なぜ、人生の節目に立つ夫婦は箱根温泉へ向かうのか
都心からわずか90分。
箱根の森に一歩足を踏み入れると、そこには日常の喧騒を忘れさせてくれる、深く、静かな時間が流れています。
子育てという大きな役目を終え、これからはふたりの時間を大切にしたいと願う50代の夫婦にとって、箱根は特別な場所です。ただ美しい景色が広がるだけではありません。四季折々の自然が織りなす繊細な表情、心を満たすアートとの出会い、そして体を芯から解きほぐす名湯。それらすべてが、ゆっくりと互いの心に寄り添い、言葉少なでも通じ合える、そんな豊かな対話を生み出してくれるのです。
これまで重ねてきた日々を慈しみ、これからの未来を語り合う。
そんな、人生の新たな章を開くための旅に、箱根以上にふさわしい舞台はありません。この記事では、ただ宿泊するだけではない、「夫婦の時間を深く紡ぎ直す」ための、露天風呂付き客室を備えた特別な5軒の宿をご紹介します。
箱根吟遊
~渓谷の風とひとつになる、天空の湯宿~
■おすすめポイント(箱根吟遊)
- 全客室に、渓谷を見下ろすインフィニティ温泉露天風呂を完備
- 圧倒的なプライベート感と、アジアンモダンな唯一無二のデザイン
- 予約が最も取りにくい宿の一つとして知られる、その至高の体験
- 四季折々の自然と一体になれる、開放感あふれるロビーラウンジ
- 五感を呼び覚ます、月替わりの繊細な懐石料理
箱根の深い渓谷に溶け込むように佇む「箱根吟遊」。そのコンセプトは「風とひとつになる」。館内のどこにいても、眼下に広がる渓谷の壮大な景色と、吹き抜ける風の心地よさを感じることができます。日常から完全に解き放たれ、ただ自然の流れに身を任せる。そんな贅沢な時間を約束してくれる、まさに大人のためのサンクチュアリです。
客室
全20室の客室は、それぞれが渓谷に面したテラスと露天風呂を持つスイート仕様。和の様式美にバリの様式を取り入れた独創的な空間は、落ち着きと非日常感を同時に満たしてくれます。室内にいながらにして、まるで森のなかにいるかのような錯覚を覚えるほどの開放感が魅力です。
客室露天風呂の時間
一枚の絵画のように切り取られた渓谷の絶景が、湯船の向こうに広がります。
遮るものは何もなく、聞こえるのは鳥のさえずりと早川のせせらぎだけ。湯船に体を沈めれば、まるで空中に浮かんでいるかのような不思議な浮遊感に包まれます。
朝は、朝霧が立ち込める幻想的な風景の中で目覚めの湯を。昼は、木々の間から差し込む陽光を浴びながら。そして夜は、満天の星の下、静寂に包まれて。時間とともに刻々と表情を変える自然と一体になる感覚は、ここでしか味わうことのできない感動です。この湯船で交わす言葉は、きっといつもより素直で、温かいものになるでしょう。
共用風呂
最上階に位置するスパ「Ginyu Spa」には、渓谷を一望できる二つの大浴場「月音」「月代」があります。客室露天風呂とはまた違う、ダイナミックなパノラマビューが広がり、圧倒的な開放感を味わえます。湯上がりには、アジアンテイストのラウンジでハーブティーをいただきながら、火照った体をゆっくりとクールダウン。夫婦で待ち合わせ、暮れゆく渓谷を眺める時間もまた、格別です。
食事
夕食は、相模湾で獲れた新鮮な魚介や、箱根西麓野菜など、地元の旬の食材をふんだんに使った月替わりの本格懐石料理。一品一品、器にもこだわり抜かれ、まるで芸術品のような美しい料理が、五感を満たしていきます。朝食は、炊き立てのご飯に、数十種類もの小鉢が並ぶ、目にも鮮やかな和食膳。体に優しい滋味深い味わいが、ゆっくりと体を目覚めさせてくれます。
サービス
テラスに置かれたデイベッドに寝転び、夫がそっとブランケットをかけてくれる。
ラウンジのフリードリンクコーナーで、妻はハーブティーを、夫はエスプレッソを手に取り、無言で窓の外を眺める。
言葉はなくても、同じ景色を見て、同じ空気を感じている。
「何もしない贅沢って、こういうことなんだな」
夫の呟きに、妻は静かに頷いた。
ここでは、過剰なサービスはない。
ただ、ふたりがふたりらしくいられるための、最高の舞台が用意されているだけだ。
こんな50代夫婦におすすめ
- 誰にも邪魔されない、究極のプライベート空間で過ごしたい夫婦
- 圧倒的な絶景と自然との一体感を求める夫婦
- 記念日など、人生の節目を祝う特別な旅を計画している夫婦
アクセス情報
- 住所: 神奈川県足柄下郡箱根町宮ノ下100-1
- アクセス: 箱根登山鉄道「宮ノ下駅」より徒歩約2分
- 送迎: なし
ふたりで紡ぐ、宿の記憶
夜の帳が下りたテラスの露天風呂。
夫がそっと湯船から上がり、冷蔵庫から冷えた日本酒を取り出す。
お猪口を二つ、湯の縁に置いた。
「星が、近いな」
見上げると、手が届きそうなほどの星空が広がっている。
「昔、子供たちが小さい頃、みんなで星を見に行ったわね」
妻が懐かしそうに呟く。
「ああ。あいつら、寒さも忘れてはしゃいでたな」
子育てに追われ、がむしゃらに走り抜けてきた日々。
気づけば、ふたりきりでこんなに静かな夜を過ごすのは、何年ぶりだろう。
渓谷を渡る夜風が、心地よく肌を撫でる。
「ありがとう」
妻の小さな声に、夫は黙って酒を注いだ。
何に対しての感謝なのか、聞くまでもない。
ただ、こうして隣にいられること。
その温かさが、湯の温もりと共に、じんわりと心に沁みていく。
強羅花壇
~旧宮家の気品を受け継ぐ、伝統と革新の宿~
■おすすめポイント(強羅花壇)
- 旧宮家の別邸跡地という、由緒あるロケーション
- 伝統的な和の様式美と、モダンで機能的なデザインの見事な融合
- 敷地内から湧き出る3本の自家源泉を愉しめる、多彩な温泉施設
- 本格的な懐石料理に加え、鉄板焼きも選べる食の選択肢
- 格式高い宿ならではの、きめ細やかで心に寄り添うおもてなし
強羅の地に佇む「強羅花壇」は、ただの高級旅館ではありません。その歴史は、閑院宮載仁親王の別邸跡地という由緒あるもの。一歩足を踏み入れれば、そこには長きにわたり受け継がれてきた気品と、現代の快適さを追求した洗練が共存する、唯一無二の世界が広がっています。本物を知る大人が心から寛げる、まさに日本の美意識が凝縮された宿です。
客室
貴賓室をはじめとする露天風呂付きの客室は、広々とした空間に上質な調度品が配され、心からの安らぎを約束します。窓の外には手入れの行き届いた美しい庭園が広がり、四季折々の自然の美しさを室内にいながらにして感じることができます。伝統的な数奇屋造りの離れから、モダンな洋室まで、多彩な客室タイプが揃うのも魅力です。
客室露天風呂の時間
御影石や檜で造られた客室の露天風呂は、まさにプライベートな癒しの空間です。
庭の木々を揺らす風の音を聞きながら、誰にも気兼ねすることなく、名湯に身を委ねる。その時間は、日常の疲れや緊張を、静かに溶かしてくれます。
湯船に浸かりながら、ふと夫が庭の苔の美しさについて語り始める。妻はただ相槌を打ちながら、彼の横顔を眺める。普段は仕事の話ばかりの彼が、こんなにも穏やかな表情で自然を愛でている。その発見が、妻の心を温かくする。湯上がりには、バスローブを羽織ってテラスの椅子に腰かけ、冷たい水を一杯。そんな何気ないひとときが、夫婦にとってかけがえのない宝物になるのです。
共用風呂
敷地内から湧き出る3本の自家源泉を愉しめるのが、強羅花壇の大きな魅力です。広々とした大浴場はもちろん、野趣あふれる庭園露天風呂、そして家族風呂(貸切風呂)も完備。特に、シンボルともいえるアーチ型の柱が美しい屋内プール(温泉利用)は、リゾート感も満点です。館内を散策しながら湯めぐりをするのも、この宿ならではの楽しみ方。夫婦で浴衣姿のまま、長い廊下を歩くだけで、心が弾みます。
食事
夕食は、旬の素材を活かした本格的な懐石料理を部屋食でゆっくりといただくか、旧宮家の食堂を改装したレストランでの鉄板焼きを選ぶことができます。料理長の技と感性が光る料理は、一皿一皿が感動の連続。特に、厳選された和牛を目の前で焼き上げる鉄板焼きは、ライブ感も相まって特別なディナーを演出してくれます。記念日の旅行であれば、ぜひ味わっていただきたい美食体験です。
サービス
夕食後、ラウンジで庭園のライトアップを眺めていると、スタッフがそっと声をかけてきた。
「よろしければ、あちらのサロンで蓄音機のレコードをお聴きになりませんか」
案内された部屋には、アンティークな蓄音機が置かれている。
夫がリクエストしたのは、グレン・ミラーの『ムーンライト・セレナーデ』。
少し掠れた、温かい音色が空間を満たす。
「昔、ダンスホールでこの曲を…」
妻が言いかけて、恥ずかしそうに口をつぐむ。
夫は何も言わず、そっと妻の手を取った。
言葉にしなくても、思い出は音楽と共に鮮やかに蘇る。
ここは、夫婦の記憶の扉を、優しく開けてくれる場所だ。
こんな50代夫婦におすすめ
- 歴史と伝統に裏打ちされた、本物の格式を求める夫婦
- 多彩な温泉施設で、館内での湯めぐりを楽しみたい夫婦
- 結婚記念日など、アニバーサリーを祝う旅に上質さを求める夫婦
アクセス情報
- 住所: 神奈川県足柄下郡箱根町強羅1300
- アクセス: 箱根登山鉄道「強羅駅」より徒歩約3分
- 送迎: 強羅駅より送迎あり
ふたりで紡ぐ、宿の記憶
朝。
障子を開けると、朝日に照らされた庭園の緑が目に飛び込んできた。
部屋でいただく朝食は、丁寧に作られた和食膳。
だし巻き卵の優しい甘さが、体に染み渡る。
「美味しいな」
夫がぽつりと言った。
結婚して30年、彼が朝食を褒めるのは珍しい。
食後、夫が珍しく庭を散策しようと誘ってきた。
手入れの行き届いた庭を、ゆっくりと歩く。
苔むした岩、静かに水を湛える池、風にそよぐ紅葉。
「宮様も、この景色を眺めていたんだろうな」
夫の言葉に、妻は歴史の重みに思いを馳せる。
何十年、何百年と変わらないものが、ここにはある。
私たちの人生も、そうありたい。
ふと、夫が立ち止まり、妻の肩を抱いた。
「これからも、よろしくな」
照れくさそうに、けれど真っ直ぐな瞳で言う。
妻は何も言えず、ただこっくりと頷いた。
強羅花壇の澄んだ空気が、ふたりの新たな誓いを祝福しているようだった。
金乃竹 塔ノ澤
~かぐや姫の物語に誘われる、幻想的な水上の宿~
■おすすめポイント(金乃竹 塔ノ澤)
- 全客室に源泉掛け流しの露天風呂を完備した、究極のプライベート空間
- 「かぐや姫」をモチーフにした、幻想的で物語性あふれるデザイン
- 水盤と竹林が織りなす、非日常的で美しいランドスケープ
- 遊び心あふれる、京懐石をベースにした創作和食
- チェックアウトが11時と、朝の時間をゆっくり過ごせる配慮
箱根の玄関口、塔ノ澤の森閑な渓谷に佇む「金乃竹 塔ノ澤」。そのコンセプトは、誰もが知る「竹取物語」。館内に一歩足を踏み入れると、目の前に広がる水盤と、天に伸びる竹林が織りなす幻想的な光景に息を呑みます。日常から物語の世界へと誘われるような、ドラマティックな滞在がここから始まります。全室露天風呂付きというプライベート感を重視した造りは、夫婦だけの時間を心ゆくまで楽しみたいと願う二人に最適です。
客室
客室は全室スイート仕様で、それぞれに趣の異なる露天風呂が備えられています。部屋の名前も「帝」「姫」「天」など、物語にちなんだものが付けられ、滞在への期待感を高めます。モダンで洗練されたインテリアの中に、和の要素が巧みに取り入れられ、落ち着きと高揚感が同居する独特の空間を創り出しています。
客室露天風呂の時間
客室の露天風呂は、まさにこの宿の真骨頂です。
竹林を望む露天風呂、渓谷のせせらぎを聞く露天風呂。そのすべてが源泉掛け流しという贅沢さ。夜にはライトアップされた竹林が水面に揺らめき、幻想的な雰囲気に包まれます。
湯船に体を沈め、見上げる空には月。まるで物語のかぐや姫になったかのような気分に浸れます。隣にいる夫が、そっと手を握る。言葉はいらない。ただ、この静かで美しい時間を共有できることが、何よりの幸せだと感じる。日々の喧騒の中で忘れていた、ロマンティックな感情が、この湯船でゆっくりと蘇ってくるようです。
共用風呂
こちらの宿には、大浴場などの共用風呂は用意されていません。
それは、全客室に備えられた専用の露天風呂で、誰にも気兼ねすることなく、ふたりの時間を心ゆくまで楽しんでほしいという、宿の哲学の表れです。チェックインからチェックアウトまで、完全にプライベートな空間で過ごせる贅沢を、存分に味わうことができます。
食事
夕食は、京都の料亭で腕を磨いた料理長が手がける、遊び心あふれる京懐石。地元の旬の食材をふんだんに使いながらも、伝統にとらわれない自由な発想で創り上げられた料理は、目と舌を楽しませてくれます。一品ごとに物語を感じさせるような美しい盛り付けも魅力。食事の時間が、まるでエンターテイメントのように感じられるでしょう。
サービス
食事が終わり、部屋に戻ると、テーブルの上に小さな竹筒が置かれていた。
中には、手書きのメッセージカードと、夜食のおにぎり。
「『夜、小腹が空きましたら…』だって」
妻がくすくすと笑う。
夫は「気が利いてるじゃないか」と、嬉しそうに一つ手に取った。
ふと、部屋の隅に置かれたアロマポットに気づく。
数種類のアロマオイルの中から、妻は檜の香りを選んだ。
部屋に満ちる、清々しい木の香り。
「なんだか、心が洗われるようだ」
夫の言葉に、妻は静かに微笑んだ。
ここでは、声高なサービスはない。
だが、そっと置かれた竹筒や、さりげない香りのように、ゲストの心に寄り添う温かいおもてなしが、随所に隠されている。
こんな50代夫婦におすすめ
- 日常を忘れさせてくれる、物語性のある非日常空間を求める夫婦
- モダンでデザイン性の高い宿を好む夫婦
- 誰にも邪魔されず、二人きりの時間をロマンティックに過ごしたい夫婦
アクセス情報
- 住所: 神奈川県足柄下郡箱根町塔之澤191
- アクセス: 箱根登山鉄道「塔ノ澤駅」より徒歩約5分
- 送迎: なし(箱根湯本駅よりタクシーで約5分)
ふたりで紡ぐ、宿の記憶
夜更け。
露天風呂から上がり、テラスのチェアに並んで腰掛ける。
ライトアップされた竹林が、まるで異世界への入り口のように見える。
「綺麗ね…」
妻の呟きに、夫は静かに頷いた。
「かぐや姫は、月に帰りたかったのかな」
夫が唐突に言った。
「さあ…どうでしょう。でも、地上で過ごした時間も、きっと宝物だったと思うわ」
妻は、自分たちの人生を重ねるように答える。
楽しいことばかりではなかった。辛いことも、苦しいこともあった。
けれど、すべてが今の自分たちを形作っている、かけがえのない時間。
「俺にとっては、お前が姫だよ」
冗談めかした夫の言葉に、妻は思わず噴き出した。
「何を今さら」
そう言いながらも、その言葉が嬉しくて、頬が熱くなるのを感じる。
水面に映る月が、幸せそうに笑うふたりを、静かに見守っていた。
箱根・翠松園
~文化財とモダンが融合する、森のラグジュアリーリゾート~
■おすすめポイント(箱根・翠松園)
- 国の登録有形文化財「三井翠松園」を敷地内に受け継ぐ、唯一無二のロケーション
- 全室スイート仕様、自家源泉かけ流しの露天風呂を完備
- きめ細やかなサービスを提供する、専任のバトラー制度
- ライブ感あふれる鉄板焼きか、繊細な日本料理かを選べるダイニング
- 緑豊かな3,000坪の敷地がもたらす、深い静寂とプライベート感
かつて三井家の別荘として知られた名建築「翠松園」。その歴史と文化を受け継ぎながら、現代のラグジュアリーと融合させたのが「箱根・翠松園」です。3,000坪もの広大な敷地に、客室はわずか23室。そのすべてが露天風呂付きのスイートルームという贅沢な造りです。一歩足を踏み入れれば、森の深い静寂と、専任バトラーによるパーソナルなおもてなしが、夫婦を日常から優しく解き放ってくれます。
客室
全23室の客室は、それぞれが異なる間取りとインテリアを持つ、個性豊かなスイートルーム。ミニマルで洗練されたデザインの中に、木の温もりが感じられる空間は、心からリラックスするのに最適です。すべての客室に自家源泉かけ流しの露天風呂が備えられており、好きな時間に好きなだけ、名湯を独り占めできます。
客室露天風呂の時間
木々の緑に囲まれた客室露天風呂は、まるで森の中に浮かぶプライベートな湯船のよう。
小涌谷温泉から引かれた自家源泉は、肌に優しい弱アルカリ性。湯船に体を沈めれば、とろりとした湯が全身を優しく包み込み、日頃の疲れを芯から癒してくれます。
朝、鳥のさえずりを聞きながら湯に浸かる。夜、ライトアップされた木々を眺めながら、ゆっくりと語らう。そんな、誰にも邪魔されない時間が、ここには流れています。湯船の縁に腰かけ、夫がそっと妻の肩にかけるお湯の温かさ。言葉にしなくても伝わる思いやりが、夫婦の絆をより一層深くしてくれる。そんな優しい時間が、翠松園の露天風呂にはあります。
共用風呂
森の静寂に包まれた大浴場「森の湯」は、ガラス張りの大きな窓から光が差し込む、開放的な空間です。内湯と露天風呂、そしてドライサウナも完備されており、客室のお風呂とはまた違った趣で温泉を楽しめます。湯上がりには、リラクゼーションルームで寛いだり、敷地内を散策したり。歴史ある庭園を夫婦でゆっくりと歩く時間は、心に残る思い出となるでしょう。
食事
食事は、国の登録有形文化財である「料亭 紅葉」でいただきます。ダイニングは、シェフの技を目の前で楽しめる鉄板焼きカウンターと、四季の移ろいを感じながら繊細な日本料理を味わえる割烹に分かれており、好みに合わせて選ぶことができます。大正時代の趣を残す歴史的な空間でいただく、現代の感性が光る美食。そのギャップが、忘れられない食体験を演出します。
サービス
チェックインを済ませると、専任のバトラーが部屋まで案内してくれる。
荷物を解きながら、夫が明日の観光について尋ねた。
「この辺りで、静かに過ごせる美術館はありませんか」
バトラーはにこやかに、いくつかの候補とその特徴、混雑状況までを丁寧に説明してくれる。
「でしたら、明日の朝、タクシーのお手配と入館チケットのご用意をしておきましょうか」
そのスムーズで心強い提案に、夫は感心したように頷いた。
夕食後、部屋に戻ると、ターンダウンが済まされ、ベッドサイドにはチョコレートがひと粒。
さりげないけれど、心に沁みるおもてなし。
ここでは、自分たちが特別な存在なのだと感じさせてくれる、魔法のような時間が流れている。
こんな50代夫婦におすすめ
- パーソナルで質の高いサービスを求める夫婦
- 歴史ある建築とモダンな快適さの両方を堪能したい夫婦
- 静かな環境で、誰にも邪魔されずに心からリラックスしたい夫婦
アクセス情報
- 住所: 神奈川県足柄下郡箱根町小涌谷519
- アクセス: 箱根登山鉄道「小涌谷駅」より徒歩15分
- 送迎: 小涌谷駅より送迎あり
ふたりで紡ぐ、宿の記憶
朝食後、歴史ある庭園を散策する。
樹齢300年を超えるという紅葉の古木が、静かに二人を見下ろしている。
「この木は、ずっとここにあったんだな」
夫が、木の幹にそっと手を触れながら言った。
「ええ。色々な時代を見てきたんでしょうね」
妻は、自分たちが今ここにいる不思議さに思いを馳せる。
三井家の華やかな時代、そして今、自分たちがこうして穏やかな時間を過ごしていること。
時の流れは、すべてを飲み込み、そして新しい価値を生み出していく。
「僕たちも、この木みたいに、どっしりと根を張っていきたいな」
夫の言葉は、これからの人生に向けた決意のように聞こえた。
妻は何も言わず、彼の腕にそっと自分の腕を絡める。
大丈夫、私たちはこれからも二人で歩いていける。
翠松園の木々が、風にそよぎながら、まるでそう囁いているようだった。
ハイアット リージェンシー 箱根 リゾート&スパ
~洗練されたサービスと快適さが織りなす、大人のリゾートステイ~
■おすすめポイント(ハイアット リージェンシー 箱根 リゾート&スパ)
- 世界的なホテルブランドならではの、洗練された安定のサービス
- 暖炉を囲むラウンジでの、フリードリンクサービス「アペリティフアワー」
- 広々とした客室と、バルコニーまたはサンテラスからの眺望
- 本格的なスパ「Spa IZUMI」での、極上の癒やし体験
- 愛犬と一緒に宿泊できる「ドッグフレンドリールーム」も完備
豊かな自然に囲まれた強羅に位置する「ハイアット リージェンシー 箱根 リゾート&スパ」。ここは、伝統的な温泉旅館とは一味違う、国際的なラグジュアリーホテルならではの快適さと洗練されたおもてなしを体験できる場所です。温泉はもちろん、スパや美食、そして温かいサービスが、心身ともに満たされる上質な休日を約束します。機能的でストレスフリーな滞在を好む夫婦に最適な、大人のためのリゾートホテルです。
客室
客室は全室56㎡以上というゆとりある広さ。大きな窓の外にはバルコニーまたはサンテラスが設けられ、箱根の美しい自然を身近に感じることができます。モダンで落ち着いたインテリアで統一された空間は、まるで我が家のように寛げます。一部の客室は温泉風呂付きとなっており、プライベートな空間で湯浴みを満喫することも可能です。
客室露天風呂の時間
温泉付きの客室では、広々としたバスルームで大涌谷から引いた名湯を心ゆくまで楽しめます。
最新の設備が整った快適な空間で、窓を開ければ高原の爽やかな風が吹き込んできます。旅館の露天風呂とはまた違う、ホテルのプライベートバスならではの機能美と快適さがあります。
バスローブを羽織り、バルコニーのチェアで湯涼み。眼下に広がる箱根の緑を眺めながら、グラスを傾ける。そんな過ごし方が似合うのも、このホテルならでは。日常の延長線上にあるような心地よさと、非日常のリゾート感が絶妙に融合し、気負わない大人の休日を演出してくれます。
共用風呂
ホテル自慢の大浴場は、広々とした空間に大きな窓が配され、まるで森の中で湯浴みをしているかのような開放感が魅力です。泉質は、箱根十七湯のひとつ、大涌谷温泉から引いたカルシウム・マグネシウム-硫酸塩・塩化物泉。体の芯から温まり、日頃の疲れを癒してくれます。併設された本格的なスパ「Spa IZUMI」で、夫婦一緒にトリートメントを受けるのもおすすめです。
食事
メインダイニング「ダイニングルーム – ウェスタンキュイジーヌ」では、オープンキッチンから生み出される、地元の食材を活かしたグリル料理などを楽しめます。また、「ダイニングルーム -鮨-」では、相模湾や駿河湾で獲れた新鮮な魚介を使った本格的な江戸前鮨を堪能できます。その日の気分で洋食と和食を選べるのも、ホテルならではの魅力です。
サービス
夕刻、ロビーフロアにある「リビングルーム」へ。
中央の大きな暖炉に火が灯ると、宿泊客が自然と集まってくる。
ここは、夕方の決まった時間にフリードリンクが提供される「アペリティフアワー」。
夫はスパークリングワイン、妻はノンアルコールカクテルを手に、ソファに深く腰掛ける。
パチパチと薪がはぜる音を聞きながら、暖炉の炎を眺める。
隣の席からは、楽しそうな外国語の会話が聞こえてくる。
「なんだか、海外のリゾートに来たみたいだな」
夫の言葉に、妻は微笑んで頷いた。
ここでは誰もが思い思いに、寛いだ時間を過ごしている。
その自由で心地よい空気が、二人の心も解きほぐしていく。
こんな50代夫婦におすすめ
- 旅館の作法に縛られず、自由で快適な滞在をしたい夫婦
- 洗練されたホスピタリティと安定したサービスを重視する夫婦
- 温泉だけでなく、本格的なスパや美食も楽しみたい夫婦
アクセス情報
- 住所: 神奈川県足柄下郡箱根町強羅1320
- アクセス: 箱根登山鉄道「強羅駅」よりタクシーで約5分
- 送迎: 小田原駅、強羅駅より定刻送迎シャトルバスあり(予約不要)
ふたりで紡ぐ、宿の記憶
暖炉の前でグラスを傾けた後、二人は少しだけホテルの中を散策することにした。
静かな廊下を歩き、窓から夜の庭を眺める。
「昔、初めての海外旅行、緊張したよな」
夫が懐かしそうに言った。
慣れない言葉、違う文化。何もかもが新鮮で、少しだけ不安だったあの旅。
「あなた、道を間違えてばかりだったわね」
妻が笑うと、夫も「そうだったかな」と照れ笑いを浮かべる。
あの頃から、ずいぶん遠くまで来た。
色々な国を旅し、色々な景色を見てきた。
そして今、日本の、この箱根のホテルで、あの頃を懐かしく思い出している。
「でも、一番落ち着くのは、やっぱり君の隣だな」
夫の言葉は、暖炉の炎のように、じんわりと妻の心を温めた。
このホテルがくれるのは、新しい刺激だけではない。
これまで二人で歩んできた道のりを、改めて愛おしく思わせてくれる、そんな優しい時間だった。
まとめ|さあ、ふたりの時間を紡ぐ旅へ
ご紹介した5軒の宿は、いずれも単なる宿泊施設ではありません。それは、夫婦という長い物語の、新たなページをめくるための美しい舞台です。
- 箱根吟遊:渓谷の絶景と一体になる、天空のサンクチュアリ
- 強羅花壇:旧宮家の気品に触れる、伝統と格式の宿
- 金乃竹 塔ノ澤:物語の世界に迷い込む、幻想的な水上の隠れ家
- 箱根・翠松園:森の静寂に抱かれる、文化と歴史が薫るリゾート
- ハイアット リージェンシー 箱根 リゾート&スパ:洗練された快適さが約束された、大人のためのリゾート
子育てが終わり、ふと隣を見ると、少しだけ髪に白いものが増えたパートナーがいる。がむしゃらに走ってきた日々に、知らず知らずのうちに置いてきてしまった言葉や時間があるかもしれません。
今度の週末、ただ過ぎ去る時間を、忘れられない記憶に変えにいきませんか。
箱根の湯は、きっと二人の心を優しく解きほぐし、素直な言葉を運んできてくれるはずです。さあ、ふたりの時間を紡ぐ旅へ。