なぜ、人生の節目に立つ夫婦は東山温泉へ向かうのか
千四百年以上の歴史を刻む、会津の奥座敷・東山温泉。湯川の清流に沿って続く温泉街は、どこか懐かしく、穏やかな空気に満ちています。新選組の土方歳三が傷を癒し、歌人・与謝野晶子や画家・竹久夢二もこの地を愛しました。
ただ華やかなだけではない、歴史の深みと落ち着いた情緒が漂うこの場所は、人生の新しい章を迎えた50代の夫婦にこそ、ふさわしい舞台なのかもしれません。
子育てという大きな役割を終え、ふと隣にいるパートナーの顔を見る。共に歩んだ長い道のりを振り返り、そして、これから先の未来を語り合う。そんな静かで、けれど何よりも贅沢な時間を求めて、多くの夫婦がこの地を訪れます。誰にも邪魔されない客室露天風呂の湯けむりの中で、ふたりの物語は、また新しいページをめくり始めるのです。
庄助の宿 瀧の湯
~渓流の瀬音を聴き、時の流れに心を澄ます~
■おすすめポイント(庄助の宿 瀧の湯)
- 目の前に迫る「伏見ヶ滝」の絶景と水音に包まれる圧巻のロケーション
- 会津藩主・松平家ゆかりの歴史ある湯処「十六万石」
- 伝統的な能舞台でのイベントなど、文化的な体験も楽しめる
- 地産地消にこだわった、会津の旬を味わう料理の数々
- 歴史とモダンが融合した、趣の異なる多彩な客室
滝の音しか聞こえない。そんな静寂が、ここにはあります。創業140年を超える老舗旅館は、ただ古いだけではありません。受け継がれてきた歴史の重みと、現代の旅人が求める快適さが見事に調和し、訪れる者を温かく迎え入れてくれます。渓流沿いに佇むこの宿は、自然との対話を何よりも大切にしています。
客室
「はなれ 松島閣」や「はなれ 瀧美亭」には、渓流に面した専用の露天風呂が付いています。伝統的な和の設えの中に、シモンズ製のベッドが配されるなど、心地よい眠りへの配慮も万全。窓の外に広がるのは、手を伸ばせば届きそうなほどの緑と、雄大な滝の姿です。
客室露天風呂の時間
湯船の縁に手をかけると、すぐそこを流れる湯川の力強い水音が、全身を包み込みます。見上げれば木々の緑が目に優しく、風が葉を揺らす音と、滝が水面に落ちる音だけが響く。人工の音が何一つない空間です。
陶器でできた湯船に身を沈めれば、日々の喧騒など遠い昔のことのよう。二人、言葉もなく、ただ流れゆく水の音に耳を澄ませる。それは、忘れていた感覚を取り戻すための、聖なる儀式にも似た時間。湯けむりの向こうに、パートナーの穏やかな横顔が見える。それだけで、心が満たされていくのを感じます。
共用風呂
この宿の真髄は、何といっても共用風呂にあります。特に、会津藩主の別荘だった歴史を持つ「十六万石」は、まるでタイムスリップしたかのような荘厳な雰囲気。窓の外には雄大な滝が迫り、まるで自然と一体になるかのような湯浴みが楽しめます。
また、渓流沿いに設けられた「きき湯」では、異なる泉質の湯を巡ることができ、温泉そのものの力をじっくりと体感できます。湯上がりには、歴史を感じる館内をそぞろ歩きするのも一興。夫婦で浴衣姿のまま、かつての藩主に思いを馳せる散策もまた、この宿ならではの楽しみ方です。
食事
お品書きは、会津の物語そのもの。「会津伝統野菜」や福島のブランド牛など、料理長自らが足を運んで見極めた食材が、熟練の技で一皿一皿に昇華されます。見た目の美しさはもちろん、口に運んだ瞬間に広がる滋味深い味わいは、この土地の豊かさを雄弁に物語ります。
器の一つひとつにもこだわりが感じられ、目と舌で、存分に会津の食文化を堪能できる。派手さはないけれど、心にじんわりと染み渡るような、温かいおもてなしがそこにはあります。
サービス
ラウンジの窓から、ライトアップされた能舞台が見える。
グラスを傾けていた夫が、静かに言った。
「昔、君と芝居を見に行ったのを思い出すな」
「ええ、ありましたね。あの頃はいつも忙しなくて」
妻は微笑みながら、彼のグラスに視線を落とす。
舞台の上では何も演じられていない。
けれど、ふたりの心の中では、たくさんの思い出が蘇っては消えていく。
ただそれだけの時間が、今は何よりも愛おしい。
こんな50代夫婦におすすめ
- 都会の喧騒を離れ、自然の音だけに包まれて過ごしたい夫婦
- 歴史や文化に触れる、知的な旅を好む夫婦
- 派手さよりも、本質的な豊かさや落ち着きを求める夫婦
アクセス情報
- 住所: 〒965-0814 福島県会津若松市東山町湯本字瀧の湯108
- アクセス: JR磐越西線「会津若松駅」より車で約15分
- 送迎: あり(定時運行・要予約)
ふたりで紡ぐ、宿の記憶
客室露天風呂から見える伏見ヶ滝は、夜になると静かにライトアップされる。
湯船に体を沈め、夫がぽつりと呟いた。
「すごい音だな。ずっと聴いていられる」
妻は黙って頷き、その音に耳を澄ませる。
絶え間なく流れ落ちる水の音。
それは時に激しく、時に優しく、ふたりの間に流れた時間と重なるようだった。
「私たちの時間も、この滝みたいだったかな」
夫の言葉に、妻は静かに微笑む。
「いいえ。私たちの時間は、もっと穏やかでしたよ」
「そうか…そうだな」
夫は少し照れたように笑い、夜空を見上げた。
湯けむりの向こうで、星がひとつ、強く輝いている。
言葉にしなくても伝わる想いが、渓流の瀬音と共に、ふたりの心をそっと満たしていく。
くつろぎ宿 千代滝
~城下町の灯りを望む、会津モダンな時間~
■おすすめポイント(くつろぎ宿 千代滝)
- 高台から会津若松の城下町を一望できる絶景のロケーション
- 最上階の展望露天風呂から望む、幻想的な夜景
- 地元の郷土料理を現代風にアレンジした「会津料理ビュッフェ」
- 読書や会話を楽しめる、居心地の良いライブラリーラウンジ
- 和の伝統と現代的な快適さが融合したスタイリッシュな客室
歴史ある温泉街で、ひときわモダンな存在感を放つのが「くつろぎ宿 千代滝」です。高台に位置するこの宿の魅力は、何といってもその眺望。窓の外に広がるのは、まるで宝石箱をひっくり返したような会津若松の夜景。伝統と現代性が心地よく融合した空間で、新しい会津の魅力に出会えます。
客室
露天風呂付きの客室は、プライベートな空間で絶景を独り占めできる贅沢な設え。落ち着いた色調でまとめられた和モダンの室内は、心からリラックスできる雰囲気です。大きな窓から城下町の景色を眺めながら、ゆったりと流れる時間に身を委ねることができます。
客室露天風呂の時間
眼下に広がるのは、会津若松の街の灯り。遠くには会津盆地の雄大な輪郭が浮かび上がります。信楽焼の湯船に身を沈めれば、まるで空に浮かんでいるかのような錯覚に陥るほど。
優しいお湯が体を温め、涼やかな夜風が頬を撫でる。ふたり、グラスを片手に「きれいだね」とどちらからともなく呟く。日常の会話とは少し違う、旅先だからこそ生まれる素直な言葉。きらめく夜景が、ふたりのこれからの道を照らしてくれるかのように、静かに、そして美しく輝いています。
共用風呂
この宿を訪れたなら、最上階にある展望露天風呂「遊月の湯」へぜひ足を運んでください。ガラス張りの窓の向こうには、遮るもののないパノラマが広がります。昼間は雄大な会津盆地を、夜は満天の星と城下町の夜景を望む湯浴みは、まさに絶景の一言。
洗い場が畳敷きになっているという珍しい設えも、心遣いを感じさせます。姉妹館である「新滝」の湯めぐりも可能なので、趣の異なる温泉を散策気分で楽しむのもおすすめです。
食事
夕食は、会津の郷土料理をベースに、現代的な感性を加えた「会津料理ビュッフェ」。オープンキッチンから提供されるできたての料理は、どれも目移りするものばかり。こづゆ、にしんの山椒漬けといった伝統的な味から、創作料理まで、会津の食の豊かさを存分に楽しめます。
一品一品丁寧に作られた料理を、自分のペースで好きなだけ味わえるスタイルは、気兼ねなく食事を楽しみたい夫婦にとって、嬉しいおもてなしです。
サービス
ライブラリーラウンジのソファに、ふたり並んで腰掛ける。
夫は会津の歴史に関する本を、妻はデザインに関する雑誌を手に取った。
会話はない。
ただ、ページをめくる音と、静かに流れる音楽だけが空間を満たす。
ふと、夫が顔を上げた。
「この宿、落ち着くな」
「ええ、本当に」
妻は雑誌から目を離さずに答える。
それぞれが違うことをしていても、同じ空間と時間を共有している安心感。
それは、長い年月を共に過ごしてきた夫婦だからこそ感じられる、無言の心地よさだった。
こんな50代夫婦におすすめ
- 美しい夜景や眺望を眺めながら、ロマンチックな時間を過ごしたい夫婦
- 伝統的な旅館の良さと、ホテルのような快適さの両方を求める夫婦
- 郷土色豊かな料理を、ビュッフェスタイルで気軽に楽しみたい夫婦
アクセス情報
- 住所: 〒965-0814 福島県会津若松市東山町湯本字寺屋敷43
- アクセス: JR磐越西線「会津若松駅」より車で約15分
- 送迎: あり(定時運行・要予約)
ふたりで紡ぐ、宿の記憶
客室の窓一面に、会津若松の夜景が広がっている。
「まるで宝石箱みたいね」
妻が感嘆の声を漏らした。
夫は何も言わず、ただその隣で同じ景色を見つめている。
ひとつひとつの灯りの下に、それぞれの暮らしがある。
自分たちが懸命に守り、育ててきた家庭という灯りも、かつてはこの景色の中にあったのかもしれない。
「私たちも、長いこと走ってきたな」
夫の言葉に、妻はそっと彼の肩に寄り添った。
「ええ。でも、これからは少しゆっくり歩きましょう」
「そうだな」
これからの人生という道が、この夜景のように輝かしいものでありますように。
ふたりは言葉もなく、ただ静かに祈る。
窓の外で、街の灯りが優しく瞬いていた。
御宿 東鳳
~宙に浮かぶ露天風呂で、心と体を解き放つ~
■おすすめポイント(御宿 東鳳)
- まるで空に浮かんでいるような感覚を味わえる「宙の湯」と「棚雲の湯」
- 会津の城下町から鶴ヶ城までを一望できる、圧巻のパノラマビュー
- 和・洋・中、多彩な料理が楽しめる豪華バイキング
- 格調高い雰囲気とモダンな快適さを両立させた客室
- きめ細やかで洗練された、心地よいおもてなし
日常から遠く離れ、心を解き放つ旅。それを叶えてくれるのが「御宿 東鳳」です。この宿の象徴は、なんといっても空中にせり出すように作られた露天風呂。まるで鳥になったかのような視点で会津の街並みを一望する体験は、ここでしか味わえない唯一無二のものです。開放感あふれる空間で、心も体もリフレッシュできます。
客室
露天風呂が付いた客室「彩(いろどり)」は、宿の中でも特別な空間。広々とした和洋室には専用のテラスと信楽焼の露天風呂が備えられ、誰にも邪魔されることなく絶景を独り占めできます。上質で落ち着いたインテリアが、大人の休日をより一層豊かなものにしてくれます。
客室露天風呂の時間
テラスに出ると、心地よい風が吹き抜ける。眼下にはミニチュアのような会津の街並みが広がり、その向こうには雄大な山々が連なる。この景色を、ふたり占めできる贅沢。
湯船に体を沈めれば、視界を遮るものは何もない。空と、街と、自分たちだけ。日中は青空の下で、夜は星空の下で、刻一刻と表情を変える景色を眺めながら湯に浸かる。普段はなかなか言えない感謝の言葉も、この開放的な空間なら、素直に口に出せるかもしれません。
共用風呂
「宙の湯」と「棚雲の湯」、この二つの露天風呂こそが御宿 東鳳の代名詞です。どちらも、まるで空に浮かぶステージのように設計されており、その浮遊感と開放感は訪れるすべての人を魅了します。
円形の湯船が特徴的な「宙の湯」からの眺めは、まさに絶景。寝湯に身を横たえれば、空と一体になるかのような不思議な感覚を味わえます。男女入れ替え制なので、時間帯によって異なる景色を楽しめるのも嬉しいポイント。夫婦で「さっきの景色、すごかったね」と感想を語り合うのも、旅の醍醐味です。
食事
夕食は、ライブキッチンが魅力のバイキングレストラン「あがらんしょ」で。会津の郷土料理はもちろん、揚げたての天ぷら、握り寿司、ステーキ、そして専門のパティシエが作るスイーツまで、和洋中の豪華な料理がずらりと並びます。
目の前で調理される臨場感と、できたての熱々を味わえる喜び。好きなものを好きなだけ、というバイキングの楽しさを、上質な空間で心ゆくまで満喫できます。品数の多さとクオリティの高さは、食を重視する夫婦もきっと満足できるはずです。
サービス
湯上がりの夫が、テラスでビールを飲んでいる。
「すごい眺めだな。王様になった気分だ」
冗談めかして言う彼に、妻は微笑みながら隣に座った。
「あなた、昔から高いところが好きでしたものね」
「ああ。見晴らしがいいと、気持ちまで晴れやかになる」
眼下には、家路を急ぐ車のライトが点々と光る。
あの中に、かつての自分たちがいた。
今は、こうしてその営みを穏やかに見下ろしている。
時の流れがもたらした変化を、ふたりは静かに受け入れていた。
こんな50代夫婦におすすめ
- 日常を忘れるような、開放感あふれる絶景体験を求める夫婦
- エンターテイメント性の高い豪華なバイキングを楽しみたい夫婦
- 少し贅沢な気分で、リフレッシュしたい記念日旅行を計画している夫婦
アクセス情報
- 住所: 〒965-0813 福島県会津若松市東山町石山字院内706
- アクセス: JR磐越西線「会津若松駅」より車で約15分
- 送迎: あり(定時運行・要予約)
ふたりで紡ぐ、宿の記憶
宙に浮かぶ露天風呂、「宙の湯」。
夕暮れ時、空と街がオレンジ色に染まっていくのを、ふたりは黙って眺めていた。
「きれい…」
妻がぽつりと呟く。
その横顔は、茜色に照らされて、いつもより少し若く見えた。
夫は、初めて彼女とデートした日のことを思い出していた。
展望台から見た夕焼け。あの時も、彼女は同じように「きれい」と言った。
あれから何十年も経ち、たくさんの景色を一緒に見てきた。
嬉しい景色も、悲しい景色も。
「なあ」
夫が呼びかける。
「これからも、一緒に色々な景色を見ような」
妻は驚いたように夫を見つめ、そして、ふわりと微笑んだ。
「ええ、もちろん」
言葉は少なくとも、心は通じ合っている。
眼下の街に、ひとつ、またひとつと灯りがともり始めていた。
くつろぎ宿 新滝
~土方歳三も愛した、歴史の湯に浸る~
■おすすめポイント(くつろぎ宿 新滝)
- 新選組・土方歳三が傷を癒したとされる歴史ある源泉「猿の湯」
- 趣の異なる4つの貸切風呂で、プライベートな湯浴みを満喫
- 湯川のせせらぎを聞きながら、心静かに過ごせるロケーション
- 地元の食材を活かした、体に優しい会津の郷土料理
- 姉妹館「千代滝」の展望露天風呂も利用可能
歴史の香りに包まれて、静かな時間を過ごしたい。そんな夫婦に最適なのが「くつろぎ宿 新滝」です。幕末の志士、土方歳三が戦傷を癒したという伝説が残る「猿の湯」は、今もこんこんと湧き続けています。歴史に思いを馳せながら、効能豊かな湯に身を委ねる。それは、大人の知的好奇心と癒やしの時間を同時に満たしてくれる体験です。
客室
渓流沿いに佇むこの宿には、専用の露天風呂が付いた客室が用意されています。窓を開ければ、聞こえてくるのは湯川の清らかなせせらぎだけ。華美な装飾はないものの、清潔で落ち着いた和の空間が、旅の疲れを優しく癒やしてくれます。
客室露天風呂の時間
自分たちだけの湯船で、歴史の湯を独占する。なんと贅沢な時間でしょうか。目の前には湯川の清流と、手が届きそうなほどの木々の緑。時折、鳥の声が聞こえるだけの静寂が、空間を支配します。
ここは、思考を巡らせるのに最適な場所。土方歳三は、この湯に浸かりながら何を思ったのだろうか。そんな風に歴史の登場人物に自分を重ねてみるのも一興です。ふたり、言葉を交わさずとも、同じ歴史のロマンを共有する。そんな静かで知的な時間が、ゆっくりと流れていきます。
共用風呂
この宿の魅力は、なんといっても多彩な風呂。土方歳三ゆかりの「猿の湯」はもちろんのこと、4つの趣の異なる貸切風呂が無料で利用できるのは特筆すべき点です。檜の香りが心地よい風呂、信楽焼の陶器風呂など、夫婦水入らずで気兼ねなく湯浴みを楽しめます。
また、姉妹館である「千代滝」へ湯めぐりに出かけることも可能です。渓流沿いの静かな「新滝」と、城下町を望む開放的な「千代滝」。全く異なる二つの個性を楽しめるのも、この宿ならではの大きな魅力と言えるでしょう。
食事
食事は、地元の旬の食材をふんだんに使った会津の郷土料理が中心。派手さはありませんが、一品一品、丁寧に作られているのが伝わってくる心尽くしの料理です。契約農家から仕入れるお米や新鮮な野菜など、素材そのものの味を大切にした、滋味深い味わいが体に優しく染み渡ります。
お部屋または個室の食事処でゆっくりといただけるので、夫婦の会話を楽しみながら、落ち着いて食事の時間を過ごしたいカップルにぴったりです。
サービス
貸切風呂の帰り道、夫が足を止めた。
廊下に飾られた、幕末の志士たちの肖像画。
「土方歳三は、ここで何を考えていたんだろうな」
「さあ…故郷のことでしょうか。それとも、まだ見ぬ未来のことかしら」
妻の答えに、夫は少し黙ってから言った。
「俺は、君のことを考えていたと思うな」
「まあ」
思いがけない言葉に、妻は頬を染める。
歴史上の人物に自分たちを重ねてみる。
そんな遊び心も、旅がくれる素敵な贈り物だ。
こんな50代夫婦におすすめ
- 歴史、特に幕末の歴史が好きな知的好奇心旺盛な夫婦
- 貸切風呂など、プライベートな空間で温泉をゆっくり楽しみたい夫婦
- 華やかさよりも、落ち着いた雰囲気と静かな時間を大切にしたい夫婦
アクセス情報
- 住所: 〒965-0814 福島県会津若松市東山町湯本字川向222
- アクセス: JR磐越西線「会津若松駅」より車で約15分
- 送迎: あり(定時運行・要予約)
ふたりで紡ぐ、宿の記憶
客室露天風呂の湯船から、静かな川の流れが見える。
夫がふと、昔を懐かしむように言った。
「俺たちが結婚した頃、ずいぶん無茶な働き方をしたな。お前には心配ばかりかけて」
妻は何も言わず、ただ湯の感触を確かめている。
「土方歳三も、きっと誰かに会いたかったんだろうな。この湯に浸かりながら」
その言葉に、妻は初めて夫の方を向いた。
「あなたは、誰かに会いたいのですか?」
少し意地悪な質問に、夫は一瞬たじろぎ、そして笑った。
「いや。俺はもう、会いたい人は隣にいるから十分だ」
川のせせらぎが、夫の照れ隠しを優しく包み込む。
歴史が刻まれた湯の中で、ふたりの時間もまた、静かに、そして確かに刻まれていく。
原瀧
~川床料理と自家源泉、自然の恵みを五感で味わう~
■おすすめポイント(原瀧)
- 湯川の渓流沿いに設けられた「川床」で楽しむ、風流な食事体験
- 加水・加温なしの自家源泉100%かけ流しの温泉
- 全室リバービューで、客室から美しい渓流の景色を楽しめる
- プライベート感を重視した、露天風呂付き客室の多彩なラインナップ
- 旬の食材を活かした、繊細で美しい会席料理
目に映るのは、清らかな水の流れと深い緑。耳に届くのは、心地よい川のせせらぎ。会津の豊かな自然を五感のすべてで感じられる宿、それが「原瀧」です。この宿の最大の魅力は、何といっても自家源泉100%かけ流しの温泉と、夏場に楽しめる川床料理。自然の恵みを心ゆくまで味わう、本物の贅沢がここにあります。
客室
露天風呂付き客室は、それぞれに趣が異なり、訪れるたびに新しい発見があります。すべての部屋が湯川に面しており、窓の外には美しい渓谷の風景が広がります。プライベートな空間で、源泉かけ流しの湯を心ゆくまで楽しめるのは、温泉好きにはたまらない魅力です。
客室露天風呂の時間
湯船に注がれるのは、生まれたての温泉。加水も加温もされていない、正真正銘の源泉です。少し熱めのお湯に体を沈めると、体の芯からじんわりと温まっていくのがわかります。肌を滑る柔らかな湯の感触と、絶え間なく聞こえる川のせせらぎが、最高のBGM。
ふたり、ただ黙って湯に浸かる。言葉はいらない。目の前の自然が、凝り固まった心と体をゆっくりとほぐしてくれる。これ以上ないほどシンプルで、これ以上ないほど贅沢な時間。温泉が持つ本来の力を、ここではっきりと感じることができます。
共用風呂
大浴場ももちろん、自家源泉100%かけ流し。広々とした内湯と、渓流沿いの露天風呂があり、開放感あふれる湯浴みが楽しめます。特に、川のすぐそばに作られた露天風呂は、まるで自然の中に溶け込んでいくような感覚を味わえます。
豊富な湯量を誇る自家源泉だからこそ実現できる、本物のかけ流しの湯。その違いは、一度入れば誰もが実感できるはず。客室のプライベートな湯と、大浴場の開放的な湯。両方を心ゆくまで堪能してください。
食事
この宿を語る上で欠かせないのが、食事の体験です。特に、春から秋にかけて楽しめる「川床料理」は格別。湯川の真上に設けられた特設の座敷で、川のせせらぎをBGMにいただく会席料理は、まさに風流そのもの。
会津の旬の食材をふんだんに使い、一品一品丁寧に仕上げられた料理は、目にも舌にも美味。川面を渡る涼やかな風を感じながら、自然の中でいただく食事は、忘れられない思い出になることでしょう。
サービス
川床での食事が始まった。
鮎の塩焼きが運ばれてくると、夫が嬉しそうに目を細める。
「これは美味そうだ。川の音を聞きながら食べると、また格別だな」
「本当に。涼しくて気持ちがいいですね」
妻は、そっと川面に目をやった。
水の流れは、決して止まることがない。
自分たちの時間も、同じように流れ続けてきた。
そして、これからも。
「ねえ、あなた」
「ん?」
「また来年も、ここに来ませんか」
夫はにっこりと笑い、力強く頷いた。
こんな50代夫婦におすすめ
- 本物の源泉かけ流しの温泉を心ゆくまで堪能したい夫婦
- 川床料理など、そこでしかできない特別な食体験をしたい夫婦
- 自然に囲まれた静かな環境で、ゆったりと過ごしたい夫婦
アクセス情報
- 住所: 〒965-0814 福島県会津若松市東山町湯本字滝ノ湯235
- アクセス: JR磐越西線「会津若松駅」より車で約20分
- 送迎: なし
ふたりで紡ぐ、宿の記憶
部屋の露天風呂から、月が見えた。
源泉かけ流しの湯が、絶え間なく湯船に注がれている。
「いいお湯だね」
妻が心地よさそうに目を閉じる。
「ああ。本当に、体の芯から温まる」
夫は湯船の縁に腕を乗せ、夜空を見上げた。
今日は昼間、川床で食事をした。
川の音、風の匂い、旬の味。
すべてが混然一体となって、五感を満たしてくれた。
「なんだか、生き返ったみたいだ」
夫の言葉に、妻がくすりと笑う。
「大げさな人」
「いや、本当だよ。こういう時間があるから、また頑張れる」
そう言って、夫は妻の手にそっと自分の手を重ねた。
温かいお湯の中で、ふたりの手のぬくもりが、ゆっくりとひとつに溶け合っていく。
川のせせらぎだけが、静かに響いている。
まとめ|さあ、ふたりの時間を紡ぐ旅へ
会津の歴史と豊かな自然に抱かれた東山温泉。そこには、静かに流れる時間の中で、夫婦の絆を確かめ合える特別な空間がありました。今回ご紹介した5つの宿は、それぞれが異なる魅力で、あなたを温かく迎えてくれます。
- 庄助の宿 瀧の湯(渓流の音に包まれ、歴史を感じる宿)
- くつろぎ宿 千代滝(城下町の夜景を望む、モダンで快適な宿)
- 御宿 東鳳(空に浮かぶ露天風呂で、非日常を味わう宿)
- くつろぎ宿 新滝(土方歳三ゆかりの湯で、歴史ロマンに浸る宿)
- 原瀧(源泉かけ流しと川床料理で、自然の恵みを満喫する宿)
子育てが終わり、ふと手にした自由な時間。それは、もう一度ふたりで手を取り合って、新しい景色を探しに出かけるための、神様からの贈り物なのかもしれません。
湯けむりの向こうに見えるパートナーの笑顔は、きっと、出会った頃よりもずっと優しく、愛おしいはず。さあ、次はあなたが、ふたりの新しい物語を紡ぐ番です。