奥飛騨温泉郷の露天風呂付き客室【50代夫婦の旅行】ふたりの時間を紡ぎ直す、おすすめ宿5選

目次

なぜ賢明な夫婦は、人生の後半に奥飛騨温泉郷を目指すのか

子育てという大きな役割を終え、ふと隣を見ると、少しだけ照れくさそうなパートナーの顔。これから始まるふたりの時間を、どこで、どのように紡いでいこうか。そんな思慮深い50代の夫婦が、旅の目的地として奥飛騨温泉郷を選ぶのには、明確な理由があります。

ここは、単に美しいだけの温泉地ではありません。北アルプスの険しい山々に抱かれ、平湯、福地、新平湯、栃尾、新穂高という個性の異なる五つの温泉地が、まるで寄り添うように点在しています。その懐の深さは、訪れる者に日常からの完全な断絶を約束します。都会の喧騒も、鳴りやまない通知音も、ここには届きません。聞こえるのは、川のせせらぎ、風に揺れる木々の葉音、そして自らの心の声だけ。

華やかな観光地を巡る旅もいいでしょう。しかし、今のふたりが本当に求めているのは、互いの存在を静かに確かめ合える、濃密な時間ではないでしょうか。奥飛騨の湯は、ただ体を温めるだけでなく、これまで言えなかった感謝や、これから共に描く夢を、そっと語りかけるきっかけをくれるのです。この記事では、そんなふたりのための、露天風呂付き客室を備えた珠玉の宿を5軒、厳選してご紹介します。

槍見の湯 槍見舘

~槍ヶ岳を望む、野趣あふれる湯浴みは、ふたりの冒険心を呼び覚ます~

■おすすめポイント(槍見の湯 槍見舘)

  • 槍ヶ岳を望む絶景の混浴露天風呂「槍見の湯」
  • 清流・蒲田川のせせらぎがBGMとなる圧倒的な開放感
  • 趣の異なる4つの無料貸切露天風呂で湯めぐり三昧
  • 飛騨の古民家を移築した、温もりと懐かしさを感じる館内
  • 囲炉裏でいただく、滋味あふれる郷土料理

この宿の主役は、何と言ってもその温泉です。北アルプスの名峰・槍ヶ岳をその名に冠した「槍見の湯」をはじめ、自然そのものを湯船にしたようなダイナミックな露天風呂群は、訪れる者の心を瞬時に捉えます。館内に一歩足を踏み入れれば、そこは飛騨の古き良き時代。移築された古民家の太い梁や柱が、温かくも荘厳な雰囲気を醸し出し、これから始まる非日常の滞在を静かに予感させてくれます。

客室

「槍見の湯 槍見舘」には、本館の和室のほか、専用の露天風呂が付いた離れ客室も用意されています。特におすすめしたいのが、土蔵を改装したメゾネットタイプの離れ。一階が居間、二階が寝室というゆとりのある空間で、誰にも気兼ねすることなく、ふたりだけの時間を満喫できます。重厚な木の扉を開ければ、そこには専用の岩露天風呂が待っています。

客室露天風呂の時間

客室の露天風呂は、野趣あふれる宿の共用風呂とは少し趣が異なり、よりプライベートで、洗練された岩造りの湯船です。目の前には奥飛騨の深い緑が広がり、蒲田川の力強い流れの音が心地よく響きます。湯船に体を沈めると、とろりとした単純温泉が肌を優しく包み込み、体の芯からじんわりと解きほぐされていくのがわかります。

日常では見過ごしがちな、パートナーの小さな表情の変化。湯けむりの向こうに見えるその横顔に、「いつもありがとう」と、普段は照れくさくて言えない言葉を、そっとかけてみる。そんな素直な気持ちになれるのも、この場所が持つ魔法なのかもしれません。川の音だけが、ふたりの静かな会話に寄り添っています。

共用風呂

この宿を語る上で、多彩な共用風呂は外せません。槍ヶ岳を望む混浴露天風呂「槍見の湯」は、専用の湯浴み着を着用して入るため、夫婦で一緒にその絶景を堪能できます。目の前の川がまるで湯船の続きであるかのような錯覚を覚えるほどの開放感は、まさに圧巻の一言です。

その他にも、渓流沿いに点在する4つの貸切露天風呂は、空いていれば何度でも無料で利用可能。「まんてんの湯」からは、その名の通り満天の星空を独り占めできます。夫婦で湯めぐりの散策をしながら、次に入るお風呂を相談する時間もまた、旅の楽しい思い出となるでしょう。

食事

夕食は、高い天井と太い梁が印象的な囲炉裏端の個室でいただきます。パチパチと炭がはぜる音を聞きながら、目の前で焼き上げられる岩魚の塩焼きや、A5ランクの飛騨牛の朴葉味噌焼きは格別です。土地の恵みを、最も美味しい形でいただくという贅沢。それは、奇をてらった料理ではなく、心に深く染み渡る、本物のご馳走です。

山菜の天ぷら、手作りの五平餅など、奥飛騨の素朴で力強い味わいが、旅の夜を豊かに彩ります。地酒を片手に、ゆっくりと更けていく夜。会話が途切れても、囲炉裏の火がふたりの間を温かくつないでくれます。

サービス

毎朝ロビーで行われる餅つきは、この宿の名物です。
「よいしょ、よいしょ!」
威勢のいい掛け声に合わせて、夫が杵を振り下ろす。
その姿を、妻は少しはにかみながらスマートフォンで撮影している。
つきたてのお餅は、きな粉やあんこで振る舞われる。
「美味しいわね、あなたもどう?」
「ああ、うまいな。自分でついた餅は格別だ」
そんな何気ないやりとりが、旅の記憶に温かい彩りを添える。

こんな50代夫婦におすすめ

  • 都会の喧騒を忘れ、大自然の中で心身ともにリフレッシュしたい夫婦
  • 絶景の露天風呂で、開放感あふれる湯浴みを満喫したい夫婦
  • 飛騨の古民家風情と、囲炉裏料理という非日常感を味わいたい夫婦

アクセス情報

  • 住所: 岐阜県高山市奥飛騨温泉郷神坂587
  • アクセス: JR高山駅より濃飛バス新穂高温泉行きで約90分、「中尾高原口」バス停下車、徒歩約5分
  • 送迎: 「中尾高原口」バス停まで送迎あり(要事前連絡)

ふたりで紡ぐ、宿の記憶

夜更け、ふたりで貸切露天風呂『まんてんの湯』へ向かう。
小さな吊り橋を渡ると、湯けむりの向こうにぽつんと灯りがともる湯小屋が見えた。
扉を開け、湯船に体を沈めると、満天の星が降ってくるようだ。
「すごいな…」
夫が、まるで子供のようにはしゃいだ声で呟く。
「ええ、本当に。天の川まで見えるわ」
妻も、都会では決して見ることのできない夜空に言葉を失う。
流れ星が、すっと夜空を横切った。
「あ…」
ふたりは同時に空を指さし、顔を見合わせて笑う。
これまで、どれだけ多くのことを一緒に乗り越えてきただろう。
そして、これから、どれだけの景色を一緒に見ることができるだろう。
蒲田川のせせらぎが、ふたりのこれからの時間に、優しい祝福を贈っているかのように聞こえる。
星空の下、ふたりの影は静かに寄り添い、奥飛騨の夜に溶けていく。

匠の宿 深山桜庵

~飛騨の匠の技が光る空間で、北アルプスの絶景と優雅な湯浴みを~

■おすすめポイント(匠の宿 深山桜庵)

  • 飛騨の匠による、木の温もりと美しさを感じる館内建築
  • 笠ヶ岳など北アルプスの雄大な山々を望む絶景露天風呂
  • 全客室に備えられた、檜の香るプライベートな展望風呂
  • 共立リゾートならではの、多彩で心のこもった無料サービス
  • 個室食事処で味わう、A5ランク飛騨牛の炭火焼き会席

「共立リゾート」が手掛けるこの宿は、奥飛騨の雄大な自然と、日本の伝統建築美が見事に融合した空間です。館内の随所に用いられた飛騨の銘木や、大胆な木組みの意匠は、まさに「匠の宿」の名にふさわしい風格。それでいて、細やかなおもてなしの心が随所に感じられ、訪れる者に上質な寛ぎと安心感を与えてくれます。本物の価値を知る50代の夫婦にこそ、体験してほしい洗練された湯宿です。

客室

客室は、飛騨の古民家を思わせる、木の温もりに満ちた落ち着いた空間です。露天風呂付きの客室「姫小松の抄」や「深山桜の抄」では、シモンズ社製のベッドが配された寝室と、寛ぎの和室が用意され、ゆったりとした時間を過ごせます。窓の外に広がるのは、雄大な北アルプスの山並み。すべての客室には、この絶景を眺めながら湯浴みを楽しめる専用の風呂が備えられています。

客室露天風呂の時間

客室に備えられた湯船は、温泉ではありませんが、窓を全開にすればまるで露天風呂のような開放感を味わえる展望風呂です。湯船を満たすと、清々しい檜の香りがふわりと立ち上り、深いリラクゼーションへと誘います。窓の外に目をやれば、夕暮れの光を浴びて刻一刻と表情を変える笠ヶ岳の姿。その荘厳な美しさは、時が経つのを忘れさせます。

「ワインでも、もらうかい?」夫の提案に、妻は静かに頷きます。グラスを片手に湯船に浸かり、ただ黙って景色を眺める。言葉は少なくとも、同じものを見て、同じように感動する。そんな共有体験が、ふたりの絆をより一層深いものにしてくれるのです。ここでは、何もしないことが、最高の贅沢となります。

共用風呂

男女別の趣の異なる大浴場は、この宿のもう一つの魅力です。内湯には寝湯や深湯などがあり、露天風呂からは笠ヶ岳をはじめとする北アルプスの大パノラマが広がります。特に、雪が降り積もる冬の季節、白銀の山々を眺めながら浸かる雪見露天は、まさに絶景の一言に尽きます。

さらに、予約不要で利用できる4つの貸切風呂も完備。檜風呂と岩風呂の2種類があり、プライベートな空間で源泉かけ流しの湯を心ゆくまで堪能できます。館内で湯めぐりができる楽しさは、温泉好きの夫婦にとって、この上ない喜びとなるでしょう。

食事

夕食は、プライベート感が保たれた半個室の食事処で、囲炉裏を囲みながらいただきます。メインディッシュは、最高ランクであるA5等級の飛騨牛の炭火焼き。じっくりと火を通し、肉の旨みを最大限に引き出したその味わいは、まさに絶品です。

飛騨の山々で採れた旬の山菜や、清流で育った川魚など、地元の食材をふんだんに使った会席料理は、目にも鮮やか。一品一品に料理長のこだわりと、もてなしの心が感じられます。土地の恵みを丁寧に味わう時間は、旅の記憶をより豊かなものにしてくれるはずです。

サービス

湯上がりに、ラウンジで休んでいると、夫がアイスキャンディーを2本持ってきた。
「お風呂上がりは、やっぱりこれだな」
「あら、子供みたいね」
妻は笑いながら受け取る。
しばらくして、夜10時を過ぎると、宿のスタッフが「夜鳴きそばはいかがですか」と声をかけてきた。
共立リゾート名物の無料サービスだ。
「小腹が空いてきたところだ。いただこうか」
「ええ、高山ラーメンですって。楽しみね」
さっぱりとした醤油味のラーメンをふたりですする。
こういうささやかな気遣いが、宿の印象を温かいものにする。

こんな50代夫婦におすすめ

  • 建築美やデザイン性の高い空間で、上質な時間を過ごしたい夫婦
  • 北アルプスの絶景を眺めながら、優雅な湯浴みを楽しみたい夫婦
  • 「夜鳴きそば」など、宿の細やかな無料サービスやもてなしを重視する夫婦

アクセス情報

  • 住所: 岐阜県高山市奥飛騨温泉郷平湯229
  • アクセス: JR高山駅より濃飛バス新穂高温泉行きで約60分、「平湯温泉」バス停下車、徒歩約3分
  • 送迎: なし

ふたりで紡ぐ、宿の記憶

チェックインを済ませ、ロビーの奥にある「色浴衣」のコーナーへ。
妻が、様々な柄の浴衣を前に、楽しそうに悩んでいる。
「どれがいいかしら。これも素敵だし、こっちもいいわね」
普段は洋服選びにそれほど時間をかけない彼女が、少女のように瞳を輝かせている。
夫は少し離れた場所から、その様子を微笑ましく眺めていた。
彼女が選んだのは、落ち着いた藍色に、可憐な桜の柄があしらわれた一枚。
「どうかしら?」
少し照れながら振り向く妻に、夫は「よく似合ってる」と短く答える。
その一言で、彼女の顔がぱっと華やいだ。
部屋に戻り、浴衣に着替えて縁側で並んで座る。
いつもと違う装いの互いの姿が、少しだけ新鮮で、照れくさい。
旅先だからこそ引き出される、パートナーの新しい表情。
その小さな発見が、ふたりの時間を、また少しだけ特別なものに変えてくれる。

隠庵 ひだ路

~わずか12室の隠れ家で、奥飛騨の滋味と静寂に徹する休日を~

■おすすめポイント(隠庵 ひだ路)

  • 広大な敷地にわずか12室という、究極のプライベート空間
  • 全室に備えられた、源泉かけ流しの岩露天風呂と総檜の内湯
  • 海の幸を一切使わず、山の恵みにこだわった本格囲炉裏会席
  • 庵主自らが厳選した、料理を彩る美しい器の数々
  • 古民家の趣とモダンな快適性が融合した、洗練された客室

「何もしない贅沢」を、これほどまでに深く感じさせてくれる宿はそう多くありません。福地温泉の静かな地に佇む「隠庵 ひだ路」は、広大な敷地に客室をわずか12室のみ配した、まさに大人のための隠れ家。この宿の哲学は「引き算の美学」にあります。過剰なサービスや装飾を排し、本物の静寂、本物の温泉、そしてこの土地でしか味わえない本物の食を提供することにすべてを捧げています。日常の責務から解放され、ただひたすらにふたりの時間に浸りたい夫婦に、最高の舞台を約束します。

客室

客室は、飛騨の古民家を彷彿とさせる重厚な梁や柱が印象的な、落ち着きのある和の空間です。全室に掘りごたつが設えられており、心から寛げる工夫がなされています。そして何よりの魅力は、全室に源泉かけ流しの本格的な岩造り露天風呂と、清々しい香りに満ちた総檜の内湯が完備されていること。滞在中、いつでも好きな時に、誰にも邪魔されることなく名湯を独り占めできます。

客室露天風呂の時間

客室の扉を開け、数歩進めばそこはもう自分たちだけの温泉。岩造りの露天風呂は、大人が足を伸ばしても余りあるほどの広さです。湯船に体を沈めると、無色透明の柔らかな単純泉が、こんこんと溢れ出ていきます。聞こえてくるのは、風が木々を揺らす音と、時折聞こえる鳥のさえずりのみ。これ以上ないほどの静寂が、ふたりを包み込みます。

湯船の縁に腰掛け、空を見上げる夫。その隣で、妻はそっと目を閉じ、湯の感触を確かめている。言葉を交わさずとも、互いが同じ心地よさを共有していることがわかる。それは、長年連れ添った夫婦だからこそ感じられる、無言の対話。日々の喧騒の中で忘れかけていた、穏やかで満ち足りた時間が、ここにあります。

共用風呂

各客室に素晴らしい露天風呂が備えられていますが、宿の敷地内には川沿いに設けられた2ヶ所の露天風呂もあります。時間帯によっては貸切で利用することもでき、客室とはまた違った開放感を味わうことができます。川のせせらぎを間近に聞きながらの湯浴みは、より深く自然との一体感を感じさせてくれるでしょう。

食事

この宿の食事へのこだわりは、徹底しています。「海の食材は一切使用せず、地元の食材をふんだんに」。その哲学のもと、供されるのは奥飛騨の山の幸、川の幸を知り尽くした料理長による、滋味あふれる囲炉裏会席です。囲炉裏でじっくりと焼き上げられる岩魚の塩焼きや五平餅、そしてメインとなる飛騨牛の石焼き。どれも素材の力がみなぎる逸品ばかりです。

特筆すべきは、料理を美しく引き立てる器の数々。庵主自らが全国の窯元を訪ねて選び抜いたという器は、それ自体が芸術品のよう。素朴でありながら力強い奥飛騨の料理が、洗練された器に盛られることで、より一層豊かな表情を見せます。五感すべてで味わう、忘れられない食体験が待っています。

サービス

夕食後、部屋の掘りごたつで寛いでいると、夫がぽつりと言った。
「今日の料理、すごかったな。魚も肉も茸も、全部この土地のものなんだってな」
「ええ、本当に。器も一つひとつ素敵だったわ。お料理への愛情を感じるわね」
妻は、テーブルに置かれた宿の案内を手に取る。
そこには、宿の食へのこだわりが静かな言葉で綴られていた。
「『ここでしか味わえないものを』か。なるほどな」
華美な装飾や言葉はない。
ただ、ひたむきに、この土地の恵みと向き合う。
その静かで潔い姿勢こそが、この宿の最大の「サービス」なのかもしれない。

こんな50代夫婦におすすめ

  • 誰にも邪魔されない、完全なプライベート空間で静かに過ごしたい夫婦
  • 本物の「地産地消」にこだわった、滋味深い料理をじっくりと味わいたい夫婦
  • 過剰なサービスは不要で、本質的な豊かさを求める夫婦

アクセス情報

  • 住所: 岐阜県高山市奥飛騨温泉郷福地687
  • アクセス: JR高山駅より濃飛バス新穂高温泉行きで約70分、「福地温泉(上)」バス停下車、徒歩約2分
  • 送迎: なし

ふたりで紡ぐ、宿の記憶

朝、少し早く目が覚めた。
隣で眠る夫を起こさないように、そっと寝室を抜け出し、客室の露天風呂へ向かう。
ひんやりとした朝の空気が、頬に心地よい。
湯船に体を沈めると、朝霧が立ち込める木々の間から、柔らかな陽の光が差し込んできた。
鳥たちが、今日の始まりを告げるようにさえずっている。
しばらくすると、夫も起きてきたようだ。
「おはよう。早いな」
「おはようございます。空気が気持ちよくて」
彼は何も言わずに、隣にそっと体を沈めた。
ふたりで、言葉もなく、ただ朝の光と音に包まれる。
昨日までの日常が、遠い昔のことのように感じられた。
何かに追われることもなく、誰かのために時間を使うのでもない。
ただ、ふたりのためだけに、ゆっくりと流れていく時間。
この静かな朝の湯船で交わした無言の会話を、きっと、ずっと忘れないだろう。

いろりの宿 かつら木の郷

~四千坪の森に佇む離れで、囲炉裏を囲む、ふたりだけの集落時間~

■おすすめポイント(いろりの宿 かつら木の郷)

  • 四千坪の広大な敷地に、わずか10棟の離れが点在する贅沢な配置
  • 全棟に源泉かけ流しの専用露天風呂と、風情ある囲炉裏を完備
  • 食事は完全個室の食事処で、プライベートな囲炉裏会席を堪能
  • まるで一つの小さな村に滞在しているかのような、ユニークな非日常感
  • チェックアウト11時で、朝もゆったりと温泉や散策を楽しめる

奥飛騨・福地温泉の森深くに、まるで隠れ里のように佇むのが「いろりの宿 かつら木の郷」です。四千坪もの広大な敷地に、客室はわずか10棟の離れのみ。母屋を中心に、古民家風の離れが点在する様子は、さながら一つの小さな集落のようです。この宿のコンセプトは「囲炉裏」。客室にも、そして食事処にも、温かい火が灯る囲炉裏が設えられ、人と人との繋がりや、ゆったりと流れる時間を象徴しています。日常から遠く離れた場所で、ふたりだけの村人になって過ごす。そんな物語性あふれる滞在が、ここにあります。

客室

客室はすべて、プライベートが完全に保たれた一戸建ての離れ形式。飛騨の古民家を思わせる造りで、中に入るとまず目に飛び込んでくるのが、存在感のある囲炉裏です。炭に火を熾し、パチパチと燃える炎を眺めているだけで、心が不思議と落ち着いてきます。そして、すべての離れには源泉かけ流しの専用露天風呂が完備。森の静寂の中、誰にも気兼ねすることなく、名湯を好きなだけ楽しむことができます。

客室露天風呂の時間

離れの縁側から続く先に、石造りの露天風呂はあります。目の前には、人の手があまり加えられていない、ありのままの自然林が広がっています。湯船に身を委ねると、聞こえるのは風の音と鳥の声だけ。木々の緑が目に優しく、季節によってはハラハラと舞い落ちる木の葉が、湯面に風情ある模様を描きます。

「昔、子供たちが小さい頃、よくキャンプに行ったのを思い出すな」夫が懐かしそうに言います。「そうね、あの頃はいつも大忙しだったわね」妻が微笑みながら応える。囲炉裏の火がそうさせるのか、この森の空気がそうさせるのか、自然と昔の思い出話に花が咲きます。過去を振り返り、今こうしてふたりで静かに温泉に浸かっている幸せを噛みしめる。そんな、しみじみとした喜びを感じられる時間です。

共用風呂

各離れに素晴らしい露天風呂がありますが、母屋の近くには男女別の大浴場と露天風呂、さらに無料で利用できる2つの貸切露天風呂も用意されています。特に、森の中にひっそりと佇む貸切露天風呂は、より深いプライベート感を味わうことができ、おすすめです。敷地内を散策しながら、湯めぐりを楽しむのも、この宿ならではの過ごし方です。

食事

食事は、母屋にある完全個室の囲炉裏食事処でいただきます。客室の囲炉裏が「寛ぎ」の場であるなら、こちらは「饗宴」の舞台。それぞれの個室で、専属のスタッフが最も良いタイミングで料理を提供してくれます。メインはもちろん、炭火でじっくりと焼き上げる飛騨牛。香ばしい香りが食欲をそそり、口に運べばとろけるような旨みが広がります。

川魚の塩焼きや、地元で採れた野菜、素朴な味わいの郷土料理など、奥飛騨の恵みを存分に堪能できます。揺らめく炎を眺めながら、ゆっくりと食事と会話を楽しむ。それは、現代人が忘れかけている、食の原点ともいえる豊かな体験です。

サービス

夕食を終え、提灯の灯る小道を歩いて離れへ戻る。
部屋の囲炉裏には、宿のスタッフによって新しく炭がくべられ、じんわりと暖かい。
「火って、いいもんだな。見てるだけで落ち着く」
夫が、火箸で炭をつつきながら言う。
「本当ね。テレビもつけずに、こうしているだけで満たされるなんて」
妻は、用意されていた薬草茶を淹れる。
特別なイベントがあるわけではない。
ただ、静かに火を囲み、お茶を飲む。
最高の贅沢とは、高価なものではなく、こういう豊かな時間のことを言うのだろう。
この宿は、そのことを静かに教えてくれる。

こんな50代夫婦におすすめ

  • 完全に独立した離れで、誰にも干渉されないプライベートな休日を過ごしたい夫婦
  • 囲炉裏の火を囲みながら、語り合うような温かい時間を大切にしたい夫婦
  • 非日常的な「村」という世界観の中で、物語の登場人物のように過ごしてみたい夫婦

アクセス情報

  • 住所: 岐阜県高山市奥飛騨温泉郷福地温泉83
  • アクセス: JR高山駅より濃飛バス新穂高温泉行きで約70分、「福地温泉(下)」バス停下車、徒歩約3分
  • 送迎: なし

ふたりで紡ぐ、宿の記憶

雨上がりの朝、敷地内をふたりで散策する。
苔むした石畳、可憐に咲く山野草、そして澄み切った空気。
まるで、自分たちだけの森を探検しているようだ。
「見て、あそこに東屋があるわ」
妻が見つけたのは、森の中にひっそりと佇む小さな休憩所。
腰を下ろして、温かいお茶を飲む。
「まるで、昔話の世界に迷い込んだみたいだな」
夫の言葉に、妻は静かに頷いた。
チェックアウトは11時。まだ時間はたっぷりある。
急ぐ必要なんて、どこにもない。
鳥のさえずりに耳を澄ませ、木々の名前を当てっこしたりする。
この四千坪の森は、ふたりのために用意された、広大な庭のようだ。
何をするでもなく、ただ共に歩く。
その一歩一歩が、これからのふたりの道のりを、確かなものにしてくれる気がした。

穂高荘 山のホテル

~北欧リゾートの風格と圧巻の大露天風呂、アクティブなふたりの休日~

■おすすめポイント(穂高荘 山のホテル)

  • 300坪の広さを誇る、圧巻の混浴大露天風呂(湯浴み着着用)
  • 北欧の山岳リゾートを思わせる、風格と温かみのある館内
  • ケーブルカーで向かう露天風呂など、遊び心あふれる施設
  • 飛騨牛のすき焼き、しゃぶしゃぶ、ステーキから選べる多彩な夕食
  • チェックアウト11時設定で、朝食後もゆっくり温泉を楽しめる

新穂高温泉の雄大な自然の中に、まるでヨーロッパの山岳リゾートホテルのように佇むのが「穂高荘 山のホテル」です。重厚感のあるロッジ風の建物は、長年多くの旅人を迎え入れてきた歴史と風格を感じさせます。この宿の最大の魅力は、なんといってもそのスケールの大きな温泉施設。特に、300坪もの広さを誇る混浴大露天風呂は、他では味わえない圧倒的な開放感です。静かに過ごすだけでなく、少しアクティブに、エンターテイメント性のある滞在を楽しみたい。そんな好奇心旺盛な50代夫婦にぴったりの一軒です。

客室

客室は、落ち着いた雰囲気の和室や、機能的な洋室、そして専用の露天風呂が付いた特別室など、多彩なタイプが用意されています。露天風呂付き客室を選べば、プライベートな空間で新穂高の豊かな自然を眺めながら、心ゆくまで湯浴みを満喫できます。窓の外に広がる北アルプスの山々は、まるで一枚の絵画のよう。木の温もりを大切にした内装が、旅の疲れを優しく癒してくれます。

客室露天風呂の時間

客室のテラスに設えられた露天風呂は、陶器製や檜造りなど部屋によって趣が異なりますが、いずれも清潔で心地よい空間です。湯船に浸かると、新穂高の澄んだ空気が肌を撫で、目の前には雄大な山々の稜線が広がります。館内のダイナミックな大露天風呂とは対照的に、ここはふたりだけの静かな聖域。

「明日は、新穂高ロープウェイに乗ってみようか」「いいわね。頂上からの景色は素晴らしいんでしょうね」そんな風に、翌日の計画を語らいながら浸かる朝風呂は格別です。これから始まる一日への期待に胸を膨らませながら、贅沢な湯に体を委ねる。アクティブな旅の拠点として、これ以上ないほどの安らぎを与えてくれます。

共用風呂

この宿の温泉は、まさに一大アミューズメント。名物は、専用ケーブルカーで向かう混浴大露天風呂です。湯浴み着を着用して入るため、夫婦や家族で一緒に楽しめるのが嬉しいポイント。300坪という圧倒的な広さを誇る湯船は、もはやお風呂というより温泉のプール。豊かな自然に360度囲まれ、空の広さを感じながら手足を伸ばせば、日頃の悩みなどすべてがちっぽけに思えてきます。

もちろん、男女別の大浴場や露天風呂も完備されており、源泉かけ流しの豊富な湯量を誇ります。館内にいながらにして、まるで温泉テーマパークを巡るような、心躍る体験ができるでしょう。

食事

夕食は、飛騨牛を存分に味わえる会席料理。この宿のユニークな点は、メインの飛騨牛料理を「すき焼き」「しゃぶしゃぶ」「ステーキ」の3種類から、それぞれが好きなものを選べること。「私はさっぱりと、しゃぶしゃぶにしようかしら」「じゃあ俺は、がっつりステーキで」といったように、夫婦で違うものを選んでシェアするのも楽しい時間です。

朝食には、飛騨の郷土料理である朴葉味噌が登場し、朝からご飯が進みます。ボリューム、質ともに満足度の高い食事が、旅のエネルギーをしっかりとチャージしてくれます。

サービス

大露天風呂から上がり、湯上がり処で休憩していると、足湯があるのに気づいた。
「足湯があるぞ。少し入っていこうか」
「ええ、気持ちよさそう」
ふたり並んで足湯に浸かる。じんわりと足元から温まってくるのが心地よい。
ケーブルカーで移動したり、広大な露天風呂を探検したり。
童心に返って楽しんだ一日の疲れが、ゆっくりとほぐれていく。
「なんだか、冒険みたいで楽しかったな」
夫が笑いながら言う。
「本当ね。あなた、あんなにはしゃいで」
妻も楽しそうに笑い返す。
ただ温泉に入るだけではない。
そこには、ふたりで共有できる「体験」があった。

こんな50代夫婦におすすめ

  • 広々とした開放的な露天風呂で、スケールの大きな湯浴みを体験したい夫婦
  • 静かなだけでなく、ケーブルカーなど遊び心のある施設を楽しみたいアクティブな夫婦
  • 夕食で、それぞれが好きなスタイルの飛騨牛料理を選びたい夫婦

アクセス情報

  • 住所: 岐阜県高山市奥飛騨温泉郷神坂577-13
  • アクセス: JR高山駅より濃飛バス新穂高温泉行きで約95分、終点「新穂高ロープウェイ」下車、徒歩約1分
  • 送迎: なし

ふたりで紡ぐ、宿の記憶

専用ケーブルカーに乗り込み、ガタン、と小さな音を立てて動き出す。
眼下には、原生林の深い緑が広がっていく。
「すごいな、本当にケーブルカーでお風呂に行くんだな」
夫が、窓の外の景色に目を細める。
妻は、少しだけ高揚した表情で、その横顔を見つめていた。
目的地に着き、湯浴み着に着替えて大露天風呂へ足を踏み出すと、ふたりは思わず息をのんだ。
どこまでが湯船で、どこからが自然なのかわからないほどの、圧倒的な広さと開放感。
恐る恐る湯に足を入れると、柔らかなお湯が体を包んだ。
「広いな…泳げそうだ」
「ふふ、本当ね。あっちまで行ってみましょうか」
ふたりは手を取り合い、ゆっくりと湯の中を歩き始める。
それはまるで、温かい湖を散策しているかのようだった。
空と、山と、森と、温泉と、そして隣にいるパートナー。
世界のすべてに抱かれているような、大きな安心感に満たされる。
この広大な湯船の中で、ふたりの時間は、また新しく、そして深く、溶け合っていく。

まとめ|さあ、ふたりの時間を紡ぐ旅へ

奥飛騨温泉郷の懐深く、静かに佇む5軒の宿をご紹介しました。

  • 槍見の湯 槍見舘: 槍ヶ岳を望む野趣あふれる湯浴み
  • 匠の宿 深山桜庵: 飛騨の匠の技が光る、洗練された寛ぎの空間
  • 隠庵 ひだ路: 静寂に徹する、わずか12室の大人の隠れ家
  • いろりの宿 かつら木の郷: 囲炉裏を囲む、ふたりだけの集落時間
  • 穂高荘 山のホテル: 圧巻の大露天風呂で過ごす、アクティブな休日

どの宿も、ただ体を休めるだけの場所ではありません。そこには、ふたりの歴史を静かに振り返り、これからの未来を語り合うための、特別な時間が流れています。

子育てが終わり、人生の新しい章が始まる今だからこそ、必要な旅があります。それは、互いの労をねぎらい、感謝を伝え、そして「これからもよろしく」と、改めて手を取り合うための旅。

奥飛騨の澄んだ空気と、豊かな湯が、きっとふたりの背中を優しく押してくれるはずです。さあ、次はあなたが、ふたりだけの物語を紡ぐ番です。


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