下呂温泉の露天風呂付き客室で過ごす50代夫婦の休日|日本三名泉の湯に癒され、ふたたび心を通わす宿5選

目次

なぜ下呂温泉は、人生の円熟期を迎えた夫婦を魅了するのか

子育てという長い旅路を終え、ふと隣を見れば、少しだけ髪に白いものが混じったパートナーがいる。慌ただしい日々の中で、いつしか言葉を交わす時間さえ惜しんでいたかもしれない。そんな50代の夫婦が、次なる人生のステージへと歩み出すとき、旅先に「下呂温泉」を選ぶのには、深い理由があります。

日本三名泉のひとつに数えられるその湯は、古くから「美人の湯」として知られ、とろりとした湯ざわりが心と体を芯から解きほぐしてくれる。それはまるで、長年連れ添った夫婦の関係のように、穏やかで、優しく、そして温かい。

この記事では、ただ温泉に入るだけではない、夫婦ふたりの時間を深く、豊かに紡ぎ直すための旅をご提案します。誰にも邪魔されない露天風呂付きの客室で、飛騨の自然と美食に抱かれながら、忘れていた言葉や眼差しを交わす。そんな、人生の後半を彩るにふさわしい、下呂温泉の上質な宿を5軒、厳選してご紹介します。

湯之島館

~森に抱かれ、歴史と対話する、国の登録有形文化財の宿~

■おすすめポイント(湯之島館)

  • 昭和6年創業、国の登録有形文化財にも指定された歴史と風格
  • 五万坪の広大な敷地に広がる、手つかずの自然と静寂
  • 飛騨の山々を一望する、開放感あふれる展望大浴場
  • 四季折々の自然を間近に感じる、趣の異なる露天風呂付き客室
  • 地産地消にこだわった、飛騨牛をはじめとする伝統の会席料理

昭和の粋人が愛したであろう、重厚な木造建築の廊下を歩けば、ギシ、と心地よい音が響く。ここは、時の流れさえも味方につけた特別な場所。日常の喧騒から完全に切り離された森の静寂の中で、夫婦はただ、在るがままの時間に身を委ねることができます。

客室

数寄屋造りの貴賓室や、昭和初期の浪漫が薫る本館の客室。そして、今回ご紹介したいのは、プライベートな湯浴みを約束する露天風呂付きの客室です。歴史を刻んだ柱や建具が、モダンな快適さと見事に調和し、落ち着いた大人のための空間を創り出しています。窓の外に広がるのは、ただ、緑の濃淡と鳥の声だけの世界。

客室露天風呂の時間

檜の香りがふわりと鼻をかすめる、客室の露天風呂。湯船に体を沈めると、とろりとした天下の名泉が、まるで美容液のように肌を包み込みます。聞こえるのは、風が木々の葉を揺らす音と、遠くで鳴く鳥の声だけ。

目の前に広がるのは、遮るもののない森の景色。春には芽吹き、夏には深緑、秋には燃えるような紅葉、そして冬には静寂の雪景色が、ふたりだけのために広がります。普段は無口な夫が、空を指さし「あの雲、面白い形だな」と呟く。妻は「ほんとね」と微笑む。そんな、何気ない会話さえもが、この場所ではかけがえのない宝物になるのです。

共用風呂

湯之島館を訪れたなら、ぜひ展望大浴場へも足を運んでみてください。高い天井と大きな窓から、下呂の温泉街と飛騨の山々を一望できるその空間は、まさに圧巻の一言。広々とした湯船で手足を伸ばせば、日頃の疲れが湯けむりと共に空へ溶けていくようです。

さらに、館内には趣の異なる貸切風呂も点在し、夫婦水入らずで湯めぐりを楽しむ散策も一興。歴史が息づく渡り廊下を歩き、次のお風呂へと向かう時間そのものが、心躍る体験となるでしょう。

食事

夕食は、飛騨の恵みをふんだんに使った伝統の会席料理。丁寧に引かれた出汁の香り、目にも鮮やかな八寸、そして口の中でとろけるような飛騨牛。一品一品に、料理長の技と心が込められています。

器のひとつひとつにも歴史が感じられ、食事という行為が、文化に触れる体験へと昇華します。地酒を片手に、今日の出来事や昔の思い出を語り合う。そんな穏やかな時間が、ふたりの絆をより一層深めてくれることでしょう。

サービス

ラウンジの窓から、夕暮れの森を眺めていた。
夫が淹れてくれたコーヒーの香りが、静かに立ち上る。
「昔、子供たちが小さい頃によく来たキャンプ場を思い出すな」
「あの頃は、あなたずっと火の番をしてくれていたわね」
「お前こそ、大変だっただろう」
妻は何も言わず、窓の外に広がる深い緑を見つめている。
過ぎ去った時間の愛おしさが、言葉はなくとも、ふたりの間に満ちていた。

こんな50代夫婦におすすめ

  • 歴史や文化、本物の風格を愛するご夫婦
  • 日常の喧騒から離れ、森の静寂の中で心をリセットしたいご夫婦
  • 館内散策を楽しみながら、宿そのものをじっくりと味わいたいご夫婦

アクセス情報

  • 住所:岐阜県下呂市湯之島645
  • アクセス:JR高山本線 下呂駅より車で約5分
  • 送迎:下呂駅より無料送迎バスあり(要連絡)

ふたりで紡ぐ、宿の記憶

チェックアウトの朝、ふたりは宿の庭園をゆっくりと散策していた。
苔むした石畳、澄んだ空気を胸いっぱいに吸い込む。
木漏れ日が、妻の横顔を優しく照らしていた。
「昨日の露天風呂、月がきれいだったわね」
妻がぽつりと言う。
「ああ。お前の好きな、細い月だったな」
夫の言葉に、妻は少し驚いたように彼を見つめた。
そんなこと、覚えていてくれたなんて。
「ねえ、あなた」
「なんだ?」
「また来年も、ここに来てもいい?」
「…そうだな。それもいい」
ぶっきらぼうな返事の中に、隠しきれない優しさが滲む。
妻はそっと、夫の腕に自分の腕を絡めた。
五万坪の森が、新しい約束を交わしたふたりを、静かに見守っている。

懐石宿 水鳳園

~飛騨の風土を味わい尽くす、美食家たちの隠れ家~

■おすすめポイント(懐石宿 水鳳園)

  • 料理旅館ならではの、五感を満たす懐石料理への絶対的な自信
  • 飛騨川の支流、阿多野川の清流沿いに佇む静かなロケーション
  • プライベート感を重視した、露天風呂付き客室の多彩なバリエーション
  • 利き酒師でもある若女将が選ぶ、料理に合わせた地酒のペアリング
  • 和の趣とモダンデザインが融合した、洗練された館内空間

旅の最も大きな楽しみは「食」にある。そう考えるご夫婦にとって、ここ水鳳園はまさに理想郷と言えるでしょう。料理長が腕を振るう一皿一皿は、もはや芸術の域。飛騨の豊かな自然が育んだ旬の食材を、最高の形で味わう口福のひとときが、ふたりを待っています。

客室

水鳳園の客室は、それぞれに趣が異なり、訪れるたびに新しい発見があります。特に露天風呂付きの客室は、広々としたテラスが特徴。阿多野川のせせらぎに耳を澄ませながら、心ゆくまで湯浴みを楽しめる贅沢な設計です。和の落ち着きと現代的な快適性が両立した空間で、何もしない贅沢を噛みしめることができます。

客室露天風呂の時間

陶器、檜、岩風呂と、部屋ごとに意匠の異なる露天風呂。湯船の縁に腰掛ければ、すぐそばを流れる阿多野川の清らかな水音が、心地よいBGMとなります。川面を渡る涼やかな風が、火照った頬を優しく撫でていく。

夜、満点の星空の下で湯に浸かれば、まるで自然と一体になったかのような感覚に包まれます。「昔、ふたりで星を見に行ったことがあったね」と、夫が懐かしい記憶の扉を開く。お互いが忘れていた小さな思い出の欠片を拾い集めるように、言葉がゆっくりと紡がれていく。そんな、センチメンタルな夜にぴったりの湯浴みです。

共用風呂

館内には、野趣あふれる岩造りの露天風呂と、木の香りに癒される大浴場が備わっています。客室のお風呂とはまた違う、開放感あふれる空間で手足を伸ばすのも格別です。

特に、夜の露天風呂は格別。ライトアップされた木々が幻想的な雰囲気を醸し出し、静寂の中で聞こえるのはお湯の音と虫の音だけ。日中の賑わいとは異なる、静かで神秘的な下呂の夜を感じることができます。

食事

水鳳園の真骨頂は、やはり「食事」にあります。夕食は、月替わりの懐石料理。飛騨牛はもちろんのこと、川魚、山菜、地元の野菜など、料理長自らが厳選した旬の食材が、驚きと感動の一皿となって運ばれてきます。

先付から水菓子に至るまで、一切の妥協がない料理の数々は、まさに飛騨の風土そのものを味わう体験。利き酒師の若女将に、料理に合う一杯を選んでもらうのも一興です。美味しいものを前にすれば、自然と会話も弾み、ふたりの笑顔がこぼれます。

サービス

食事が終わり、部屋に戻る途中。
ロビーの一角に設けられた書棚に、夫が足を止めた。
「お、懐かしい作家の本がある」
「あら、本当。昔よく読んでいたわよね、あなた」
「ああ。少し、借りていこうかな」
部屋に戻り、夫は黙ってページをめくり始める。
妻はテラスに出て、夜風にあたる。
同じ空間にいながら、それぞれが自分の時間を過ごす。
干渉せず、けれど確かに繋がり合っている。
そんな心地よい距離感を、この宿は教えてくれる。

こんな50代夫婦におすすめ

  • 旅の目的は美味しい食事だと断言できる、美食家のこ夫婦
  • 川のせせらぎを聞きながら、静かで落ち着いた時間を過ごしたいご夫婦
  • 料理に合わせたお酒のペアリングを楽しみたいご夫婦

アクセス情報

  • 住所:岐阜県下呂市幸田1515
  • アクセス:JR高山本線 下呂駅より車で約5分
  • 送迎:下呂駅より無料送迎あり(要予約)

ふたりで紡ぐ、宿の記憶

夕食の席。
A5等級の飛騨牛の握りが、艶やかな器に乗って運ばれてきた。
口に含んだ瞬間、とろけるような旨味に、思わず夫婦は顔を見合わせる。
「…これは、すごいな」
滅多に料理を褒めない夫が、感嘆の声を漏らした。
「本当に。美味しいものを食べると、幸せになるわね」
妻が微笑むと、若女将がそっと近づいてきた。
「お口に合いましたようで、何よりでございます。そのお肉に合うお酒もございますが、いかがでしょう?」
勧められるままに地酒を一口。
米の芳醇な香りが、肉の甘みをさらに引き立てる。
「まいったな。帰りたくなくなる」
夫の冗談に、妻は声を立てて笑った。
美味しい、という共通の感動が、ふたりの心を素直に解き放つ。
たくさんの言葉はなくても、最高の料理が、最高の会話を生み出していた。

紗々羅(ささら)

~和とアジアンが融合する、非日常のデザイン空間へ~

■おすすめポイント(紗々羅)

  • 下呂の温泉街を一望する高台からの絶景パノラマビュー
  • アジアンテイストを取り入れた、ユニークでスタイリッシュな館内
  • 森羅・紗々羅・ゆらり、趣の異なる3つの館からなる多彩な客室
  • 岩盤浴やエステなど、女性に嬉しいリラクゼーション施設が充実
  • 遊び心あふれる館内は、探検するように散策する楽しみも

いつもの旅行とは少し違う、刺激的で非日常な体験を求めるご夫婦へ。紗々羅は、伝統的な温泉旅館のイメージを覆す、モダンでデザイン性の高い空間が魅力です。和の様式美にアジアンリゾートのテイストが加わった館内は、一歩足を踏み入れた瞬間から、旅の高揚感をかき立ててくれます。

客室

ご紹介したいのは、眺望自慢の露天風呂が付いた客室。特に最上階の「森羅」は、全室スイート仕様で、温泉街の夜景を独り占めできる贅沢な造りです。アジアンテイストのインテリアと、日本の伝統色が融合した空間は、大人の冒険心をくすぐります。広々としたリビングで寛いだり、テラスで夜景を眺めたりと、思い思いの時間を過ごせます。

客室露天風呂の時間

眼下に広がるのは、宝石箱をひっくり返したような下呂温泉の夜景。そんな絶景を眺めながら浸かる客室露天風呂は、まさに至福のひとときです。湯船のふちにグラスを置いて、少しだけ贅沢にシャンパンを傾けるのもいいでしょう。

「きれいだね」と妻が言えば、「ああ」と夫が応える。都会の喧騒から離れた高台の静けさの中、きらめく街の灯りが、ふたりのロマンティックな夜を演出します。いつもより少しだけ素直になれる、そんな魔法のような時間が流れていきます。

共用風呂

紗々羅の魅力は、共用風呂にも現れています。檜の香りが心地よい大浴場に加え、趣の異なる3つの貸切露天風呂が無料で利用できます。

洞窟風呂やアジアンテイストの風呂など、それぞれにテーマ性があり、夫婦で湯めぐりを楽しめます。「次はどのお風呂に行ってみる?」そんな会話をしながら、館内を散策するのもこの宿ならではの楽しみ方。遊び心あふれる空間が、ふたりの距離を自然と縮めてくれます。

食事

食事は、飛騨の食材をふんだんに取り入れた創作会席。伝統を大切にしながらも、モダンな感性でアレンジされた料理は、目でも舌でも楽しむことができます。

器や盛り付けにもこだわりが感じられ、次は何が出てくるのだろうというワクワク感が尽きません。ダイニングからの夜景もごちそうのひとつ。きらめく温泉街を眺めながら、ゆっくりと食事の時間を堪能できます。

サービス

夜、バーラウンジのカウンターにふたりで並ぶ。
カクテルグラスを傾ける妻の横顔が、間接照明に照らされて美しい。
「たまには、こういうのもいいものね」
「そうだな。なんだか、昔を思い出す」
結婚する前、少し背伸びをして訪れたホテルのバー。
あの頃と今とでは、多くのことが変わった。
けれど、隣にいるのが互いであることは変わらない。
夫はそっと、妻のグラスに自分のグラスを合わせた。
カチン、と澄んだ音が、静かな空間に響いた。

こんな50代夫婦におすすめ

  • 伝統的な旅館だけでなく、モダンでデザイン性の高い空間が好きなご夫婦
  • 温泉街の夜景を眺めながら、ロマンティックな時間を過ごしたいご夫婦
  • エステや岩盤浴など、リラクゼーションも満喫したいご夫婦

アクセス情報

  • 住所:岐阜県下呂市森1412-1
  • アクセス:JR高山本線 下呂駅より車で約3分
  • 送迎:下呂駅より無料送迎あり

ふたりで紡ぐ、宿の記憶

部屋のテラスで、夫が買ってきた地ビールを飲んでいた。
眼下には、家路を急ぐ人々の車のライトが流れ星のように光っている。
「俺たちの人生も、あっという間だったな」
夫が、らしくないことを言う。
「そうね。でも、楽しかったわ」
妻が答えると、夫は少し照れくさそうに夜景に目を向けた。
「…まあな」
沈黙が流れる。
気まずい沈黙ではない。
たくさんの言葉を交わさなくても、お互いの気持ちがわかる、心地よい沈黙。
妻は夫の肩に、そっと頭をもたせかけた。
ビールの冷たさと、夫の体温が、じんわりと伝わってくる。
眼下の街の灯りの一つ一つに、自分たちと同じような夫婦の物語があるのだろうか。
そんなことを思いながら、下呂の夜は静かに更けていく。

こころをなでる静寂 みやこ

~全7室、誰にも気兼ねしない、ふたりだけの時間を約束する宿~

■おすすめポイント(こころをなでる静寂 みやこ)

  • わずか7室のみ、完全なプライベートが保たれる大人のための隠れ宿
  • すべての客室に源泉100%かけ流しの露天風呂を完備
  • 部屋食でいただける、飛騨の旬を閉じ込めた繊細な京風会席
  • 下呂温泉街の中心部にありながら、喧騒を忘れさせる静謐な空間
  • チェックインからチェックアウトまで、他の客と顔を合わせることがほとんどない設計

旅先で求めるのは、誰にも邪魔されない、完全なプライベート。そんなご夫婦にとって、ここはまさに理想の場所です。わずか7室しかないこの宿は、その名の通り、心をなでるような静寂に包まれています。他の宿泊客の気配を感じることなく、ただひたすらに、ふたりだけの時間に浸ることができます。

客室

7室の客室は、それぞれが独立した離れのような造り。広々とした和室に、寝心地の良いベッドルーム、そして源泉かけ流しの露天風呂が備えられています。華美な装飾はありませんが、上質な素材と計算された空間設計が、この上ない居心地の良さを生み出しています。ただ窓の外の緑を眺めているだけで、心が洗われていくようです。

客室露天風呂の時間

この宿の客室露天風呂は、まさに「ふたりのためだけ」の温泉です。24時間、いつでも好きな時に、源泉100%かけ流しの新鮮な湯を堪能できます。とろりとした湯が絶え間なく湯船から溢れ出る音は、最高のヒーリングミュージック。

朝、鳥の声で目覚めてすぐの朝風呂。昼下がり、読書に疲れた合間のひと風呂。そして、満天の星の下で語り合う夜の湯浴み。時間も、周りの目も気にすることなく、好きなだけ湯に浸かれる。これ以上の贅沢があるでしょうか。互いの背中を流し合う、そんな気兼ねない時間も、ここでは特別な思い出になります。

共用風呂

こちらの宿には、大浴場などの共用風呂は用意されていません。それは、全客室に備えられた専用の露天風呂で、誰にも気兼ねすることなく、ふたりの時間を心ゆくまで楽しんでほしいという、宿の哲学の表れです。他の宿泊客と湯船を共にすることなく、ただふたりきりで、日本三名泉の湯を独占する。これこそが、この宿が提供する最も贅沢な体験なのです。

食事

夕食、朝食ともに、お部屋でゆっくりといただきます。運ばれてくるのは、地元の食材を活かし、京料理の技法で丁寧に作られた創作会席。派手さはありませんが、一品一品から出汁の繊細な味わいと、料理人の実直な仕事ぶりが伝わってきます。

ふたりだけの空間で、人目を気にせず、自分たちのペースで食事を楽しめるのは、部屋食ならではの魅力。お互いの顔を見ながら、「これ、美味しいね」と微笑み合う。そんな当たり前の時間が、何よりも愛おしく感じられます。

サービス

夕食後、部屋の隅に置かれていた香炉に、妻が火を灯した。
白檀の、清らかで落ち着いた香りが、ふわりと広がる。
テレビもつけず、ただ静かな時間が流れていく。
「…なんだか、落ち着くな」
夫が、ソファに深く身を沈めながら呟いた。
「ええ、本当に」
余計なものが何もない。
ただ、大切な人と、心地よい静寂があるだけ。
それだけで、心はこんなにも満たされる。
香りが、ふたりの間の空気をより一層、穏やかなものに変えていく。

こんな50代夫婦におすすめ

  • 他の宿泊客に気兼ねなく、完全なプライベート空間で過ごしたいご夫婦
  • 24時間いつでも源泉かけ流しの温泉を心ゆくまで満喫したいご夫婦
  • 部屋食でゆっくりと、自分たちのペースで食事を楽しみたいご夫婦

アクセス情報

  • 住所:岐阜県下呂市幸田1113-1
  • アクセス:JR高山本線 下呂駅より徒歩約12分
  • 送迎:なし

ふたりで紡ぐ、宿の記憶

朝、障子を開けると、柔らかな光と共に、澄んだ空気が部屋に流れ込んできた。
テラスの露天風呂からは、白い湯気が立ち上っている。
「おはよう」
隣で眠っていた夫が、ゆっくりと身を起こした。
「おはようございます。朝風呂、入る?」
「ああ、そうするか」
まだ誰も起きていない静かな温泉街の気配を感じながら、ふたりで湯船に体を沈める。
生まれたままの姿で、同じ湯に浸かる。
それは、夫婦にとって最も自然で、飾らない姿。
「気持ちいいな」
「ほんとね」
短い言葉を交わすだけ。
けれど、その温もりと、共有する穏やかな時間は、何よりも雄弁に、ふたりの絆を物語っていた。
新しい一日が、最高の形で始まっていく。

下呂温泉 冨岳(ふがく)

~飛騨川の絶景を独り占めする、リバービューの特等席~

■おすすめポイント(下呂温泉 冨岳)

  • 飛騨川の清流と温泉街の景色を間近に望む、最高のロケーション
  • 川沿いの露天風呂付き客室からの、四季折々の美しい眺望
  • 畳敷きの廊下や館内が心地よい、素足で寛げる和の空間
  • 最上階にある、飛騨川を一望する展望大浴場からの開放的な景色
  • 地元食材を活かし、個室でゆっくり味わえるこだわりの会席料理

温泉宿の窓から、雄大な川の流れを眺める。そんな王道ともいえる贅沢を、心ゆくまで満喫できるのが「冨岳」です。目の前を流れる飛騨川のせせらぎ、対岸に広がる温泉街の情緒、そして遠くに連なる飛騨の山々。そのすべてが、ふたりの旅を彩る美しい絵画となります。

客室

冨岳に泊まるなら、ぜひ選びたいのが飛騨川に面した露天風呂付きの客室。窓を大きく開け放てば、まるで川の上の特等席にいるかのような気分を味わえます。畳の香りが心地よい和の空間で、ごろんと横になりながら、窓の外を流れる景色を眺めているだけで、心が穏やかになっていくのを感じるでしょう。

客室露天風呂の時間

信楽焼のまぁるい湯船が愛らしい、客室の露天風呂。そこに身を沈めれば、目線の先には雄大な飛騨川の流れが広がります。聞こえてくるのは、川のせせらぎと、時折聞こえる列車の音。それがまた、旅情をかき立てます。

昼間は、キラキラと光る川面を眺めながら。夜は、対岸の温泉街の灯りが川面に揺れる幻想的な景色を眺めながら。時間と共に表情を変える風景を、誰にも邪魔されずに独り占めできる。この客室露天風呂は、まさに「動く絵画」を鑑賞するための特別な場所なのです。

共用風呂

最上階にある展望大浴場からの眺めは、この宿のもうひとつの自慢です。大きなガラス窓の向こうには、下呂の温泉街と飛騨川が織りなす大パノラマが広がります。

特に、日の出や夕暮れの時間帯は格別。空と川と街が美しいグラデーションに染まっていく様子を、広々とした湯船から眺める時間は、忘れられない思い出となるでしょう。客室のプライベートな湯浴みとはまた違う、スケールの大きな爽快感を味わうことができます。

食事

夕食は、プライベートが保たれる個室の食事処でいただきます。飛騨牛や、季節の川魚、地元の新鮮な野菜など、この土地ならではの味覚を詰め込んだ会席料理が、旅の夜を豊かに彩ります。

一品一品、丁寧に作られた料理を、飛騨川の景色を眺めながらゆっくりと味わう。周りを気にすることなく、料理と会話に集中できるのは嬉しい配慮です。飛騨の地酒と共に、この土地の恵みを心ゆくまで堪能してください。

サービス

食事が終わり、部屋に戻る廊下を歩く。
この宿は館内が畳敷きで、スリッパを履かずに歩ける。
足の裏に伝わる、い草の感触がなんとも心地よい。
「素足って、気持ちがいいものね」
妻が言うと、夫も「ああ」と頷く。
日頃、革靴やヒールに締め付けられている足を解放する。
それは、心まで解き放つような感覚に似ていた。
些細なことだけれど、そんな小さな気づきが、旅を豊かにしてくれる。

こんな50代夫婦におすすめ

  • 部屋から雄大な川の景色を眺めながら、のんびりと過ごしたいご夫婦
  • 開放感あふれる展望大浴場からのパノラマビューを楽しみたいご夫婦
  • 畳敷きの和の空間で、素足でリラックスして過ごしたいご夫婦

アクセス情報

  • 住所:岐阜県下呂市幸田1084
  • アクセス:JR高山本線 下呂駅より徒歩約10分
  • 送迎:下呂駅より無料送迎あり

ふたりで紡ぐ、宿の記憶

朝、カーテンを開けると、飛騨川の川面が朝日に照らされて、きらきらと輝いていた。
対岸の合掌村が、朝もやの中に静かに佇んでいる。
「すごいな、絵みたいだ」
夫が感嘆の声を漏らす。
妻は何も言わず、淹れたてのお茶を夫に手渡した。
ふたり並んで椅子に座り、ただ黙って、その景色を眺める。
言葉はいらない。
同じ景色を見て、同じように「美しい」と感じている。
その共有感だけで、心は満たされていた。
川の流れのように、自分たちの時間も、ゆったりと、穏やかに流れていく。
この景色を、きっとふたりは忘れないだろう。
家に戻って、また慌ただしい日常が始まっても、ふと、この窓からの景色を思い出すに違いない。
そして、そのたびに、心が少しだけ、温かくなるのだ。

まとめ|さあ、ふたりの時間を紡ぐ旅へ

日本三名泉、下呂温泉。そのとろりとした湯は、肌を滑らかにするだけでなく、夫婦の心まで、優しく解きほぐしてくれる不思議な力を持っています。今回ご紹介した5軒の宿は、いずれも、ふたりだけの時間を何よりも大切にできる場所です。

  • 歴史と森の静寂に抱かれたいなら「湯之島館」
  • 美食を心ゆくまで堪能したいなら「懐石宿 水鳳園」
  • モダンで非日常な空間を楽しみたいなら「紗々羅」
  • 完全なプライベートを求めるなら「こころをなでる静寂 みやこ」
  • 雄大な川の絶景を独り占めしたいなら「下呂温泉 冨岳」

子育てが終わり、人生の新しい章が始まる今だからこそ、ふたりで出かける旅には特別な意味があります。それは、過去を懐かしむ旅ではなく、これからの未来を語り合うための旅。

さあ、次の休日は、少しだけ贅沢な宿を予約して、下呂温泉へ出かけてみませんか。そこにはきっと、あなたがた夫婦が本当に求めていた、穏やかで、温かい時間が流れています。


よかったらシェアしてね!
目次
閉じる