日常の喧騒から離れ、名湯に身を委ね、美味しい食事に舌鼓を打つ。そして何より、隣にいるパートナーと、ゆっくりと語り合う。そんな旅が、ふたりの物語に新たな輝きを添えてくれるはずです。

さあ、次の休日は、ふたりの時間を紡ぎ直す旅へ出かけてみませんか。


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