蔵王温泉の露天風呂付き客室で紡ぐ50代夫婦の物語|白濁の湯と静寂に抱かれる宿5選

目次

なぜ、人生の節目に立つ夫婦は蔵王温泉へ向かうのか

1900年以上の歴史を刻む、奥羽三高湯のひとつ、蔵王温泉。その名は、子育てという大きな役目を終え、ふたりの時間を再び見つめ直そうとする夫婦の心を、不思議なほどに惹きつけます。

蔵王連峰の麓、標高約900メートルに広がるこの温泉郷の魅力は、ただ湯に浸かるだけでは語り尽くせません。空気に満ちる硫黄の香り、肌をぴりりと刺激する強酸性の乳白色の湯。それは、これまでの人生で重ねてきた様々なものを、一度まっさらに洗い流してくれるような、力強い浄化の力を秘めています。

賑やかな観光地を巡る旅もいい。けれど、本当に求めているのは、雄大な自然の中で互いの存在を静かに感じ、言葉にならない想いを分かち合う時間ではないでしょうか。

ここでは、そんな夫婦ふたりの時間を深く、そして温かく紡ぎ直すための、露天風呂付き客室を備えた特別な5軒の宿をご紹介します。ただ泊まるのではない、新しい物語を始めるための旅が、ここから始まります。

深山荘 高見屋

~三百年の歴史が薫る、静寂の離れで過ごす贅沢~

■おすすめポイント(深山荘 高見屋)

  • 創業三百余年、蔵王温泉で最も歴史ある老舗旅館の格式と風格
  • 蔵王石をふんだんに使った、風情あふれる自家源泉かけ流しの露天風呂
  • 山形出身の世界的工業デザイナー・奥山清行氏が手掛けたモダンな離れ客室
  • 希少な蔵王牛を「すき焼き」と「しゃぶしゃぶ」で同時に味わう名物「すきしゃぶ鍋」
  • 歴史的建造物の趣と現代的な快適さが見事に調和した空間

江戸時代から続く歴史の重みと、洗練された現代性が共存する「深山荘 高見屋」。一歩足を踏み入れれば、そこは日常から切り離された静寂の世界です。三百年の時を経てなお人々を癒し続ける名湯と、磨き上げられたおもてなしが、夫婦の旅を忘れられないものにしてくれるでしょう。

客室

特におすすめしたいのは、デザイナー奥山清行氏がプロデュースした離れ「離庵山水」。モダンなインテリアと伝統的な和の意匠が融合した空間は、まさに大人の隠れ家。広々としたリビングから続くウッドデッキには、プライベートな露天風呂が備えられています。

客室露天風呂の時間

蔵王石を組んで作られた湯船は、ふたりで入ってもゆとりのある大きさ。そこに満たされるのは、空気に触れて白濁した、源泉100%かけ流しの硫黄泉。湯船に体を沈めると、ピリッとした心地よい刺激と共に、硫黄の濃厚な香りが全身を包み込みます。

目の前には、手つかずの自然林が広がり、聞こえるのは鳥のさえずりと川のせせらぎだけ。夜になれば、満天の星が湯面に映り込み、まるで宇宙に浮かんでいるかのような錯覚に陥ります。「綺麗だね」とどちらからともなく呟く声が、静寂に優しく溶けていく。そんな、言葉はいらない、ただ心を通わせる時間がここにあります。

共用風呂

館内には、九つの趣異なる湯殿が点在し、まさに湯巡りの楽しさを味わえます。総檜造りの「長寿の湯」は、木の香りと乳白色の湯が心を解きほぐしてくれる空間。回廊を渡ってたどり着く貸切露天風呂「吉備多賀湯」は、かつての湯守の小屋を再現したもので、プライベートな空間で蔵王の名湯を独り占めできます。

夫婦で浴衣をまとい、からんころんと下駄の音を響かせながら、歴史ある館内を散策する。その道すがら、どの湯に入ろうかと語り合う時間もまた、この宿がくれる豊かな贈り物です。

食事

夕食の主役は、宿の名物「すきしゃぶ鍋」。A5ランクの蔵王牛を、甘辛い割り下の「すき焼き」と、昆布だしでさっぱりといただく「しゃぶしゃぶ」で同時に味わえるという、この上ない贅沢です。

とろけるような肉の旨みはもちろん、料理長の丁寧な仕事が光る前菜や、地元で採れた旬の山菜など、山形の滋味を存分に堪能できます。歴史ある宿だからこその、揺るぎない食へのこだわりが、そこにはあります。

サービス

食後、ラウンジへ足を運ぶ。
古木を活かした重厚な空間で、ジャズが静かに流れている。
「少し、強いお酒でもいただこうか」
夫の提案に、妻は微笑んで頷いた。
カウンターに並ぶ山形の地酒やワイン。
バーテンダーが、ふたりの好みを丁寧に聞きながら、おすすめの一杯を選んでくれる。
グラスを傾けながら、昔話に花が咲く。
気負いのない会話が、夜の静寂に心地よく響いていた。

こんな50代夫婦におすすめ

  • 歴史や伝統を重んじ、格式高い宿で静かに過ごしたい夫婦
  • デザイナーズ空間のような、洗練された客室を好む夫婦
  • 館内で湯巡りを楽しみながら、温泉三昧の休日を過ごしたい夫婦

アクセス情報

  • 住所: 〒990-2301 山形県山形市蔵王温泉54
  • アクセス: JR山形駅よりバスで約45分、蔵王温泉バスターミナル下車後、徒歩約5分
  • 送迎: 蔵王温泉バスターミナルより送迎あり(要事前連絡)

ふたりで紡ぐ、宿の記憶

離れの露天風呂に浸かりながら、夫がぽつりと言った。
「退職したら、小さな山小屋でも借りて、こんなふうに毎日温泉に入るのもいいな」
妻は黙って、夜空に浮かぶ月を見上げていた。
子供たちが巣立ち、広い家にはふたりだけ。
これからの人生をどう過ごすか、答えはまだ見つからない。
でも、と妻は思う。
この乳白色の湯のように、先の見えない未来も、きっと悪いことばかりじゃない。
隣にいる夫の横顔を、湯けむりの向こうに見つめる。
三百年の時を重ねてきたこの宿のように、私たちの時間も、静かに、深く、続いていく。
湯面に映る月が、ふたりのこれからを優しく照らしている。
「それも、いいわね」
妻の小さな声が、蔵王の夜風にそっと溶けていった。

名湯舎 創

~源泉100%の湯力と、肩肘張らないおもてなしに癒される~

■おすすめポイント(名湯舎 創)

  • 敷地内から湧き出る自家源泉を、贅沢に100%かけ流しで使用
  • 趣の異なる7つのお風呂で、心ゆくまで湯巡りが楽しめる
  • 米の娘ぶたや山形牛など、地元のブランド食材を活かした郷土料理
  • 「おかえりなさい」と迎え入れてくれるような、家庭的で温かい接客
  • 華美さはないが、温泉の本質と心のこもったおもてなしを大切にする宿

「ただいま」と、思わず口にしてしまいそうな温かい雰囲気が魅力の「名湯舎 創」。この宿の主役は、なんといっても鮮度抜群の温泉です。敷地内からこんこんと湧き出る自家源泉を、加水・加温なしで湯船へ。本物の湯力を求める温泉好きの夫婦にとって、これ以上ない贅沢が待っています。

客室

華美な装飾はないものの、清潔で機能的に整えられた和室が中心。露天風呂付きの客室では、窓を開ければ蔵王の澄んだ空気が流れ込み、いつでも好きな時に、自分たちだけの湯浴みを満喫できます。気兼ねなく、ただのんびりと過ごしたい夫婦にぴったりの空間です。

客室露天風呂の時間

客室の露天風呂は、信楽焼の丸い湯船。こぢんまりとしているが、それがかえって夫婦の距離を縮めてくれます。湯口から絶え間なく注がれる源泉は、空気に触れる時間が短いため、共用風呂よりも透明に近い色合い。新鮮な湯の証です。

湯に体を沈めれば、肌に染み渡るような力強い泉質をダイレクトに感じられます。日中は陽光を浴びながら、夜は星空の下で。誰にも邪魔されない空間で、ただ静かに湯と向き合う。そんな飾らない時間が、日々の疲れを芯から溶かしてくれるのです。

共用風呂

この宿のもう一つの自慢が、多彩な共用風呂です。石造りの露天風呂「こけしの湯」や、木の香りが心地よい内湯「おくまの湯」など、合わせて7つのお風呂が湯巡りを楽しませてくれます。

特に、開放感あふれる混浴露天風呂「かもしかの湯」(湯あみ着着用)は、夫婦で一緒に蔵王の自然と一体になれる特別な場所。時間帯によって男女が入れ替わるお風呂もあり、滞在中、飽きることなく温泉三昧の時間を過ごせます。

食事

食事は、山形の家庭の温かさを感じる郷土料理が中心。山形ブランド豚「米の娘ぶた」のしゃぶしゃぶや、熱々の芋煮は、どこか懐かしく、心まで満たされる味わいです。

一品一品、丁寧に作られた料理からは、「美味しいものを食べて、元気になってほしい」という宿の想いが伝わってきます。派手さはありませんが、素材の味を大切にした、誠実な料理が旅の夜を豊かに彩ります。

サービス

ロビーの一角に、色とりどりのシャンプーが並んだ「シャンプーバー」がある。
「あら、これ使ってみたかったの」
妻が嬉しそうに一本を手に取る。
「そういうものに詳しいんだな」
夫が感心したように言う。
ささやかなサービスだが、女性客への細やかな心遣いが感じられる。
「お風呂、楽しみね」
妻の弾んだ声に、夫も自然と笑みがこぼれた。
高価な調度品よりも、こんな温かい気づかいが、旅の記憶を鮮やかにしてくれる。

こんな50代夫婦におすすめ

  • とにかく泉質にこだわり、本物の温泉を心ゆくまで堪能したい夫婦
  • 高級旅館のようなかしこまった雰囲気が苦手で、アットホームな宿を好む夫婦
  • 地元の食材を活かした、温かい家庭的な料理を楽しみたい夫婦

アクセス情報

  • 住所: 〒990-2301 山形県山形市蔵王温泉94-1
  • アクセス: JR山形駅よりバスで約45分、蔵王温泉バスターミナル下車後、徒歩約8分
  • 送迎: 蔵王温泉バスターミナルより送迎あり(要事前連絡)

ふたりで紡ぐ、宿の記憶

夕食後、夫が珍しく「少し散歩でもしないか」と誘ってきた。
宿の玄関で下駄を借り、温泉街の夜道をゆっくりと歩く。
硫黄の香りが立ち込める湯けむりの向こうに、土産物屋の灯りが見える。
「昔、子供たちが小さい頃に来たスキー旅行を思い出すな」
夫が懐かしそうに呟く。
「あの時は、毎日が戦争のようだったわね」
妻が笑いながら応える。
手を繋ぐわけではない。
ただ、半歩前を歩く夫の背中が、昔よりも少しだけ小さく見えた。
宿に戻り、冷えた体を温めようと部屋の露天風呂へ。
湯船の中で、夫が「ありがとうな」と、ぽつりと言った。
何に対しての感謝なのか、妻は聞かなかった。
ただ、この湯のように温かい気持ちが、ふたりの間に満ちていくのを感じていた。

蔵王国際ホテル

~木の温もりと八右衛門の湯。リゾートの快適さと温泉旅館の情緒を両手に~

■おすすめポイント(蔵王国際ホテル)

  • 総木造りの大浴場「八右衛門の湯」が圧巻のスケールと美しさ
  • 乳白色の源泉100%かけ流しの湯を、広々とした露天風呂で満喫できる
  • 石臼で挽く自家製粉のそば粉を使った本格的な手打ちそばが絶品
  • ホテルならではの充実した設備と、旅館のようなきめ細やかなおもててなし
  • 湯上がり処のドリンクサービスなど、滞在を豊かにする無料サービスが充実

温泉旅館の情緒と、リゾートホテルの快適さ。その両方を求める欲張りな夫婦に最適なのが「蔵王国際ホテル」です。この宿の象徴は、なんといっても圧巻のスケールを誇る総木造りの大浴場「八右衛門の湯」。木の香りに包まれながら浸かる乳白色の名湯は、忘れられない体験となるでしょう。

客室

和室、洋室、和洋室と多彩なタイプの客室が揃いますが、特別な時間を過ごすなら温泉露天風呂付きの客室がおすすめです。モダンで洗練された空間ながら、木の温もりを感じさせる落ち着いたインテリア。広々とした窓からは、四季折々の蔵王の自然を望むことができます。

客室露天風呂の時間

プライベートな空間に設えられた露天風呂は、陶器製のモダンな湯船。もちろん、ここにも名湯「八右衛門の湯」と同じ、乳白色の源泉がたっぷりと注がれています。リビングから直接アクセスできる設計で、思い立った時にすぐ湯浴みを楽しめるのが嬉しいポイントです。

朝、鳥の声で目覚め、そのまま湯船へ。蔵王の澄んだ空気を胸いっぱいに吸い込みながら、まだ誰もいない静かな時間を独り占めする。そんな贅沢な一日の始まりを、この部屋は約束してくれます。夫婦水入らずで、心ゆくまで「美肌の湯」を堪能してください。

共用風呂

この宿を訪れたなら、必ず入るべきなのが大浴場「八右衛門の湯」。扉を開けた瞬間、目に飛び込んでくるのは、太い梁が見事な湯屋建築と、湯気をまとって輝く丸太の柱。そして、鼻腔をくすぐる硫黄と木の香り。その空間にいるだけで、心が鎮まっていくようです。

内湯から続く露天風呂は、広々とした岩風呂。昼は青空の下、夜は星空の下で、強酸性の硫黄泉に体を委ねれば、日常の疲れなどどこかへ消えてしまいます。まさに、温泉遺産と呼びたいほどの、素晴らしい湯殿です。

食事

食事は、山形の旬を味わう会席料理。特に名高いのが、館内のそば蔵で石臼挽きした自家製粉のそば粉で打つ「手打ちそば」。豊かな香りと喉ごしは、まさに絶品です。

山形牛のステーキやしゃぶしゃぶをメインに据えたプランも人気で、地元の恵みを余すところなく楽しめます。ホテルならではの洗練されたプレゼンテーションと、温かいサービスが、食事の時間をより一層特別なものにしてくれます。

サービス

湯上がりに、ラウンジへ向かう。
暖炉がパチパチと音を立てる空間に、フリードリンクのコーナーが設けられている。
妻はハーブティーを、夫は淹れたてのコーヒーを手に、ソファに並んで腰掛けた。
「お風呂、すごかったな。あの木の匂い…」
「ええ、本当に。心が洗われるようだったわ」
特別な会話はない。
ただ、同じものを見て、同じように感動した心を分かち合う。
窓の外では、蔵王の山々が夕暮れの色に染まり始めていた。

こんな50代夫婦におすすめ

  • 温泉だけでなく、建築美や空間そのものを楽しみたい夫婦
  • 旅館の風情とホテルの機能性、両方の良いところを享受したい夫婦
  • 美味しいお蕎麦や質の高い料理など、食にもこだわりたい夫婦

アクセス情報

  • 住所: 〒990-2301 山形県山形市蔵王温泉933
  • アクセス: JR山形駅よりバスで約45分、蔵王温泉バスターミナル下車
  • 送迎: 蔵王温泉バスターミナルより送迎あり(定時運行・要事前連絡)

ふたりで紡ぐ、宿の記憶

チェックアウトの朝、もう一度だけ「八右衛門の湯」に浸かった。
高い天井を見上げながら、夫が呟く。
「昔の人はすごいな。こんな立派なものを、機械もない時代に建てたんだから」
その言葉に、妻は静かに頷いた。
自分たちの人生も、振り返れば手探りで家を建て、家族を築いてきたようなものかもしれない。
決して立派なものではないけれど、そこにはたくさんの柱があり、たくさんの思い出が染み込んでいる。
湯けむりの向こうで、夫が優しい顔でこちらを見ていた。
「いい湯だったな」
「ええ、本当に」
この木の香り、この湯の温もり。
そして、隣にいる人の存在。
それだけで、これからの人生もきっと大丈夫だと思える。
そんな力が、この湯には満ちている。

五感の湯 つるや

~自家源泉と個室食。ふたりの時間を何よりも大切にするおもてなし~

■おすすめポイント(五感の湯 つるや)

  • 敷地内から自噴する自家源泉を、100%かけ流しで楽しめる贅沢
  • 夕食・朝食ともに個室または部屋食で、プライベートな食事時間を確約
  • 趣の異なる4つの貸切風呂があり、夫婦水入らずの湯浴みを満喫
  • 一人ひとりメイン料理を選べる夕食など、きめ細やかな食へのこだわり
  • 蔵王の自然を間近に感じる、高台からの眺望

「ふたりの時間を、誰にも邪魔されずに過ごしたい」。そんな願いを叶えてくれるのが「五感の湯 つるや」です。この宿の哲学は、徹底したプライベート感の重視。敷地内から湧く新鮮な自家源泉と、必ず個室で提供される食事が、夫婦だけの濃密な時間を約束してくれます。

客室

高台に建つ宿の客室からは、蔵王の温泉街や雄大な自然を見渡せます。特におすすめは、露天風呂が備えられた和洋室。琉球畳の和の空間と、シモンズ社製ベッドが配された洋の快適さが融合し、ゆったりと寛げる設えです。窓辺に腰掛けて、ただ流れる景色を眺めるだけでも心が満たされます。

客室露天風呂の時間

客室の露天風呂は、四角い檜の湯船。爽やかな木の香りが、強酸性の硫黄泉の香りと混じり合い、深いリラックス効果をもたらします。湯船は、蔵王の景色をひとりじめできる絶好のロケーションに配置されています。

朝もやに煙る温泉街を眺めながら、一番風呂をいただく。日中は、山の緑を背景に読書にふける。夜は、街の灯りを宝石のように眺めながら、語らう。時間とともに表情を変える景色と名湯が、ふたりの時間に彩りを添えてくれます。

共用風呂

男女別の大浴場にも、もちろん自家源泉がかけ流しで注がれています。広々とした内湯と、岩造りの露天風呂があり、開放感は抜群。常に新鮮な湯が供給されているため、蔵王温泉特有のパワフルな泉質を存分に体感できます。

さらに、この宿の魅力は4つの貸切風呂(有料)。それぞれに趣向が凝らされており、予約をすれば夫婦だけのプライベートな空間で湯浴みを楽しめます。誰の目も気にすることなく、ふたりきりで名湯と向き合う時間は、格別の思い出になるはずです。

食事

この宿が多くのリピーターに愛される理由の一つが、「食」へのこだわりにあります。夕食・朝食ともに、周りを気にせず食事に集中できる個室食(または部屋食)スタイル。

夕食は、山形牛のステーキや米沢豚のしゃぶしゃぶなど、数種類の中からそれぞれが好きなメイン料理を選べるプリフィクススタイルを採用。夫婦で別々のものを選んで、シェアするのも楽しい時間です。地元の旬の食材をふんだんに使い、一品一品丁寧に仕上げられた料理が、旅の満足度を確かなものにしてくれます。

サービス

夕食の席。
個室の襖が静かに開き、仲居さんが料理を運んでくる。
「旦那様は山形牛の陶板焼き、奥様はのどぐろの塩焼きでございますね」
それぞれが事前に選んだメインディッシュ。
「あなたのそれも、美味しそうね」
「少し食べるか?」
自然な会話が生まれる。
周りの視線を気にすることなく、目の前の相手と、そして料理と、じっくり向き合える。
この「守られた時間」こそが、この宿が提供する最高のおもてなしなのかもしれない。

こんな50代夫婦におすすめ

  • 食事の時間も、お風呂の時間も、とにかくプライベート感を大切にしたい夫婦
  • 夫婦それぞれで食べたいものを選び、食事を楽しみたい夫婦
  • 貸切風呂などを利用して、ふたりだけの温泉時間を満喫したい夫婦

アクセス情報

  • 住所: 〒990-2301 山形県山形市蔵王温泉710
  • アクセス: JR山形駅よりバスで約45分、蔵王温泉バスターミナル下車後、徒歩約3分
  • 送迎: 蔵王温泉バスターミナルより送迎あり(要事前連絡)

ふたりで紡ぐ、宿の記憶

部屋の露天風呂から、夕暮れの空を眺めていた。
茜色に染まった雲が、ゆっくりと流れていく。
「思えば、こうしてふたりでゆっくり空を眺めるなんて、何年ぶりだろうな」
夫の言葉に、妻は静かに頷いた。
子供が小さい頃は、空を見上げる余裕もなかった。
毎日が目まぐるしく過ぎていき、気づけば季節が変わっていた。
「これからは、こういう時間を大切にしないとな」
夫は、妻の肩をそっと抱いた。
力強いわけではない。
ただ、そこにいる、という温かさ。
強酸性の湯が肌に馴染んでいくように、長い年月をかけて馴染んできた、かけがえのない存在。
暮れていく空の下、ふたりは言葉もなく、ただ寄り添っていた。
この景色を、この温もりを、きっと忘れない。

蔵王四季のホテル

~「離れ湯 百八歩」への散策と、心尽くしのおもてなしに満たされる~

■おすすめポイント(蔵王四季のホテル)

  • ホテルから少し歩いた先にある、野趣あふれる離れの湯「百八歩」
  • 2種類の源泉を、趣の異なる湯船で楽しめる湯巡りの魅力
  • 山形牛をメインとした、質・量ともに満足度の高い会席料理
  • ウェルカムフルーツからチェックアウト時のガムまで、細やかな心遣いが光るおもてなし
  • リニューアルされた清潔でモダンな館内と、スタッフの温かいホスピタリティ

「蔵王四季のホテル」での滞在は、単なる宿泊体験を超えた、小さな冒険のようです。その象徴が、一度ホテルの外に出て、文字通り百八歩ほど歩いた先にある離れの湯。このちょっとした散策が、温泉への期待感を高め、夫婦の会話を弾ませます。細部にまで行き届いたおもてなしと、心も体も満たされる食事が、旅を豊かに彩ります。

客室

近年リニューアルされた館内は、モダンで洗練された雰囲気。露天風呂付きの客室は、広々とした和洋室タイプで、大きな窓から蔵王の自然光がたっぷりと差し込みます。落ち着いた色調でまとめられたインテリアと、マッサージチェアが備え付けられているなど、心からリラックスできる工夫が随所に見られます。

客室露天風呂の時間

客室に備えられた露天風呂は、プライベートな時間を過ごすのに十分な広さ。源泉はもちろん、蔵王が誇る乳白色の硫黄泉です。湯船を満たす白濁の湯は、まるで絹のような肌触り。

窓の外に広がる白樺林を眺めながら、誰にも気兼ねすることなく名湯に浸かる。そんな当たり前のようで、何より贅沢な時間を過ごせます。湯上がりにマッサージチェアで体をほぐしながら、うたた寝をする。そんな何気ないひとときが、最高の思い出になります。

共用風呂

この宿のハイライトは、離れの湯「百八歩」です。浴衣に羽織をまとい、下駄を履いて小道を歩いていく。その道中が、すでに非日常へのプロローグ。湯小屋にたどり着くと、そこには内湯と野趣あふれる露天風呂が待っています。乳白色の湯と、もう一つ、敷地内から湧く透明な自家源泉「離れの湯」の二種類を楽しめるのも魅力です。

夜、満天の星の下で聞こえるのは、風の音と湯の流れる音だけ。少しひんやりとした外気と、熱い湯のコントラストが心地よく、いつまでも浸かっていたくなるほどの心地よさです。

食事

夕食は、ゲストから絶賛の声が多い、山形の恵みを凝縮した会席料理。メインの山形牛は、しゃぶしゃぶや陶板焼きなど、好みの調理法でいただけます。とろけるような肉の旨みはもちろん、一品一品丁寧に作られた前菜からデザートまで、料理長のこだわりが感じられます。

朝食のビュッフェもまた格別。郷土料理の「だし」や玉こんにゃく、山形牛がごろごろ入った牛すじ煮込み、焼きたてのピザなど、和洋のメニューがずらりと並びます。朝から心ゆくまで美食を堪能できる、幸せな時間です。

サービス

部屋に入ると、テーブルの上に冷えたウェルカムフルーツと和菓子が用意されている。
長旅の疲れが、すっと癒えるような心遣い。
「わあ、美味しそう。さくらんぼかしら」
「気が利いてるじゃないか」
夕食の席では、担当のスタッフが気さくに話しかけてくれ、料理の説明にも熱がこもる。
そして、チェックアウトの際には「道中、眠くなりませんように」と、眠気覚ましのガムを手渡してくれた。
一つひとつは小さなことかもしれない。
でも、その積み重ねが「またここに来たい」と思わせる、温かい記憶となって心に残る。

こんな50代夫婦におすすめ

  • マニュアル通りではない、心のこもった温かいおもてなしを求める夫婦
  • 温泉までのちょっとした散策など、宿の中での体験を楽しみたい夫婦
  • 夕食も朝食も、質・量ともに満足できる美味しい食事を堪Pantしたい夫婦

アクセス情報

  • 住所: 〒990-2301 山形県山形市蔵王温泉1272
  • アクセス: JR山形駅よりバスで約45分、蔵王温泉バスターミナル下車後、徒歩約15分
  • 送迎: 蔵王温泉バスターミナルより送迎あり(要事前連絡)

ふたりで紡ぐ、宿の記憶

離れの湯「百八歩」への帰り道。
見上げた夜空には、息をのむほどの星が広がっていた。
「すごいな…東京じゃ、こんな星空は見られない」
夫が、子供のようにはしゃいだ声で言った。
妻は何も言わず、隣で空を見上げている。
百八歩。
仏教では、人間の煩悩の数だという。
この道を一歩一歩進むうちに、日々の悩みや些細な苛立ちが、一つ、また一つと消えていくような気がした。
宿の灯りが見えてきたとき、夫がふいに立ち止まり、妻の手を握った。
ごつごつとした、温かい手。
「これからも、よろしくな」
照れくさそうに言う夫に、妻は強く手を握り返した。
言葉はいらない。
この星空の下で、ふたりの心は確かに繋がっている。

まとめ|さあ、ふたりの時間を紡ぐ旅へ

蔵王の雄大な自然と、歴史ある名湯に抱かれる5つの宿をご紹介しました。

  • 深山荘 高見屋:三百年の歴史とモダンが融合する、格式高い滞在を
  • 名湯舎 創:鮮度抜群の自家源泉と、家庭的な温もりに癒される
  • 蔵王国際ホテル:圧巻の木造建築「八右衛門の湯」で、温泉遺産に触れる
  • 五感の湯 つるや:徹底されたプライベート空間で、ふたりだけの時間を満喫
  • 蔵王四季のホテル:「離れ湯」への散策と、心尽くしのおもてなしに心温まる

子育てが終わり、ふと隣を見ると、少しだけ変わったパートナーの姿がある。長い年月を共に歩んできたからこそ、今、改めて互いを見つめ直す時間が必要です。

蔵王の力強い湯は、心と体を解きほぐし、素直な気持ちにさせてくれる不思議な力を持っています。客室の露天風呂で交わす言葉、美味しい食事を前にした笑顔、湯上がりに見る満天の星。旅の一瞬一瞬が、色褪せることのない夫婦の記憶として刻まれていくはずです。

さあ、次の休日は、ふたりの新しい物語を紡ぐために、蔵王温泉へ旅立ちませんか。


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